■クヴィエタ・パツォウスカーさんの絵本 |
1928年プラハ生まれ。プラハ美術大学卒業。絵本作家、アーティスト。国際アンデルセン賞画家賞等受賞。邦訳作品には、『紙の町のおはなし』(小学館) 、『アルファベット』(ほるぷ出版、品切れ)など。 |
『マッチ売りの少女』*洋書* |
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『マッチ売りの少女』 ハンス・クリスチャン・アンデルセン文 クヴィエタ・パツォウスカー絵 掛川恭子訳 ほるぷ出版 2006年
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情熱の「マッチ売りの少女」。 マッチをするほんの一瞬に浮かびあがる無数の幻の、とらえどころのない激しさを、大胆に描きとめたような作品だと思いました。
パツォウスカーさんでなければ誰も描けない、思い描くことすらできない独創的な「マッチ売りの少女」が、絵本からほとばしり、魂をゆさぶります。 おなじみのファンには満足を、初めての人には衝撃と感銘を。 ずばぬけた色、形、デザインの手触りまでも確かめたくなるような、筆づかい、息づかいまでも響いてくるような、贅沢な芸術絵本。
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↑ これは、国際アンデルセン賞受賞画家、クヴィエタ・パツォウスカーさんの描く、『マッチ売りの少女』です。 原書は『DAS MADCHEN MIT DEN SCHWEFELHOLZCHEN』2005 とあります。 チェコ出身の画家、クヴィエタ・パツォウスカーさんの2005年の新作でしょうか! アマゾン洋書で見つけた英語版はこちら。↓
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『The Little Match Girl』 Minieditions 2005
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これは・・・想像を絶する、「マッチ売りの少女」。 わくわくと、表紙をめくると、鮮やかな見返しから、パツォウスカーさんの色、パツォウスカーさんの形、パツォウスカーさんのコラージュ。個性的なマッチが、少女が、炎が、全身全霊で、生みの親のパツォウスカーさんの筆の魂を叫んでいるみたい。
アンデルセンの描いた、清貧な少女の哀しくも美しい物語、「マッチ売りの少女」。 凍える大晦日の夜、きたるべき新年に人々の心浮き立つ街角で、売れないマッチを抱えた少女の心だけがひとりぼっち、家に帰ることもできず、すぐに消えてしまうはかないマッチのともしびに、残されたすべての力をふりしぼって、どこまでも幸せに満たされた夢を見ようとします。 マッチの明かりに、寒さと飢えに震えながら少女が見たものは、温かなストーブ、美味しそうなごちそう・・・
斬新で、鮮烈で、大胆で、けれど繊細で、誰も見たことのないような、誰もとうていまねできないような、マッチ売りの少女の世界が、画面からほとばしるように描かれています。 鮮やかな赤、引き締まった黒、贅沢な銀色。 ノートの走り書きのような、記憶の断片のはり合わせのような、混沌としたコラージュ。 シュッとマッチをする、一瞬の残像を焼き付けたような、流れる線。 ためらうことなく塗りこめられた跡、震えるように描かれた線、切り取られ、重ねられた面、はみ出した形。 雪、あるいは吐く息、あるいはゆらめく炎、あるいはこぼれる涙を思わせる色のにじみ。
パツォウスカーさんの他の絵本にもしばしば登場する、顔やくつのモチーフ、ノートの切れ端のようなモチーフ、仕掛け絵本かしらと思わせるような大胆なコラージュ、どきっとする銀の使い方などが、『マッチ売りの少女』でもさりげなくちりばめられ、アンデルセンの童話と不思議に交錯して、独創的な世界を作り上げています。 少女の瞳は痛いくらいまっすぐで、小さな手でおおわれた口元がほほえんでいるのかいないのか、テキストどおりほほえんでいるようでもあり、そうでないようでもあり・・・静かな余韻を残しています。
原作から誰もが思い描くような「マッチ売りの少女」によりそって描かれたものではなく、パツォウスカーさんの独自の羅針盤に身も心もゆだねて、地図で見た初めての海に船を漕ぎ出すような作品。ひとつひとつ激しい波にゆさぶられながら、力強く導かれていく船旅は、忘れがたい印象を刻み、きっと何度でも繰り返し体験を深めていくことでしょう。 原作から誰もが思い描くような「マッチ売りの少女」が、ページをめくるほどに小気味よくくつがえされ、新しく塗り替えられていく斬新さをお楽しみください。
よろしければ図書館などでお読みになってくださいね。
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『Unfold/ Enfold』 Editions Du Seuil 2005 100p
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約24.1 x 24.5 cm、100ページ、カラーイラスト多数、アコーディオンスタイル装丁・・・ アマゾン洋書の書評より。ぜひクリックしてご覧になってくださいね。 贅沢すぎる一冊。心をつかまれます・・・。
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『The Art of Kveta Pacovska (The Art Of...catalogues)』 North South Books 1994 136 p ペーパーバック
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バツォウスカーさんの作品集、でしょうか? 気になります。
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『Alphabet』 Ravensb. Buchvlg., Rav 2000
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『アルファベット』(ほるぷ出版、1996、品切れ)と同じものでしょうか? どちらもいまだ未入手の、憧れの書。どうやら品切れ中。 再販切望。
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『小さな花の王様』 クヴィエタ・パツオゥスカーさく 川本三郎訳 太平社
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現在も入手可能の貴重な邦訳の一冊。
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『The Little Flower King: Kveta Pacovska』 North South Books
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英語版。
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