■ピーター・シスさんの絵本

1949年、チェコ生まれ。プラハとロンドンで絵画と映画を学ぶ。短編アニメ映画作家として国際的評価を得たが、1982年、アメリカ合衆国に移住。現在はニューヨークに住む。コールデコット・オナーブックを受けた『星の使者』(徳間書店)はじめ受賞歴多数、作品多数。

『どうしてかわかる?』*『あたまをひねろう!』*『やっとわかったぞ!』*『さあ、羽をあげるよ』*『三つの金の鍵 魔法のプラハ』*『わたしはバレリーナ』

≫別頁『かかし』

 

『どうしてかわかる?』晶文社

『どうしてか
わかる?』
ジョージ・シャノン作
ピーター・シス絵
福本友美子訳
晶文社

世界中から選りすぐった、昔々の知恵話、とんち話、なぞなぞが、ユーモアと皮肉と遊び心もたっぷりに、現代の子どもたちを楽しくなやませます。丹念な点と線でつむいだ、ピーター・シスさんならではの線画も、おおいに助けてくれるでしょう。

あなたは「どうしてかわかる」かな?
少し大きい子むきの、なるほど絵本。

世界のなぞかけ昔話1、とあります。
世界各地に伝わる愉快な昔話が14編、ピーター・シスさんの大小さまざまな挿絵とともにおさめられています。
細かな点と線を丹念に集めて構成された砂絵のような、ピーター・シスさんの魅力的なイラストは、シンプルな一色刷り。ページにより、落ち着いた藍色と、茶色の2色が用いられていて(イラストは一色ですが、テキストにもう一色が使われているページもあります)、ほどよくレトロで、不思議な浮遊感を感じます。
眺めていると、なぞなぞの不思議な世界にぞくぞくと引き込まれていく感じ。

そのなぞなぞはこんな風。

「ほんものの花は?」
むかし、ソロモン王がシバ女王の国を訪れました。二人とも美しく賢かったのですが、シバ女王はソロモン王の知恵を試そうと、あれこれなぞなぞをだしたあげく、花いっぱいの部屋にソロモン王をつれて行きました。
そこは、シバ女王が国中の職人や魔術師に作らせた、ほんものそっくりの美しいニセモノの花ばかりがさきほこる部屋でした。
「このなかに、一本だけほんものの花があります。それをあててください」
と、シバ女王はいいました。
困ったソロモン王は、いろいろ考えたあげく、
「この部屋はちと暑すぎる。カーテンをあけて、風をいれてくださらぬか。良い空気にあたれば、頭もよくはたらくというものじゃ」
と、いいました。
そしてこころよくシバ女王がカーテンをあけると、たちまちソロモン王は本物の花を言い当ててしまったのです!

どうしてすぐにわかったのかな?

答えは・・・じっくり考えたら、分かった人も分からなかった人も、さっそく次のページで答えあわせが出来るのでご安心。
ひねりとユーモアの効いたオチに、ピーター・シスさんが、時には見開き一面を使ってのびやかな挿絵を添えているので、楽しく一つ一つのなぞなぞを反芻することができます。
どこかできいたことのあるようななぞなぞも、まったく知らなかったなぞなぞも、ヘリクツぽいちょっと苦笑するようななぞなぞも、お手際鮮やかで感心するようななぞなぞも、「ああ」「へえ」「ほう」と、たっぷり14編ありますのでお楽しみ。

ジョージ・シャノンさんは、アメリカの作家で、児童図書館員を経て、現在はプロのストーリーテラー、作家として活躍しているそうです。ピーター・シスさんの、アメリカで最初に出した絵本が、ジョージ・シャノンの作品『Bean Boy』の挿絵だそう。

原書は『Stories To Solve』HaperCollins Childlen's Books.division of HaperCollins Publishers.Inc.,New York 1985 とあります。
アマゾン洋書で検索したところ、表紙の雰囲気が邦訳とは異なって、こんな感じ。

Harpercollins Childrens Books
2000年の再販。

Beech Tree Books
1991年に出版された別の表紙のもの

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『あたまをひねろう!』晶文社

うれしいことに、この絵本、シリーズでもう一冊でています。

『あたまを
ひねろう!』

ジョージ・シャノン作
ピーター・シス絵
福本友美子訳
晶文社

『どうしてかわかる?』を読み終えて、謎解きのコツと楽しさがどんどんわかってきたらこちらも。

昔々からさまざまな人の頭をひねらせてきた、手ごわいなぞなぞたちが勢ぞろい、ピーター・シスさんの華麗な線画とともに、またまたたくさん楽しめます。

あなたのお気に入りはどれですか?

世界のなぞかけ昔話第2弾です。
こちらはもっと読みたい読者のためのさらなる続編・15編からなる読み物で、シックな赤紫と青緑色の2色の色で構成されています。

「ミルクにとびこんだカエル」
底が深く壁がつるつるで足のかけばもない、新鮮なミルクのバケツに入ってしまったカエルが、なんとか脱出しようとぐるぐるうろうろミルクの中を泳ぎまわって試みるも失敗をくりかえすうち、あらら、出られちゃったのですが、さてどうしてかな?

答えは・・・簡単な知識があり、答えがわかると「ああそうか」と思うのですが、しかしそれを巧みに楽しいなぞなぞに仕立て上げたところが「ほほう」という感じ。

「見たことも聞いたこともないもの」
むかし、戦争のかわりになぞなぞで国の勝ち負けを決めていた頃、どうしても勝ちたいバビロンのリクルゴス王が、元奴隷だった賢いイソップを使いにやって、エジプトのナクタナボ王になぞなぞを出して、難なく勝ちをおさめました。
ところがイソップに負けたナクタナボ王は、このままではしゃくなので、いろいろイソップになぞなぞをだしたあげく、絶対に勝てるなぞなぞを思いついていいました。
「わたしが見たことも聞いたこともないものをもってこい。そうしたら、ほうびとして1000ドルをリクルゴス王にしんぜよう。
それができなければ、おまえもリクルゴス王も、負けをみとめなければならぬ。」
3日後、イソップが持ってきたのはなにかが書かれた紙切れでした。
それをみた王と、おつきのものたちは、事前の打ち合わせどおり、「これは見たことがある。おまえの負けだ」というのですが、イソップはあっさりと、
「それでは、わが王へ1000ドルをいただきましょう」
と言います。
ナクタナボ王は何故かあわてて、
「いやちがった!こんな紙は、見たことがない」と、打ち消すのですが、
「それならそれで、やはりわたしの勝ちです。1000ドルをいただきましょう」
と、イソップに言われてしまいます。
結局、見たことがあってもなくても、1000ドルを払うことになってしまったこの不思議な紙切れには、一体なんと書いてあったのでしょう?

答えを見ると・・・「ああ、そういうことね」と、納得。実はすぐにピンと来なかったのですが、王さまがその紙切れを見て、「見たことがある」と一度は台本どおりに答えながら、書かれた内容を吟味したとたん「見たことがない」と演技をかなぐりすててあわてる様子が・・・納得すると、痛快です。深い。

裏表紙に、「10歳以上のみんな」(向き)と書いてあります。
簡単な漢字はルビなしで、本文の字も小さめ、何より世界中から集めた楽しいなぞなぞに、ちょいとひねりとパンチが効いているので、長女に読みきかせしたところ、・・・まだまだあまいな、という感じ(笑)。
ですが、なぞなぞの助けとなるのびのびとした美しいイラストがたっぷりあるので、自分であれこれ答えを探す楽しみが味わえそうです。
その結果わからなくても、ページをめくって答えあわせをすると、「そうだったのか!」と、おもいがけない発見がありそう。昔話の持つウィットやユーモア、しゃれたなぞなぞの持つある種のパターンなども、だんだん習得できるのでは、と思います(期待・・・)。

これからこっそり本棚に並べて、ゆっくりテグスネひいて出番を待ちたい読み物です。

原書は『More Stories To Solve』HaperCollins Childlen's Books.division of HaperCollins Publishers.Inc.,New York 1991 (テキストの初出は1989年のようです。(a version of "Firefly and the Apes" appeard in Cricket magazine ,April 1989) とあります。
アマゾン洋書はこちらなど。

Trophy Pr
2001年再販版。

Beech Tree Books
1991年に出版された別の表紙のもの

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『やっとわかったぞ!』晶文社

『やっと
わかったぞ!』
ジョージ・シャノン作
ピーター・シス絵
福本友美子訳
晶文社

世界のなぞかけ昔話第3弾です。
世界中から集められた、汲めど尽きぬ泉のような、昔の人の知恵とユーモアの結晶ともいえるなぞかけ話が、さらにもっと!

世界のなぞかけ昔話第3弾です。
こちらはさらにもっと読みたい読者のための、続続編・14編からなる読み物で、シックなレンガ色と青紫色の2色の色で構成されています。

「お坊さんのねがい」
むかし、インドに、おくさんと、年をとって目が見えなくなったおかあさんと、3人でくらしているたいへんまずしいお坊さんがいました。12年の間毎日熱心にお寺のシバの神様にお祈りをつづけると、とうとう1つだけシバの神様が願いをかなえてくれることになりました。
ところがおくさんは、「どうしてもむすこがほしい」といい、年を取ったおかあさんは、「目がみえるようにしてほしい」と言うのです。
困り果てたお坊さんが、町を泣き歩いていると、巡査が通りがかって、いい方法を教えてくれました。
お坊さんは次の日さっそくシバの神様のところへ行って、おかあさんとおくさんのどちらの願いもかなえてもらうことができたのです。
さて、巡査は何と言ったのかな?

ものは言いよう、とはいいますが、言葉の力は不思議!
ありがたいシバの神様のおつげに、とつぜんふってわいた一家の嫁・姑問題(?)を、見事解決した巡査はさすが。子はかすがい、目に入れてもいたくない、とはこのこと???(ではありませんってば)

「カラシのたね」

ある若い夫婦が、目に入れてもいたくないほどかわいがっていた幼い子どもを、病気で亡くしてしまいました。母親は嘆き悲しみ、子どもが生き返る薬を探して訪ね歩きました。みかねたある親切な人の忠告で、ブッダのもとをおとずれると、その薬には一つだけ、「カラシのたね」が足りない、と教えられました。ただし、そのカラシのたねは、
「子どもも、つれあいも、親も、まだ一人も亡くしたことのない家からもらってこなければならぬ」
母親は長い間探し続けましたが、そのような家は一軒もなく、とうとう薬は手に入りませんでした。
けれども母親はべつの薬を手にいれて、苦しみをやわらげることができました。

さて、どんな薬をみつけたのかな?

どんな武器よりも強い言葉の力、どんな薬よりも効く物語の力を、たっぷりと。
はるか昔に語り継がれた、生き抜く知恵とユーモアのつまった謎かけ物語は、どんな宿題よりもやりがいがあって、楽しいかも!

原書は『Still More Stories to Solve』、コピーライトは1994、とあります。
アマゾン洋書ではこちらなど。↓

Still More Stories to Solve:
Fourteen Folktales from Around the World

William Morrow & Co
1996

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『さあ、羽をあげるよ』BL出版

『さあ、
羽を
あげるよ』
ジャック・タラヴァン文
ピーター・シス絵
いしづちひろ訳
BL出版
2003年

まだあらゆる生き物に羽がなかった遠い昔のおはなし。
水色の愛らしい男の子が、背中に背負った不思議なかごから、羽を望むすべての生き物にそれぞれぴったりの羽を与えていたのです。
見返りは何も求めず。

こうして羽と喜びを与え続け、少しくたびれた男の子が木の下で眠った夜、まさにどういう風のふきまわしなのか、突然の嵐が、男の子のかごの羽をみんな海にまきあげてしまったのです!
そして・・・。

果てしなく無数に広がる天の川のように繊細にちりばめられた点描のイラストと、天の川の調べのようにピュアで清らかな物語が、天の川の流れ星のように、心の琴線にそっと触れる作品です。
心が洗い流されるような、どこまでも澄み切った美しい絵本。

むかし、神様がこの世をおつくりになった頃、たくさんの羽の入ったかごを背負った男の子がいて、どこから来たのかわからないけれど、星のようにかがやくひとみをしていて、羽をほしがるものたちにはだれにでも、変わりに何もとらず、ただ喜んで羽をつけてあげていました。

羽をもらった生き物たちは喜び、それぞれの精一杯のやり方で感謝の心を伝えます。
男の子はほほえんで、また新たなものたちに、ぴったりの羽を捧げ続けるのでした。

ところが、風は、そのことを、もしかすると、よく思わず、ねたましくおもったのかもしれません。
突然おそった嵐が、男の子の大切なかごを海にひっくり返してしまい・・・。

ゴールドの表紙の豪華な絵本で、ピーター・シスさんの独特の点描の、米ぬかの雨のようなやさしい線が、夢の世界のような、蜃気楼のような静かでふんわりした雰囲気をかもし出していて、チャーミングでピュアな物語にぴったりの仕上がりになっています。

もうどうして、こんな真っ白で、純粋な物語が書けるんだろう、どこからこのきらきらと輝く結晶のような物語はやってきたんだろう、そう思わずにはいられなません。
この物語が、父から息子へ贈られたもの、というエピソードが、さらに作品の純度を高めている感じです。
表紙のゴールドも、さりげないエンボス加工、というのでしょうか、男の子が清らかに浮かび上がる表紙カバーのつややかな仕上げも、宝石のようなこの絵本のもつ貴さにささげられている感じです。
とてもとても大切な、宝物のような一冊。

テキストのジャック・タラヴァンさんは1991年に亡くなったフランスの元外交官だそうで、この『さあ羽をあげるよ』は、彼が息子のために書いた物語、だそうです。

原書(英語版)は『The Little Wing Giver』、1997年初版。
アマゾン洋書ではこちらなど↓

The
Little Wing Giver

Henry Holth & Co (J)
(2001/10)

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『三つの金の鍵魔法のプラハ』BL出版

『三つの金の鍵
魔法のプラハ』

ピーター・シス作
柴田元幸訳
BL出版
2005年3月

嵐で気球が不時着したのは、尖塔の立ち並ぶくねくねと入り組んだ石畳の大きな街、生まれ育ったプラハだった。
懐かしい我が家を探し当てるも、扉には三つのさびた南京錠がかかっている。
そのとき、どこからともなく我が家の黒猫が現れた。
ついてこい、と、猫は光る瞳で語りかける・・・。

まさしく全頁魔法のプラハ。
ピーター・シスさんが自分の娘にささげる形で描かれた、ご自身の幼少のプラハの思い出、伝説と幻想の街・プラハへのあくがれいずる魂の旅。

銅版画のような精緻なタッチ、長いときにさらされた後になお残るような濃密な色彩、光と闇の入り混じった、夢とうつつのまにまに漂うような、幻想的なテキスト、三つの鍵となる古い伝説・・・。

お値段・装丁・ページ数、そして内容ともに充実の、気品あふれる、渾身の作。
価格2100円(税込み)、およそ30cm×25.7cmの大型本、ずっしりとした重み、ページ数60、どのページにも、見開きいっぱいに、ピーター・シスさんの描く魔法のように濃密で神秘的なイラストが、フルカラーで目を奪います。

マデリン・・・。

それは悪夢か天使のひととき授けた夢か、運命の糸に導かれるように、気球が不時着したのはプラハ。
かつて家族や友と無邪気に過ごした懐かしい街。
とたんに記憶があふれ出す。
ぼくの家はまだあるだろうか・・・。

記憶のままに夢中でたどりついた家には、さびた三つの鍵がかかっていた。
ふいにあらわれたなつかしい黒猫が、ついてこいとぼくを誘う。
鍵は護るもの、そして手にした者に中に入る力を与えるもの。
歴史上ずっと、訪れるひとに、街の鍵を渡すならわしが続いてきた。
特別な客には二つの鍵を、とりわけ特別な客には三つの鍵を。

ぼくのよく知っていた、そして永遠の別れをつけた、ずっとずっと前の日の記憶の、神秘の街。
ねこに導かれ、思い出をたどってさまようぼくに、プラハはつぎつぎとその秘密をひもといてゆく。
一つ、また一つ、時のまにまに、思い出のはざまに、積み重ねられたはるかな文化の中に、声にならない闇の中に、伝説がよみがえり、金の鍵をぼくに与える。

そして特別の三つ目の鍵を手にしたとき、ぼくの中のぼくのプラハが・・・ぼくから頑なに守られていた、魂の焦がれるようなプラハが、ぼくを受け入れて、そして、ぼくはいまぼくになった。
ぼくは・・・。

かなり個人的感想文ですが、見るもの、読むもの、そして感じるものに、その時々で、さまざまなインスピレーションを与える、金の迷路のような、迷い込んだものをとりこにする1冊。

夢と伝説の、思い出とあこがれの、うすいはかない幾重ものベールのむこうに、まぶしいプラハが、特別の街がほのうかび、手招きしながら見え隠れします。
万感の思いのこめられた街。

ああ、チェコ、プラハ、行きたい!

ピーター・シスさんのお嬢さま・マデリンさんは、最愛のお父様から、このようなすばらしい形で自分のルーツをプレゼントされるなんて、なんとも贅沢なお話ですよね!

原書は『The Three Golden keys』、最初のコピーライトは1994年、とあります。
Map following endpapers コピーライトが2001年、とあります。
アマゾン洋書で検索するとこちらなど。

Doubleday
1994年

Frances Foster Books
2001年

もともとは1994年に出版なされたものが、2001年に再販されたようです。


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ちなみに、ピーター・シスさんの他の作品で、3姉妹にとても好評だったのが、こちら。

『マドレンカのいぬ』
ピーター・シス作
松田素子訳
BL出版

マドレンカ、というのは、お嬢さまのマデリンさんのことなのかしら。
だとしたら、マドレンカがこんなに街にとけこんで、いきいきと描かれていることにも納得です。マドレンカにとっての「三つの金の鍵」は、やがてこの街になるのかもしれませんね!

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『私はバレリーナ』BL出版

『私はバレリーナ』
ピーター・シス作
松田素子訳
BL出版
2002年

テリーはバレリーナを夢見る女の子。学校から帰ってリュックを置いたら、
さあ、もう、まちきれないわ!

左側ページには、踊る小さなテリーがシンプルに、右側ページには、美しい衣装をまとって軽やかに踊るプリマドンナのテリーが華やかに、あこがれをうつした鏡のように、額に飾られた一枚の絵のように描かれます。

みてみて!
夢に向かって一生懸命ステップをふむ、愛らしいテリーのあこがれが、いっぱいつまった心弾む絵本。

 

最初のぺージに、
For my niece Tereza Sis
と、記されているのですが、これはお嬢様のお一人かしら?

主人公はテリー。
頭をてっぺんで高く結い上げた、元気のいい小さな女の子。背負っているのはランドセル・・・ではないと思いますが、リュックサックで部屋に帰ってきたところが、小学一、ニ年生くらいの年頃かなあ、と、親しみがわきます。
そのテリーはバレーがだいすき。

テリーの部屋にはバレーのポスター、ベッドの柵にはトゥ・シューズ、本棚にはバレエ人形、壁には大きな大きな鏡。
物語の始まりのページは、真新しいぬりえみたいに色がないのに、この鏡の枠と、テリーのにっこりした口だけ、シンプルに色が施されているのです。そしてテリーだけ、元気のかたまりのような、しっかりした太い輪郭線

さあ、もう、まちきれないわ!

テリーはリュックも服もぬいで、大きな鏡に向かってジャンプ!早速タイツをはいて踊ります。

鏡に映るテリーは・・・あら、ページをめくると、不思議不思議。
準備体操、いち、に、さん、で、魔法のようにおねえさんの踊り子に変身です。
ピーター・シスさんならではの、細やかな点描とやわらかな色使いの、銅版画のような持ち味の美しいタッチで、鏡の踊り子は描かれます。
「白鳥の湖」「くるみわり人形」「シンデレラ」・・・。
踊りにふさわしい背景も一緒です。

「絵になる」少女のできあがり。

左ページには、太い実線に、口元とそのページのテーマの衣装の色だけ施された、シンプルなテリーが、余白をまとって踊ります。
右ページの大きな鏡の中は、夢見る大きなテリー。同じポーズの憧れのプリマドンナが、同じ色の美しいドレスに身を包み、お城や湖などぴったりの背景の中でうっとりと踊ります。

小さな女の子の夢と憧れを軽やかに映した、砂糖菓子のような、それもさらさらの粉砂糖のような、素直で愛らしい絵本。

とりわけ最後のページはわあっと夢いっぱい、くじゃくが羽を広げたような、流れ星がそろってふうわり舞い降りたような、華麗で流麗な場面は圧巻。3姉妹も大好き!

原書は『Ballerina!』c/o Gotham Art&Literary Agency,Inc.,New York 2001、とあります。

『Ballerina!』
Greenwillow

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