■フィリップ・コランタンさんの絵本 |
Philippe Corentin 1936年生まれ。『ELLE』『marie claire』『VOGUE』など、一流ファッション誌のイラストを手がけた後、1985年から絵本を発表しはじめる。同じく絵本作家のアラン・ル・ソーは、彼のふたごの兄弟である。 (『ポッチャーン!』朔北社 著者紹介 、『アフリカにいきたい!』佑学社 著者紹介 参照) |
『ポッチャーン!』*『パパーッ!』*『アフリカにいきたい!』*『ちいさなちいさなサンタクロース』 |
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『ポッチャーン!』 フィリップ・コランタン作 ふしみみさを訳 朔北社 2006年
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井戸の底にまるくてきいろいチーズを見つけたオオカミが、 ポッチャーン! 井戸に落ちました。チーズはもちろんおつきさま。くやしがるオオカミの井戸を、たまたま通りかかって覗き込んだのは、ブタ。 何もしらないふとっちょブタに、オオカミはすずしい顔でじまんして・・・。
愉快痛快な井戸中会議。水もしたたる面々の中で、最後にだまされるのはだーれだ。 長い長い縦開きの絵本が、井戸と欲望の深さを描き出して、抱腹絶倒。
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むかしあるところに、 おなかをぺっこぺこにすかせたはらぺこオオカミがいました。 あるばんいどのそこにチーズをみつけたオオカミは、みをのりだして、もうすこし、あともうすこし・・・ ポッチャーン! いどにおちてしまいました。 もちろんチーズはみずにうつったつきでした。おまけに、 ゴッイィーン! おけまであたまのうえにおちてきて、ずぶぬれ、さんざんです。
そこへふとっちょのブタがとおりかかって、井戸の底のオオカミから、おいしそうなチーズの話を聞くと・・・
縦開きの絵本の長さの迫力を巧みに活用した、愉快な井戸中会議(?)の物語。 だまされるものとだまくらかすものの、そらっとぼけた必死のかけひきがたまりません。まさしく水面下では命がけの迫真の話術で、ただの井戸の底が、通りすがりの気の毒な動物たちの大好物のごろごろころがる魅惑の場所に大変身。 井戸のつるを利用して、一匹ずつ交代ででたりはいったりする展開も楽しいですが、途中で加速度が付いて、高まるお互いの期待のすれ違うところが、いよいよスリル満点。 アニメみたいな明快な絵も、表情や動きのいきいきとした動物たちも、楽しい擬音が聞こえてきそうなテキストも、子どもたちが夢中になる要素がたっぷり。 まことにお気の毒ですが、オチまでお茶目。そうなってしまったら、もう文字通りすくいようがなくなっちゃったかも?
まったく余談ですが、小道具でおけが出てくる印象的なロシアの民話に、「金の魚」があります。個人的に思い出して、しみじみ。
原書は『Plouf!』1991, l'ecole des loisirs, Paris とあります。 アマゾン洋書では英語版がこちらなど。↓
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『Splosh! (ペーパーバック)』 Andersen Press Ltd (2002/2/21)
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『Papa! パパー!』
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フィリップ・コランタン作・絵 薫くみこ訳 ポプラ社 2002年 |
ところかわれば、しなかわる。でもかわらないものもある。 二人の子どもをねかしつける、二人の両親の優雅な描写と、子どものまんまるな目がたまらない、痛快おやすみかいじゅう絵本。 どの世界でも、親子の絆はかわらないのですね。
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あたたかいベッドのなか。 ぼくのとなりにいるものなあに? 「パパーッ!ぼくのベッドに、かいじゅうがいるよ!」 そしたらパパがすっとんできて・・・!
うとうとしかけたまくらもと、もしもとなりに、かいじゅうが寝ていたらどうしますか?
「かいじゅうなんかいるもんか。こわいゆめをみただけさ。さあ、おいで。ママのところにいこう。」 ・・・
なんてスピーディなパパの登場、なんてスマートなパパの台詞。でも、どのパパ?
友人を招いてパーティーをひらくような洒落たヨーロッパの家庭を、子どもの低い目線で切り取ったような構図も、穏やかなパパの接し方や、茶目っ気あふれるママのなだめ方の描写も、垢抜けていて洗練されているのですが・・・あれれ? 気持ちよく想像を裏切る展開に、待ってましたとわくわく腕まくりでページをめくってしまいそう。二人の両親のなめらかな応対に、ニフニフ、じゃなかった、ニマニマしてしまうかも。 鉛筆と水彩、あるいはインクで描かれたような、ふっくら温かな雰囲気のタッチも、ほどよくコミカルで、ほどよくリアルな質感があって、なさそうでありそうな、不思議なファンタジーにぴったり。
たまにはいつもの目線や立場を変えて、相手の気持ちによりそってみる、柔軟さを忘れないでいたいですよね。
結末がたまらなく好きですが、個人的に、最後から2ページ目のテキストがツボでした。 そうそう、きみもきみも、目の前の読み聞かせのきみたちも、みんなみんなかわいいかいじゅうなのですよね・・・。
原書は『Papa!』1995, l'ecole des loisirs, Paris とあります。 アマゾン洋書では英語版がこちらなど。↓
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『Papa! (学校) 』
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Chronicle Books Llc (Juv) (1997/06)
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『アフリカにいきたい!』 フィリップ・コランタン 作/絵 のむらまりこ訳 佑学社 1992年 品切れ
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渡り鳥みたいに、アフリカに行ってみたくなったネズミのピリーは、ものしりのクロツグミと、カエルと一緒に、アフリカへと飛び立ちます。 ええ、クロツグミは、なんでも知っていますからね!クロツグミの言うことを信じていれば、すべて順調、楽しいアフリカ旅行ができます・・・?
丁寧なイラストと、大真面目なテキストの、ずれを貫き通した大型絵本の迫力がたまらない豪快絵本。
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「ねえ、おかあさん!ツバメのジネットみたいに、ぼくもアフリカにいきたい!」 そう言い出したネズミのピリーですが、ピリーとおなじくらいの大きさのジネットでは、ピリーを乗せて飛ぶことができません。大きな背中のコウノトリは・・・食事風景の皿の上のネズミを目の当たりにして、断然却下!と思ったら、巣からも落っこちてしまいました。 落ちたところは、ものしりのクロツグミのせなかでした。クロツグミは、必要がないのでアフリカに行ったことはありませんが、アフリカについてはよく知っています。 「いいかい、このぼくがしらないことなんてないんだよ。」 ・・・
自信たっぷりのクロツグミは、ピリーと、飛び入り参加のカエルを背中に乗せて、翌朝、意気揚々と、アフリカにむけて飛び立ちます。 「いいかい、アフリカはみなみにある。 みなみっていうのは、たいようがのぼったばしょをみると、わかるんだ。 わかったら、まっすぐすすむ。 ゾウがいたら、もうそこはアフリカさ。 キバがあれば、そいつはゾウにまちがいない!」 ・・・
アニメーションのセル画みたいな明快なイラストの大型絵本。 必要に応じて擬人化された動物たちの服装や表情が、ズバリ的を得ていて、大笑い。帽子や荷物など、さりげない小道具も注目。 知ったかぶりのクロツグミの、知識の断片を自己流に組み合わせて完成させるアフリカ図の、まことしやかなたまたまの一致と、それ以外のあらゆる不一致が、可笑しいのなんの、脱帽です。 ともあれクロツグミの解説するところの「アフリカ」を堪能して、ホウホウノテイで帰る三人の、オチも痛快、三人の勇敢な探検者たちのそれぞれの表情も抱腹絶倒です。 この無邪気で素直でへこたれないお騒がせ三人組の、勘違い思い込み冒険物語の続編も、もしもあるなら、ぜひとも拝見してみたい!
原書は『L'AFRIQUE DE ZIGOMAR』1990 とあります。
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『ちいさなちいさな サンタクロース』 フィリップ・コランタン作・絵 のむらまりこ訳 佑学社 品切れ 1991年
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サンタクロースを見たことがない人は、ぜひこの本を読んでください。 どうして今の子どもたちが、サンタクロースにお目にかかれないのか、ズバリ痛快に描かれています。 さあ、しんぼうづよくさがしてみませんか?
子どもの疑問に答え、大人の心を突く、サンタクロースの心意気と真実を描いた粋な絵本。
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むかし、クリスマス・イブのばん、サンタクロースはえんとつからいえにはいって、こどもたちにプレゼントをとどけることがありました。 ときどきだんろのまえで、こどもたちにみつかることもありました。 ところが、あるとしのクリスマスから、すっかり事情が変わってしまったのです。 サンタクロースがいつものようにやってくると、やねのうえには、テレビのアンテナがにょきにょき! だんろがあったばしょには、テレビが。 これではどうやってサンタクロースは、こどもたちにプレゼントを届けたらいいのでしょう・・・
そこで、サンタクロースは、家の中に入る、別の方法を探すことにしました。 屋根からでは・・・雪ですべってしまいます。 玄関からでは・・・押し売りや泥棒と間違えられて大慌て。
「せんめんだいのはいすいこうからはいるとするか。」 そこでサンタクロースととなかいのヌーヌは、からだを小さく入り込みましたが、中は真っ暗で水浸しで・・・
これぞサンタクロースのほんとのお話。 どうして今の子どもたちが、誰もサンタクロースを見たことがないのか、これを読めば合点がいきます。 煙突の少ない日本の子どもたちの家にも、毎年ちゃんとサンタさんがやってきて、くまなくプレゼントを配り歩いているのは、実はこの方法だったのかと、はたと思い当たるかも。 アニメーションのセル画のように明快で、艶のあるイラストは、陽気でコミカル。でも描かれていることは・・・シニカルで、痛烈です。 こんな新しい方法を使ってまでも、子どもたちのところにやってきてくれている辛抱強いサンタクロースさんに、アリったけの感謝の気持ちをささげつつ・・・
原書は『Le Pere Noel et les fourmis』 1989 l'ecole des loisirs, Paris とあります。
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