■紙谷元子さんの絵本

かみやもとこ  昭和14年東京生まれ。人形作家。自由学園卒業以来、NHKてれび「ブーフーウー」をはじめ、テレビ、映画、絵本、雑誌、ディスプレイなど、いろいろろなジャンルでの人形制作を担当している。著作に、『紙谷元子の手作り人形 たのしい森のピクニック』(文化出版局、品切れ、うさぎの一家の人形の作り方と実物大型紙、ピクニックの一場面の物語写真ページつき)など。

『ちびくまちゃんちのくっきーづくり』*『ママ、おはなし、もっともっと!』
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『ちびくまちゃんちのくっきーづくり』偕成社 品切れ

『ちびくまちゃんちの
くっきーづくり』
文 黒柳徹子
人形/構成 紙谷元子
小道具 中川涼
加藤和長 撮影
偕成社
1985年
品切れ

「この本は、今、小さい子どもに最も必要なことが、全部、可愛いくまの家族をとおして描かれています。・・・」
と、黒柳徹子さんの言葉にあります。
(『ちびくまちゃんのくっきーづくり』偕成社 表紙カバー 見返し より)

あたたかな家族の愛情と思いやりにつつまれた、愛らしく美しい人形絵本。

「まま、きょうはあたしにも くっきー つくらせてね」
「ええ、ちびちゃんにも、てつだってもらうわね」

おかいものから帰ってきたら、さっそくテーブルに材料をならべます。そこへ、ランドセルを背負っておにいちゃん、おねえちゃんが帰ってきました。
さあ、みんなできょうはくっきーづくり。
粉をよくふるうのはおにいちゃん、粉をきちんと量るのはおねえちゃん、あれあれ・・・ちびちゃんがなきべそです。
「まま、あたしにもやらせてくれるっていったのに・・・。ぐすん」

大丈夫、ちびくまちゃんだって、ちゃんと仕事があるのですよ。
みんなでわいわい、くっきーのかたをぬいて、ならべたら・・・

ちびくまちゃん一家の、にぎやかなくっきーづくりを描いた、心温まる人形絵本。
おかあさんがいて、おにいちゃんがいて、おねえちゃんがいて、ちいさなちびくまちゃんがいて、みんなでわいわいくっきーを作り。ふんわり粉がふりかかったり、甘い生地のにおいをかいだり、しっかりと力をこめて生地をのばしたり、きれいに型をぬいたり、ほしぶどうでかざりつけしたり、つまみぐいしてみたり。おかあさんのさりげない巧みな采配のもとに、それぞれにできることを分担して、一生懸命心を込めて、みんなでつくった自慢のくっきー。
食べるのはもちろん、仕事から帰ってきたおとうさんも一緒です!

いまにもおしゃべりをはじめそうな、いきいきとした表情豊かなくまたちはもちろん、ひとつひとつ丁寧に作られた小さな小さな小道具や洋服までも魅力的。
立体作品の写真絵本という現実の質感と、人形というメルヘンのいとおしさ、くまの生活の営みに重ねて見える自分たち人間の姿が、ほどよくとけあって、心に明かりをともすような、大切な一冊に。
もう一冊の同じお二人のコンビの作品、『ちびくまちゃんちのさんたさんはだあれ』(偕成社、1987年、品切れ)とともに、ぜひとも復刊をお願いしたい珠玉の作品です!

銀座人形館」http://www.angel-dolls.com/index.htmlの「催事のご案内」の「過去の催事」の2005年度のページに、紙谷元子さんの過去の催事のページがありました。
ここのプロフィールはとてもくわしくて、「ちびくまちゃん」絵本についてもふれられています。

『ちびくまちゃんちの
さんたさんはだあれ』
文 黒柳徹子
人形/構成 紙谷元子
偕成社
1987年
品切れ

残念ながら、未読!

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『ママ、おはなし、もっともっと!』文化出版局 品切れ

『ママ、おはなし、もっともっと!』
人形・文 紙谷元子
写真・小林康浩
文化出版局
1985年
品切れ

指の先までも、ひげの先までも、みずみずしい命をふきこまれた動物人形たちが、元気にふるまいながら、ふとした日常の幸せを、気づかせてくれる絵本。
見開き一場面に一つの小さな物語を、本当にもっともっと、大切に見守っていきたくなります。

「すみからすみまで きれいにしましょ」
ハリネズミの女の子は、
はたらきもの。
ちょこちょこと、
よく動き回ります。
一日じゅう、
お母さんのそばで、
お手伝い。
なんでもまねして、
おぼえていきます。
・・・

ハリネズミ、レッサーパンダ、アライグマ、アナグマ、ヒツジ、ビーバー、アラスカグマ、ニホンザル・・・。
本当にたくさんの、心をこめて擬人化された愛らしい動物人形たちが、小さな物語をたずさえて、とっておきの場面を見せてくれます。

つぶらな瞳はいきいきと輝き、口からは今にもにぎやかなおしゃべりがこぼれてきそう。
動物らしさをしっかりと残しながら、一人一人異なる、豊かな表情やしぐさを与えられ、しっかりと自力で立ったり座ったりしているさまは、本当に、こんな動物たちの何気ない毎日が、となりの世界で息づいているような気がします。

丹念につくられた小さなお洋服たちも、かっちりと品のよい雰囲気で、なつかしさと、あこがれを感じます。背景の小物や家具のひとつひとつにも、画面に注ぐやわらかな光までも、作者たちの愛情を感じて、ゆったりと穏やかな気持ち。

手を伸ばせば確かにさわれそうな、三次元の質感を持ちながら、決して届かない二次元の世界に、時の流れを止めたように、音もなくおさまっている、動物人形の世界。
ままごとのような愛らしさはもちろん、別の世界をひたむきに生きているいとおしさを感じて、どのページを開いても、飽くことなく魅了されました。

作品の舞台裏・・・育児をしながらの人形制作の日々をふりかえった、あとがきの、「子育てと、人形作りと・・・」という文章を読むと、それぞれの人形のページがいっそう深く、色合いを増しているように思えます。

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