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『かしこいポリーと まぬけなおおかみ』 キャサリン・ストー作 佐藤涼子訳 若菜珪絵 金の星社 1979年 |
もくじ かしこいポリー ポリーずきんちゃん ポリー おおかみをたすける ポリー おおかみにつかまる
ポリーとおおかみの、どこかぬけていて、ぬかりないかけひきの物語が、全部で4話。楽しいシーソーゲームみたいに、ある話ではあわやのポリーを応援したり、別の話ではあわれなおおかみに肩入れしたり、もうすぐもうすぐとどきどきしたり、もどかしくはらはらしたり。 明るいユーモアと皮肉、ひねりともじりが、痛快爽快な現代版赤あかずきんちゃん物語。
軽快なイラストでさらに楽しさがふくらみます。
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ある日のこと、ポリーがひとりでるすばんをしていると、げんかんのベルがなりました。ポリーがドアをあけてみると、大きくて真っ黒なおおかみでした! 「おい、ポリー、おまえをたべちゃうぞ」 「あら、いやよ」 ・・・
おおかみと可愛い女の子といえば、真っ先に思い出すのはグリムの「あかずきんちゃん」。 現代版あかずきんの可愛いポリーは、とてもかしこくて気が利いていて、ちょっとやそっとじゃものおじしません。いまにも食べられそうなピンチにも動じず、堂々たるもの。おおかみのふとした油断を逃さず、機転を利かせて、おおかみにまんまといっぱい食わせてしまいます。
それに、このどこかとぼけたおおかみさんも、よせばいいのにわざわざ余計なことを自分からやらかしてしまって、ポリーと読み手のおもうツボにはまっているところがあるのですよね。ポリーに出会ったら、あれこれしゃべったりしないで、さっさと捕まえて食べてしまえばいいのに、 「このいいにおいは、いったいなんだ?」 だの、 「おれの読んだ赤ずきんちゃんのお話のとおりにしろ」 だの、自らわき道にそれて、ポリーの逃げ道をこしらえてやっているようなものなのですから、読み手は愉快、拍手喝さい。
かしこいポリーはたちまち、いいにおいのする煮え立ったタフィーに誘導して味見させて飛び上がらせたり、赤ずきんちゃんの昔話どおりのやりとりの再現を要求されれば、 「それじゃうそになるわよ。おばあちゃんのところに行くには、どうしても電車やバスにのらなくちゃならないの。うそついたってなんにもならないでしょ」 と、さらりとやりこめたり。
いろいろな昔話をしたじきに、現代的エッセンスをうわのせして、なんともぬかりなくお手際あざやかで、思わずニンマリ。 そして現代版ポリーずきんちゃんは、やりこめたおおかみのおなかをさいて石をつめるようなことはせず・・・動物園につかまった気の毒なおおかみを助けるために、檻から逃げ出すための小道具をこっそりしのばせた差し入れをするような、お人よしのところがあるのですよね。その謎を解いて今度こそ檻から脱出しようと、くりかえし無い知恵をしぼって奮闘するおおかみのあれこれがミモノです。 もちろん、ついほだされはしても、かしこいポリーですから、めでたくおおかみが檻から出ても、絶対にポリーに手出ししない、という固い口約束のもとに、手助けをくりかえしているのですけれども、どうなっちゃうのでしょう・・・。 ま、相手はケモノ、ケダモノですからね。
現代版ポリーずきんちゃんのかけひきの物語は、さらりとしゃれていて、おっとりと優雅でありながら、ちゃっかりと抜かりがなくて、いたるところでニンマリと笑わせてくれます。実際にはありえないメルヘンな二人ではありますが、一冊あっというまに読み終えると、名コンビの活躍をもっともっと読みたくなりますよね。
これらの楽しい4つの物語は、1955年に出された、「Clever Polly and Stupid Wolf」の中の13の話から選んだ4つのお話だそうです。 作者のキャサリン・ストーさんは1913年ロンドン生まれの児童文学作家、医者でもあり、3人の女の子の母親で、 「おおかみを相手に活躍するポリーは作者の次女で、彼女はおおかみをとてもこわがっていて、自分のベッドの下にはおおかみがいると思い込んでいたそうです。」 とあります。 「1957年にはこの作品の続編「Polly and the Wolf Again」がだされました。やはりポリーとおおかみの九編の話がのっていますが、ポリーの妹ルーシーも登場し、前作におとらず読者を楽しませてくれます。」 のだそうです。 (以上、『かしこいポリーとまぬけなおおかみ』金の星社 役者 あとがき より)
なんともコワモテながらどこか愛嬌のあるおおかみのイラストも、魅力的。
アマゾン洋書で原書を検索すると、こちらなど。↓
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『Clever Polly and the Stupid Wolf (Young Puffin Books) (ペーパーバック) 』 Marjorie-Ann Watts (イラスト) Penguin UK (1967/9/30) 92p
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なお、この「ポリーとおおかみ」シリーズの中からいくつか選ばれた邦訳読み物シリーズに、こちらがあります。↓ 金の星社版のあとがきでふれられていた、「三びきのこぶた」、「おおかみと七ひきのこやぎ」などの昔話を下じきとした愉快なお話も、岩波書店版で紹介されています。 ↓
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『ポリーと はらぺこおおかみ』 キャサリン・ストー作 掛川恭子訳 岩波書店 1979年 1992年新装第一刷 カバー・表紙絵 河本祥子 さし絵(白黒) マージョリー=アン・ワッツ
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1955年の原書『Clever Polly and Stupid Wolf』(Faber and Faber) から選ばれた、楽しいお話が7話。 ・かしこいポリーとおばかさんのオオカミ(※) ・オオカミと豆の木 ・ポリーずきん(※) ・れんがづくりの家 ・七ひきめの子ヤギ ・オオカミの台所(※) ・短いお話 最後に、訳者あとがきが添えられています。
いつも何か足りなくて、後一歩及ばずの気の毒なおおかみさんと、たしなめながら楽しんでいるかしこいポリーの、愉快な愉快なお話をもっと。
(※)は、金の星社版でも別訳されているお話。
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『はらぺこオオカミ がんばる』 キャサリン・ストー作 掛川恭子訳 岩波書店 1979年 1992年新装第一刷 カバー・表紙絵 河本祥子 さし絵(白黒) マージョリー=アン・ワッツ 品切れ |
原書は『POLLY AND THE WOLF AGAIN』、(初版1957年『THE ADVENTURE OF POLLY AND THE WOLF』(Faber and Faber))から選ばれた、またまた楽しいお話が5話。 ・かしこいオオカミとおばかさんのポリー ・まる見えおおかみ ・サンタクロース ・催眠術 ・ルーシーのおよばれ 巻末に、訳者のあとがきがそえられています。
なんとかポリーをつかまえるために、オオカミさん、高いお金を出して魔法の術を教えてもらったり、繰り返し変装にいそしんだり・・・。ポリーの妹ルーシーも登場、なかなか手ごわい一冊です。
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オオカミの言い分; 「こんどこそくってやると心をきめて、あんたと顔をあわせると、とたんに、なんだかんだいいはじめるものだから、たちまち、わけがわからなくなっちゃう。なぜだかしらないけど、いつもあんたにまるめこまれちゃって、・・・しめくくりはいつもおんなじ。あんたは無罪ほうめん、わたしははらぺこのままひきあげる、だろ。」 (「まる見えおおかみ」本文より)
ポリーの言い分; 「いつもまわりをうろうろしているオオカミを、だしぬいてやるのを、じつは、かなりたのしんでい」るのです。 (「催眠術」本文より)
自分を冷静に分析し、一見危機的な状況を手玉にとるように、大いに楽しんでいる余裕のポリーはもちろんかしこいですが、時にしょぼくれてうなだれるオオカミもまた、なかなか客観的に自分の観察をとりおこなっていて、かしこいですよね(?)。
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『まだまだ はらぺこオオカミ』 キャサリン・ストー作 掛川恭子訳 1994年 カバー・表紙絵 河本祥子 さし絵(白黒) ジル・ベネット 品切れ
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『TALES OF POLLY AND THE HUNGULY WOLF』(Faber and Faber Limited,London)1980、と、 『LAST STORIES OF POLLY AND THE WOLF』(Faber and Faber Limited,London)1990、から選ばれた、楽しいお話が5話。
・ほんもののポリーは? ・魔法のくすり ・あなはほるもの? ・ハイジャック ・きれいになるのはらくじゃない 巻末に、訳者のあとがきがそえられています。
昔話方式から現代的手段まで、オオカミのあの手この手、下手な鉄砲式体当たり、的外れの痛快な迷活躍も、とりあえず、これにてひとくぎり・・・なのかしら。なんのこれしき、これからも、オオカミ道を極めてくださいね!
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キャサリン・ストーさんの本 「か」の絵本箱へ

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