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『まちのねずみ と いなかのねずみ』 イソップ寓話 ポールガルドンえ 木島始やく 童話館出版 1997年
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いなかにのんびり暮らすねずみが、「そんなにマチはいいものかいな」と、都会のねずみのところへ遊びに行って、洗練された憧れの都会暮らしを垣間見…ようとして、散々な目に…という、有名なイソップ童話に、ポール・ガルドンさんのイラストががユーモアとスパイスを添えた楽しい作品。
少し他の絵本と画風が異なる雰囲気が新鮮。 生き生きとダイナミックな線画、躍動感あふれる大胆な構図はここでも冴えわたっていて、田舎のねずみが都会のお城でふるえあがる驚愕の場面は、臨場感抜群、思わず一緒に身震いしてしまいそうです。
実際の生活でも、大地とともに暮らすのんびりした生活を満喫なさっていたそうですから、このお話に注がれた情熱はいかんや、ですよね。
かつて佑学社より出ていたものの復刊だそうです。
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原書は『The Town Mouse and the Country Mouse』McGraw-Hill Book Company,New York、コピーライト年数の記載がなく、不明。 アマゾン洋書を検索するとこちら。最近の再販はないようなのですが、古いもので1971年、という記載がありました。
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『ブレーメンのおんがくたい』 ポール・ガルドン え 晴海耕平 やく 童話館出版 1999年
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有名なグリム童話を、青とベージュと赤のひかえめの色彩と、骨太の線画であっさりと、不気味にユーモラスに鋭く描いた、傑作絵本。モノクロの挿絵が多いのも、不穏な夜の場面をもりあげています。
年老いてお払い箱寸前のろばが、自力で逃げ出して、ブレーメンの町で音楽隊にやとってもらおうと考えました。 道々であった同じ境遇のいぬ、ねこ、にわとりを加えて、4匹はブレーメンを目指します。
途中の森の中で、一夜を過ごそうとしたとき、奥に明かりのともった家を見つけました。 早速近づいて窓からのぞくと、こわもてのどろぼうたちがごちそうのテーブルを囲んで上機嫌。
そのごちそうにありつきたいともくろんだ4匹は、知恵をしぼって・・・。
動物たちの表情も豊かな、素朴で動きの楽しい作品。
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原書は『The Bremen Town Musicians』c/o The Estate of Paul F.Galdone,Chelsea,Vermont,U.S.A.,コピーライトは1968年、とあります。 アマゾン洋書 には…ざっと見たところ、リストがない?のかしら。だとしたら、この邦訳は、もしかすると貴重、なのかも!
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『ちいさいちいさいおばあさん』 イギリスの昔話 ポール・ガルドン え はるみこうへい やく 童話館出版 2001年
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むかし、ちいさいちいさいある村のちいさいちいさいおばあさんが、ちいさいちいさいお散歩に出て、ちいさいちいさい教会の墓地でちいさいちいさいほねをひろって、 「これでわたしのちいさいちいさいスープがつくれるわ」 と、ほくほくもってかえって…。
くたびれたおばあさんの、夕食作りの前の昼寝の寝床を案の定おそう、妖しい声・・・。
「おれのほねをかえせ!」
繰り返しの楽しいリズムと、遊び心あふれる軽やかなイラスト、そしてたたみかけるようなこわーい展開、幼い子をとりこにするちいさいちいさい絵本です。 読み聞かせの際にはたぶん読み手の熱演が加味されるので、「絵本をよんでもらったー」という聞き手の満足度も高く、心に残る1冊になるのでは。
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「おれのほねをかえせ!」
聞こえてくる戸棚の、人面相的な飾りにも遊び心を感じます。子どもは嬉々として、あるいはぎょっとして、「かおがあるー」と、教えてくれることでしょう。
余談ですが、この絵本、最初に読み聞かせたのは長女が三歳くらいのときで、二女はまだしゃべりはじめの赤ちゃんの頃。長女がこわいこわいとうったえるわりに毎晩の読み聞かせリクエストにしっかり入っていたこの絵本を、聞くとはなしにそばで聞いていた二女が、ある日突然、言いました。 「ほォねえ、かぇしェ!」 …記念すべき、二女の初二語文、です(笑)。
原書は『The Teeny-Tiny Woman』Clarion Books,an imprint of Houghtoh Mifflin Company,New York,コピーライトは1984年、とあります。 ポール・ガルドンさんが惜しくもお亡くなりになられたのが1986年だそうですので、この作品は、かなり晩年に出版なされたもの…のようですね。
全体的に漂う、不穏で不気味なムードの中にも、さりげない草花の透明感あふれるみずみずしさや、遊び心あふれる楽しい構成は、熟練の腕を感じます。
アマゾン洋書はこちら。
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『The Teeny-Tiny Woman』 Houghton Mifflin (Juv) |
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『まほうのなべ』 ポール・ガルドン え 晴海耕平 やく 童話館出版 1998年 |
むかし、気立てのいい女の子が、村はずれでおかあさんと暮らしていました。びんぼうだったので森へ食べ物を探しに出かけますが、この日はいちご一個、くるみ一個見つかりません。 女の子が泣き出すと、どこからともなく見たこともないおばあさんがあらわれて、親切になべをくれました。 呪文を唱えると、終わりの呪文を唱えるまで、ぐつぐつとオートミールが煮え立ち続けるまほうのなべです。
喜んだ女の子はさっそく家に帰って、おかあさんと美味しいオートミールをおなかいっぱい食べたのでした。
ある日、女の子が反対側の村はずれにある友達の家に遊びに行っている間に、お腹のすいたおかあさんが、まほうのなべをこっそり使ってしまいました。 最初は美味しくいただいていたのですが、満腹になっても、ふつふつぐつぐつオートミールを煮え続け、あふれかえすなべに、驚いたお母さんは、思いつくかぎりの呪文をとなえますが・・・。
森の木立の力強さ、夕日の茜色と、挿し色の澄んだ水色が美しく、ダイナミックな線画にとけこんでいます。 お母さんの切実な呪文間違いの繰り返しや、オートミールが通りをうめつくす奇想天外な場面を思い描くのも楽しく、白熱の読み聞かせになりそうな、リズミカルな1冊。
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原書は『THE MAGIC PORRIDGE POT』ClarionBooks,an imprint of Houghton Mifflin Company 1976、とあります。
同じ童話館出版さんの『三びきのこぶた』『おとなしい めんどり』とほぼ同じ大きさの、ちょっとこぷりな愛らしいサイズが、やがて子どもが一人読みに挑戦するとき、ぴったりになるのかな。…などと思いつつ、この本を開いて、ああこのおかゆのお話、昔読んだことある!と、なつかしさにしばしひたりました。 思い出の楽しい絵本をもう一度、ポール・ガルドンさんの、まさしく魔法のおなべのような魅力あふれる絵本で堪能できる、なんて贅沢ですよね。
3姉妹長女のお気に入りで、何度も微妙に魔法の呪文を間違えておろおろするおかあさんを、叱咤激励しながら魅入っています。最近記憶力低下をとみに感じるようになったハハは、この絵本を読み聞かせるたび、「大事なことはちゃんとメモにとっておこう」と、固く決意するのですが…閉じると忘れてしまうのですから、この絵本のおかあさんのおっちょこちょいには、なんだか身をつまされる思い(笑)。 ぐつぐつ、と、おなべのにえたつ音が聞こえてきそうで、いちどオートミールなるものをぜひ食べてみたくなること間違いなし、の絵本かも。
アマゾン洋書はこちら。
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『The Magic Porridge Pot』 Houghton Mifflin (Juv) |
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『あひるのさんぽ』 ロン・ロイ作 ポール・ガルドン絵 谷川俊太郎訳 童話館出版 品切れ
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可愛い三羽のあひるのよちよちお散歩。遅れをとっちゃった三羽目は待ってー。 いえいえ、待ちうけているのは危ないことばかり。三羽ゆくゆく、つゆ知らず、危機の到来も知らねば、去就も知らず。自分たちの間の悪さも分の悪さも、それをはねかえしてあまりある運のよさも知らず、のどかにひねもすこともなし。
大胆で無敵な三羽のあひるの、どきどきはらはら手に汗握る、のどかなのどかなお散歩の物語。 目で見るイラストと、耳で聞くテキストの、行間や、時間差の妙も存分にお楽しみください。
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瑞木書房81年刊の再刊、だそうです。しかしどうやら、アマゾン、bk1などではすでに品切れのよう・・・。
可愛い三羽のあひるのよちよちお散歩のお話です。 あひるのこが羽をひろげてよたよたと、たどたどしい足取りで並んで歩いているのを見るだけで、なんだか危なっかしくてはらはらやきもきしてしまうのですが、その危機感が見事にことごとく的中してくれるので、愉快痛快、大丈夫かい、です(笑)。 ところが当のあひるのこときたら、危機感も動物の野生の勘も何もなく、とんと気づいていない様子。危ない! 三羽目のちょっと遅れをとって慌て気味ののあひるの、待って待ってー、そんなに急いでどこいくの、というつぶやきがきこえてきそうな感じだけれど、これがさらに、自分たちにこれから襲い掛からんとする危機への無頓着さを際立てていて、笑えます。
あるはれたのどかな日、おかあさんの巣からぶらりとさんぽに出た、三羽のあひるを待ち構えていたのは、縄張りに勝手に侵入されてかんかんにおこっている雄牛! ・・・に、気づかないまま、さくの下のばったを夢中でつかまえるあひるの子。(三羽目は既に出遅れて慌ててます) ・・・に、突進しようとして、あわや! ・・・さくにぶつかった哀れな雄牛。 で、万事何事もなく、何も知らない愉快なあひるの散歩は、好奇心と偶然の幸運に守られて、はらはらどきどき、楽しく面白く続くのです。
待て待てー、と言いそうになるのは、つぎつぎと遅れをとってしまうごゆっくりさんのあひるだけではなくて、三羽のあひるをつぎつぎとねらう雄牛やきつねなど、おいかける敵の心のうち、というか悲鳴でもあるし(笑)、くりかえすあひるの危機に手に汗握る子どものつぶやきでもあるわけです。
そして、ポール・ガルドンさんの描く自然のなんとのどかで美しいこと。遠近を活かして配置された、すっくとのびやかに天へと咲く野の花が、ページを美しく縁取ります。
原書は『THREE DUCKS WENT WANDERING』、1979年とあります。
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『THREE DUCKS WENT WANDERING』 Houghton Mifflin (Jp) |
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この危機と平和が交互に組まれた、にわとりののどかなおさんぽの絵本はこちら。
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『ロージーのおさんぽ』 パット・ハッチンス作 わたなべしげお訳 偕成社
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ロージーはお散歩です。誰が何と言おうとお散歩です。誰が何をしようと狙おうと企もうと画しようと、問答無用のお散歩です。逃げもかくれもしないし、誰の情けも手助けも借りませんが、スキだらけに見えてロージーをスキになったとしても、お近づきになると誰も情け容赦されませんので道中重々お気をつけて。 周囲のはらはらとどきどきを手玉に取ってくれる楽しい絵本。耳から読む物語と、目から読む物語が、絶妙に一つに合わさる楽しさを、幼い子もきっと発見できるはず。
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危機と幸運の交互に忙しく見舞われる、スーパーボーイのスケールのでっかい絵本はこちら。
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『よかったね ネッドくん』 レミー・チャーリップ作 やぎたよしこ訳 偕成社
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英文表記。 幸運のカラーのページ、危機の白黒のページが効果的に交互にあらわれる、愉快痛快豪快絵本です。
つぎつぎとふりかかる無理難題を難なくこなすネッドくん、しかも飛行機を気安く貸してくれる友達がいたり、トラよりも速く走る能力を隠し持っていたりなどなど、そのずば抜けて秀でたご様子、もしやどこぞのやんごとなき王子様だったりして(笑)??
3姉妹読み聞かせ大好評、何度読んでも笑えます。
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