さて。 長い夏休み、実は先日から3姉妹ともども帰省中なのですが・・・、キセイチュウ、と、何気なく変換しようとして、実家のパソコンでまず出てきたのが 「寄生虫」。 ・・・確かに、帰省中は寄生虫かもしれないなーと、ふと思ったりする私(笑)。あなたのパソコンではどうですか? そこで(?)今日はこの絵本。
原書は『Clever Bill』Faber and Faber Ltd.,1926年、とあります。 さて、『Clever Bill』をアマゾン洋書で検索すると、幾度か再販されたようで4件ヒットしたのですが、そのうち画像のあった最近のものがこちら。
はっとするようなはっきりした明るい黄色の地に、汽車の走る枠のデザイン、真ん中のタイトル文字の上を、赤い上着にシンバルを携えたお人形のかしこいビルが、いちもくさんにその汽車にむかってかけていく後姿! この絵本のあふれるスピード感、大胆で洗練された美しさを象徴しているような、粋な表紙で、何度ながめてもわくわくします。 そう、この絵本は、大胆でシンプルで骨太でモダンなテキストとイラストのハーモニーがおりなす、わくわくとどきどきのぎゅっとつまった、古くて新しい手作りの絵本。 物語は、主人公の女の子メリーが、遠くに住むおばさんにお泊りに招かれて、荷物をかばんにつめて、汽車で出発するお話。 かばんに何をどうつめこむか、あれこれいろいろ孤軍奮闘・苦心惨憺したあげく、いちばん大切な「かしこいビル」のお人形を入れ忘れてしまって、さあたいへん! 取り残されたかわいそうなかしこいビルは、いつまでも泣いてばかりではありませんでした。 そして・・・。 邦訳の本文も解説以外はすべて手書き文字で、作者が娘のために娘の身の回りの親しい世界を背景につくりあげた温かみある手作りのよさを、存分に伝えている感じがします。 親が子のために作った絵本、には、ほかのすべての子どもたちにも喜ばれ愛され続ける傑作が多いように思いますが(ぱっと思いつくだけでも、『くまのプーさん』(岩波書店)、サンドベルイご夫妻の絵本たち、『モモちゃんとアカネちゃん』(講談社)、などなど・・・)、『かしこいビル』もまさしくその一冊。 父と娘メリーにだけわかる符合のような、実際に持っていたおもちゃや道具などの登場する、くつろいだ温かな雰囲気の中に、ほかのすべての子どもたちにも共通するような、はっとするしぐさが描かれていたりして、作者のウィリアム・ニコルソンさんのやさしくて研ぎ澄まされたまなざしを感じます。 とりわけ3姉妹のハハが大好きなのは、メリーがあわててお泊り道具をかばんにあれこれつめこんでは気に入らず、引っ張り出してはまたつめなおし、とうとううっかりかしこいビルを忘れてしまう一連のあの場面たち! 遠足の前夜もそうですが、今回のキセイあたっても、3姉妹はそれぞれ自分のリュックに荷物を出したり入れたり入れたり出したり、あげくそれぞれいちばん熱心に書いていたお手紙やら絵やらをまんまと忘れてしまうという、そっくりの悲(喜)劇を演じていましたので。 でもハハは、この大好きな『かしこいビル』を、キセイチュウの読み聞かせ用の一冊に選ぶことをしっかり忘れませんでした(笑)。 よろしければ図書館などでお読みになってくださいね。
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