ある日のこと、ひとりぼっちの年老いた農夫が、古い布着れにわらをつめ、かかしを作りました。 自分自身しか話す相手のいない、ひとりぼっちの年老いた農夫と、農夫に頭をつくってもらったかかしの、春からはじまるゆっくりとしたふれあいを描きながら、静かに秋の実りを感じる、美しい絵本。 夢のように果てしなく続く広大な農地の真ん中に、ぽつんと立っているかかしの顔は、農夫の手作りの黄色い目で、どことなくあいきょうもたっぷり。雨の日も風の日もかんかん照りの日も、だまってその場を守り続けるかかしに、農夫はおずおずと、けれどだんだん、心をひらき、重ね、添わせるようになります。単なるかかしが、ただのかかしでなくなっていく様子を描いた文と絵の、美しく、暗示的で、幻想的なこと・・・。農夫とかかしにまつわるさまざまなものが、ジグソーパズルのように、つぎつぎと納まる場所に納まっていく物語は、心地よい不思議と余韻をつれてきてくれます。 原題は、『The Scarebird』 Copyright 1987 by Sid Fleischman Inc. 1988 by Peter Sis とあります。
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