■かすや昌宏さんの絵本 |
1937年、兵庫県に生まれる。『ごんぎつね』あすなろ書房 、『くつやのまるちん』(至光社) など、数多くの絵本を手がけ、海外でも高い評価を受ける。『のあのはこぶね』(至光社)でボローニャ国際児童図書展批評家賞受賞。 |
『ありがとうサンタさん』 |
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『ありがとう サンタさん』 文・内田麟太郎 絵・かすや昌宏 女子パウロ会 2008年10月
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(どうせ、ぼくのところへなんか、サンタはこないんだ…) ひとりぽっちで、心もからだもこごえきった男の子が、クリスマスに出会った温かい奇跡の物語。 やわらかく澄んだ光が心にともるような、美しいクリスマス絵本。
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どこかヨーロッパの石畳の街並みの、光のにじむような美しい絵と、簡潔で静かな文章で描かれているのは、ひとりぽっちの男の子。生きるためにパンをぬすみ、時にはおばあさんの荷車からりんごをかすめ、よってくる子犬に石を投げることもあるような、身も心も凍えた男の子。 街のたたずまいの美しさも、だれもが心はずませるクリスマスや、きれいな雪も、帰る家もないひとりぽっちの男の子にとっては、それだけのものではありません。 けれど、その夜、こわれたバスの中で寒さにふるえながら、ひとり眠る男の子のもとに、・・・。
ページをめくりながら、小さな男の子の必死の横顔や、光る瞳を追ううちに、男の子をとりまく街の穏やかな風景が、いつのまにか、男の子を見守るまなざしのようにも感じられました。 その夜、男の子のもとに贈られたのは、もしかするとささやかな奇跡・・・けれど、男の子の心が目覚める、大きなきっかけだったかもしれないな、と思いました。 特別な聖なる夜に、この男の子もまた、新しく生まれたのかもしれないな、と・・・。 光あふれる翌朝の場面からの展開に、胸がじんと熱くなります。 「サンタさん ありがとう」
物語に導かれるままに、きめこまやかに描かれたページを見ていくと、いつしか、ある登場人物(?)がちらちらと出てくることに気づきます。そして、最後までページをめくると、ちょっぴり驚きの、そしてさらに嬉しいプレゼントをもらったような、温かい気持ちになります。そしてもう一度、余韻に浸りながら、じっくり絵本を読み返すと、ああ、そうか、物語は扉絵からはじまっていたのだな、この扉絵を開くところからはじまっているのだな、と、(それは当然といえば当然のことなのですが)、そのことにあらためて気づいて、感動したのでした。 絵も文もそっと輝いて響きあう、賛美歌のような美しいクリスマス絵本。 余談ですが(?)、あとがきも、じんとしました・・・。
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