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『やぎの ブッキラボー 3きょうだい』 ポール・ガルドン作 青山南訳 小峰書店 2005年 |
むかしむかし、3びきともブッキラボーという名前の、大、中、小のやぎがいました。 谷にかかる橋をわたって、デイジーの花でいっぱいのあおあおとした丘の上に行き、草をたっぷり食べて太りたいのですが、谷の橋の下には、いじのわるいみにくいトロルが潜んでいます。
まず先頭を切って、いちばん小さいブッキラボーがつりばしをギイギイ渡り始めると、さっそくトロルがわめきたてます。 「だれだ、おれのはしをギィギィいわせてるのは?」 「ぼくです、いちばんちいさいやぎのブッキラボーです。あとからもっと大きいブッキラボーがやってきますよ」
もっと大きいやぎのほうに欲深な関心を示したトロルのもとに、続いて中くらいのブッキラボーが、つりばしをギーイギーイきしませてやってきます・・・。
ポール・ガルドンさんの描く、迫力満点のこわもてトロルと、座った目の光るブッキラボー3きょうだいの対決が、愉快痛快、これでもかい、というくらいつきぬけた傑作絵本。
のびのびと大らかで禍々しい雰囲気は、昔話の底力とポール・ガルドンさんの底知れぬ画力によるものですよね。
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ノルウェーのむかしぱなし、だそうです。 原書は『THE THREE BILLY GOATS GRUFF』初版は1973年のようです
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『Three Billy Goats Gruff』 Houghton Mifflin (Juv) |
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この北欧の昔話を描いた他の絵本には、マーシャ・ブラウンさんのイラストで有名な、 『さんびきやぎのがらがらどん』(福音館書店)などがあって、3姉妹も大好き。
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『三びきやぎの がらがらどん』 アスビョルンセンとモーの北欧民話 マーシャ・ブラウン せたていじやく 福音館書店 1965年
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マーシャ・ブラウンさんの力強く大胆な絵、朱、青、黄色の厳選された深みのある色、ひきしまった構図。 目でもリズミカルに楽しく、耳でも簡潔で響くような名訳で心地よく、小、中、大のやぎと、階段をずんずんのぼりつめるように、高まっていく期待感がたまりません。
「チョキン、パチン、ストン。 はなしはおしまい。」 で絵本のとりこ、「もう一回読んでコール」が鳴り止まないこと間違いなし! 読み聞かせ絵本の決定版。
原書は『THE THREE BILLY GOATS GRUFF』,Harcourt,Brace and World Inc.,New York,1957。
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そして、ポール・ガルドンさんの 『やぎのブッキラボー3きょうだい』(小峰書店)は、いかに、といえば、こちらも読み聞かせ熱烈大歓迎、3姉妹とりわけ三女(2歳半)の大のお気に入りとなりました。嬉しい!
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ポール・ガルドンさんの昔話絵本で、ならんでずらずらどやどやと登場し、ずんずんどんどん大きくなっていく迫力の構図の印象的な絵本に、『まちのねずみといなかのねずみ』(童話館出版)の、町のお城の宴の後片付けの召使の場面があります。(詳細はこちら)
田舎でおっとりのんびり暮らしていた田舎のねずみが、町のねずみにさそわれるままにはるばるお城の豪華な宴会跡にお邪魔して、ごちそうの残り物にありついたのもつかのま、おそろしいねこがきて、いぬがきて、さらにトドメに、しゃちほこばった仏頂面のクラシカルなお召物の召使たちがどやどやずんずんやってきて、それを田舎のねずみが震えながら椅子の下から見上げる緊張と驚愕の場面なのですが、田舎のねずみのドギモを抜かれる気持がひしひしと伝わってきて、読み手までどっきーんとして、そして笑えてしまうユーモラスな場面です。
このずらずらっと居並ぶダイナミックなイラストが、個人的にとてもお気に入りなので、『やぎのブッキラボー3きょうだい』は、表紙からして、もう開く前からわくわくどきどき!
物語は、むかしむかし、3匹ともブッキラボーという名の、やぎの3兄弟がおりました。 谷にかかる橋をわたって、デイジーの花でいっぱいのあおあおとした丘の上に行き、草をたっぷり食べて太りたいのですが、谷の橋の下には、いじのわるいみにくいトロルが潜んでいます。 まず、いちばんはじめに、いちばんしたの弟のブッキラボーが、ギイ、ギイ、と橋をきしませながら、果敢に谷をわたりはじめました。
「だれだ、おれのはしをギィギィいわせてるのは?」 さっそくトロルがとがめたてます。 「ぼくです、いちばんちっちゃなやぎのブッキラボーです」 と、やぎはちっちゃな声。トロルはすぐさま喰らいつかんばかりの勢いなのですが、命乞いされた上に、 「もうちょっとしたら、2ぱんめのやぎのブッキラボーがきます。あっちのほうが、ずっとおっきいですよ」 と、入れ知恵されると、 「じゃあさっさといけ」 と、道をあけてやります。
続いてキーイ、ギーイ!、とやってきたのは・・・。
とんとん拍子にことは運んで、だんだんに期待も高まる中、ポール・ガルドンさんのいきいきとした線画の迫力も不気味に大胆にいよいよ増して、 じゃーん! と、という感じのクライマックスです。
鋭い眼光のブッキラボー3兄弟のダイナミックな登場も痛快ですが、長い髪をふりみだし、水色のわし鼻を空に突き上げるように、大口をぽかっとあけて叫ぶ恐ろしいトロルは、迫力満点。
子どもの絵本だからといって、手加減したところも、ごまかしたところも、媚びたところもまったくない、まっすぐなおどろおどろしさの魅力の絵本です。 微妙に焦点の定まらない(?)トロルの小さな瞳が、不穏な空気とともに独特のユーモアを漂わせていて、憎めない感じもしますが(笑)、やはりこれぞトロル、日本のやまんばのような、大らかで禍々しい雰囲気は、昔話の底力とポール・ガルドンさんの底知れぬ画力によるものですよね。 3姉妹の、特に小さい三女にはチトこわいかなあ、などと思ったりもしたのですが、 「おもしろい」 と、少ない語彙で目を輝かせ、最後まで絵本に釘付けでした。
やぎ、トロル、谷の岩肌、と、画面の大半が、赤茶けた地味な色で構成されているのですが、その茶色の中にも、明るい黄色、ピンク、水色などの挿し色がやわらかく重ねられていて、シャボン玉の表面のような虹色の光を感じます。 とりわけトロルの逆立つ長い髪の毛に激しく重ねられているピンクや水色は、トロルのヒステリックな感じを際立たせているよう。 水色の鼻といい、黄色いすきっ歯といい、節くれだった手足の指やぎざぎざの爪といい、これぞトロル、どうだ!という感じで、圧されます。
ポール・ガルドンさんの描く昔話の、まっすぐ響く、胸のすくような痛快な描写が、親子ともども大好きなのですが、また1冊、新しいお気に入りが増えました。 よろしければ、親子でお読みになってくださいね。
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『おとなしいめんどり』 ポール・ガルドン作 谷川俊太郎 訳 童話館出版 1994年
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いつもおとなしくたった一人で働く赤いめんどりが、ある日畑で小麦のつぶを見つけて、一人でまいて一人で育てて一人で穫り入れて一人で挽いて一人で料理して・・・。 という、まさしく身を粉にするかいがいしいお話。
同居のぐうたら動物たちにも、手伝って欲しいめんどりですが、のんべんだらりの動物たちの一匹一匹の答えは 「いやだ」。
軽快で痛快なイラストと、繰り返しの楽しい響きのよいテキストが、一つになった遊び心ある「いやだ」の場面は、3姉妹も大好きです。
さあ、「いやだ」ばかりの動物をよそに、美味しそうなお菓子が焼きあがりました。 かぐわしい匂いにつられて、ふらふら台所にさまよいでてくる、動物たちのねとぼけた表情が絶品、とことこちょろちょろと訳文の擬態語の醍醐味も味わってまさに満腹抱腹絶倒。
ユーモアとスパイスたっぷり、表情豊かで表現巧みな、いつまでもできたてのこうばしい絵本をぜひどうぞ。
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原書は『The Little Red Hen』Houghton Mifflin Company 1973、とあります。 アマゾン洋書はこちら。
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『The Little Red Hen』 Houghton Mifflin (Juv)
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「はたらかざるものくうべからず」の絵本版ともいうべき物語。
めんどりを手助けするべき、ずうずうしいタダメシグライの同居人(というか、動物)たちの情け容赦ない協力拒絶の一言、
「いやだね」 「いやだよ」 「いやだな」の遊び心ある羅列が、目にも楽しい面白さ。 ねずみもいぬもねこも、自分が何か汗水たらして手伝うなんてまっぴらごめん。 手伝ってもいいものは、よだれをたらして出来上がったおかしをたいらげることだけ。
さあ、もくもくと文句も言わず働くおとなしい赤いめんどりは、この身勝手な動物たちの言うなりのまま、手塩にかけて育てた小麦の一番美味しいところまでもまんまと没収される憂き目に甘んじるのでしょうか・・・。
自らも農耕生活を楽しみ、自然をこよなく愛する画家、ポール・ガルドンさんの描くイラストは、いきいきとした表情豊かな線画と、繊細な彩色、大胆で遊び心あふれる構図で、すみずみまで絵本を見る楽しみと喜びが施されている感じです。
「いやだね」 と、一言ではねのけ、それ以上何か付け加えることさえ物憂そうな、同居の動物たちのぐーたらな表情の繰り返しが、どこか憎めない感じさえして、笑えます。
谷川俊太郎さんの名訳で読み進むと、あらまあ、ひとことも「はたらきもの」や「なまけもの」などの言葉はないのに、これほどそれぞれの動物達の性格を、聞いて楽しく眼でも楽しく、わかりやすく描けるなんて! めんどりはこのとぼけた非協力にもおとなしく甘んじて、だまって何もかも一人で遂行し、オーブンでお菓子を焼き上げるのですが、その香ばしいニオイの美味しそうな描写ときたら! 思わず、3姉妹と一緒に鼻をうごめかしてしまいそうです(笑)。
無駄のないテキストと、絵が口ほどにものをいい、ダイレクトに子供達の心に届きます。 この絵本が伝えたい、シンプルな教訓がまっすぐに届いて、幼い子どもも納得の結末に、「ああ面白い本を読んだ」というすっきりとした充実感を味わえることでしょう。 よろしければぜひ図書館などでお読みになってくださいね。
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「いやだ」とどんどん逃げ出した美味しいやんちゃなしょうがパンぼうやのお話。
『おだんごぱん』(福音館書店) にもよく似たモチーフで、スピード感あふれるわくわくの展開と、楽しい繰り返しのリズムの果てに、「あーっ・・・」という驚きとためいきと納得の絶妙のラストが愉快痛快なお話です。(『おだんごぱん』の詳細はこちら)
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『しょうがパンぼうや』 ポール・ガルドンさく ただひろみやく ほるぷ出版 1976年発行
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むかし、おじいさんとおばあさんがふたりきりで暮らしていました。あるとき思いつきで、おばあさんがこしらえた、顔つきのしょうがパンぼうやが、あろうことか天火からすたこら逃げ出しました!
「つかまったりするもんか! ぼくはパンぼうや、パンぼうやさまだい!」
おじいさんとおばあさんが追いかけますが、うたいながら逃げていってしまいます。 続いて出会ったうしが、パンぼうやを食べようと追いかけますが、 「にげちゃうんだよ、きみからも!」
さらに次々と追いかけてくる、うまやお百姓さんたちを難なく逃れて、パンぼうやが出くわしたのはきつね。きつねはすましていいました。 「それはそれは。かんがえてもりませんよ。きみをつかまえようだなんて」 そして、おりしも、広い川岸に出たパンぼうやときつねは・・・。
子どものいないおばあさんが、大切に干しブドウなどで目をつけ鼻をつけ口をつけ、手足もつけたしょうがパンぼうやが、いきなり命を授かるも、パンの運命、食べられるのがいやで、逃げ出すところが奇想天外、つかまるものかとつぎつぎと逃げぬくところが抱腹絶倒、ずるがしこいきつねとの口車対決が愉快痛快、子どもたちをとりこにするスリルいっぱいの絵本です!
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原書は『THE GINGERBREAD BOY』The Seabury Press,New York,1975、とあります。 アマゾン洋書はこちら。
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『THE GINGERBREAD BOY』 Clarion Books |
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『おだんごぱん』 ロシア民話 せたていじ ぶん わきたかず え 福音館書店
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こちらはロシア民話、ほかほかのおだんごパンです。顔だけなので、転がって逃げ出します。
こちらのちょっぴり情けない(?)顔のまあるいおだんごぱんも好きです。淡い色彩、淡い輪郭、おぼろな表情のこの表紙、なぜこんなに美味しそうなのでしょう。
物語の、人がいいのに気の毒なおじいさん、おばあさんを思わせるような、わびさびを感じる素朴な挿絵と、おだんごぱんが得意げに歌う、即興の節をつけやすい絶妙の歌のテキストがあいまって、かなり私の中で、読めば読むほど強烈な印象を増す絵本です。 3姉妹もやっぱり大好き!
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『めんどりペニー』 ポール・ガルドン作 谷川俊太郎訳 童話館出版 1995年 |
日差しうららかのどかなある日、おちばをひっかいていためんどりペニーのあたまに、どんぐりが一個、落っこちた。
下しか見ていなかった世間知らずのめんどりペニーが驚いて叫ぶには、 「そらがおっこってくる!」
さあ大変、急いで王さまに知らせなきゃ。わきめもふらず、気のいいめんどりが野を走れば、見ていたおんどりロッキーにかものラッキー、がちょうのルーシーにしちめんちょうのターキー、とりたちがみんなわれもわれもと首突っ込んで、めんどりとともに駆けていく!
そこでおもむろに、満を持してきつねの登場です。烏合の衆をいぶかしみ、内心ほくそえんだきつねは、親切丁寧懇切手ずから、おしろへの近道を教えます・・・。
無邪気に咲き乱れる野の花の美しい舞台で、きつねととりたちと読み手のそれぞれの思いが交錯する中、とんとん拍子にことは進み・・・そして訪れるいきなりの暗転!
あえて大人のブラックホール絵本と呼びたい、抱腹絶倒、ユーモアとスパイスたっぷり、花火のように潔く美しく見事な面白さのぎゅっとつまった、愉快痛快な昔話絵本。
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わくわくの心憎い繰り返しとてきぱきとした小気味いい展開で、谷川俊太郎さんの名訳も手伝って、まさに眼福・耳福、満腹・至福間違いなし、の1冊です。
めんどり(Hen)ペニー、 おんどり(Cock)ロッキー、 かもの(Duck)ラッキー、 がちょうの(Goose)ルーシー、 しちめんちょうの(Turkey)ラーキー、
そして、きつね(Fox)のロキシー。
原文を読んだことはありませんが、見事に韻を踏んでいると思われます。さぞかし耳に心地よくて、子供たちが大喜びしたことでしょうね。 少し結末にひねりが効いているので、ある程度昔話を聞きなれた、およそ4歳くらいから、とりわけおすすめ。 緑豊かな自然の描写がきわだって美しい一冊。
原書は『Henny Penny』Houghton Mifflin Company,1968、とあります。アマゾン洋書はちら。
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『Henny Penny』 Houghton Mifflin (Juv) |
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『あかずきんちゃん』 ポール・ガルドンさく ゆあさふみえ やく ほるぷ出版 1976年
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むかし、とてもおばあさんに可愛がられている可愛い女の子がいました。おばあさんから贈られた赤いずきんのついたコートがとても気に入っていつも着ていて、とてもよく似合っていたので、「あかずきんちゃん」と呼ばれていました。
ある日おばあさんは病気になり、おかあさんのいいつけで、あかずきんちゃんはお菓子とぶどう酒を持って、森の中のおばあさんの家にお見舞いに出かけます。 「けっしてみちくさをしないようにね」 とおかあさんに言われたのに、わるいおおかみにそそのかされ、森に咲き乱れる花に心を奪われたあかずきんちゃんは、ついつい花摘みに夢中になってしまって・・・。
ポール・ガルドンさんのなみいる昔話絵本の中でも、完成度が高く、人気も高い1冊だと思います。
生き生きと躍動感あふれる線画に、淡い水色を効かせた澄んだ明るい色彩をほどこし、登場人物に豊かな動きと表情を与えた、みずみずしいイラストが、たっぷりと堪能できる格別の絵本。
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グリム童話の「あかずきん」を描いた作品は数多くあれど、3姉妹とハハのぴかぴかお気に入りはこの一冊。大胆で繊細で軽やかでみずみずしくて、適度な緊迫感と躍動感があって、子供だましでない、完全版のお話がきちんと楽しめる、おすすめの絵本。
愛らしく現代的な香りのただようあかずきんちゃんは、ページにより子悪魔的に、あるいは少し子どもじみているくらいあどけなく、あるいは強い意志をたたえて描かれていて、物語の持つさまざまな含みを描き出しているようです。
原書は『LITTLE REDDING FOOD』Mcgaraw-Hill Book Company,New York,1974、とあります。 ・・・が、アマゾン洋書で検索したところ、ほとんど在庫切れ。ポールガルドンさんの他のなみいる洋書 は数多く再販・新版でラインナップ豊富なのに、何でこの名作が?? ともあれ、日本では愛され続けるロングセラーです。よかった!
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『三びきのこぶた』 イギリスの昔話 ポール・ガルドン え 晴海耕平 やく 童話館出版 1994年
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むかし、びんぼうな家の三匹のこぶたが、自活するために広い世の中に出て、自分の家をたてました。いちばんめのこぶたは、わらの家、にばんめは木のいえ、さんばんめはレンガの家です。
まもなく一ばめんのこぶたの家に、わるいおおかみがやってきて、 「なかにいれておくれ」と、猫なで声。もちろん滅相もないとお断りしたものの、 「それならいいさ。フウフウフウとふいて、おまえのいえをふきたおしてやる」 と、わらの家を吹き飛ばし、あわれなこぶたを食べてしまいました。
まもなくニばんめのこぶたの家に、同じおおかみがやってきて・・・。
真四角に近い小ぶりな絵本の、レモンイエローの表紙もさわやかな、可憐な絵本をひとたび開けると、原作に忠実な本格的な物語が力強く広がります。 三ばんめのこぶたとおおかみの知恵比べ、だましっこが楽しい、かぶやりんごやバターだるの場面も鮮やか。
3姉妹ともどもお気に入り、『三びきのこぶた』愛蔵決定版の1冊です。
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原書は『THE THREE LITTLE PIGS』Houghton Mifflin Company,1970、とあります。
みんな大好きちょっとこわーい昔話を、みずみずしい透明感のある色彩と、力強くかつ軽やかな線画で、明瞭に克明に描きます。 原作どおりの手加減なしの本格的作品なので、忘れていたバターだるの場面などが頼もしくよみがえります。三びきめのこぶたの鮮やかな機転と手際のよさはお見事で、ついに堪忍袋の尾を切らすおおかみの気持もきわだち、クライマックスの大なべぐらぐらのこぶたの知恵の場面へ、よりいっそうなめらかにつながっていく感じです。
薄い淡いレモン・イエローの地にペパーミント・グリーンのクローバーの模様の表紙、そして見返し一面のクローバーが、さわやかですがすがしくて好みです。 ポール・ガルドンさんの昔話絵本シリーズは、表紙から中表紙、本文最初のページへと、さりげなくつながっていく装丁も美しく、本文最初の一文字まで(邦訳では、「むかし」と。「む」の字が大きく配置されていることが多い箇所です)続く一定のパターンを踏んでいるものが多いので、こちらも注目してみてくださいね。
アマゾン洋書ではこちら。
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『THE THREE LITTLE PIGS』 Houghton Mifflin (Juv)
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『3びきのくま』 ポール・ガルドンえ ただひろみ やく ほるぷ出版 1975年
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むかし、森の中に3匹のくまが仲良く暮らしていました。 1ぴきはちいさなこぐま、1ぴきはちゅうくらいのくま、1ぴきはでっかいおおぐまです。
ある日、朝ごはんにおかゆを作ったのですが、熱くてとても食べられません。そこで、おかがさめるまで3匹のくまは散歩に出かけることにしました。
そこへのこのこ勝手にやってきたのは、キャンディ、という名の金髪巻き毛の女の子。 軽やかな線と色彩で現代風に描かれた少女の笑顔は、ひと目で焼きつく、鬼気迫る迫力。
住居不法侵入、無銭飲食、器物損壊、不法占拠と、勝手放題のキャンディが、やがてたどる運命は・・・。
キャンディの表情やしぐさ、くまたちのくるくると丸いしっかりした瞳が、リズミカルなテキストとテキストとともに、生き生きと語りかけてくるようです。 「3びきのくま」の愛蔵決定版の1冊。
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1ぴきのちいさなこぐまと、1ぴきのちゅうくらいのくまと、1ぴきのでっかいおおぐま。 もうその繰り返しのリズムの心地よさだけで、すんなり絵本のとりこです。
初めて読み聞かせしたとき、「コレ、子どもの時に読んだ!」と、懐かしい記憶がよみがえり、個人的にも格別の思い入れのある一冊。
ポール・ガルドンさんの傑作中の傑作の一冊だと思うのですが、のびやかな色使いの、澄んだ色彩のやわらかい重ね方がますます冴えわたり、力強い線画と大胆な構図は迫力満点。 中でも特筆すべきは、一度見たら長く忘れられない、女の子「キャンディ」の登場場面の、あの笑顔。こちらまでつられて…抱腹絶倒です。
さまざまな作家が「3びきのくま」をお描きになっていらっしゃいますが、この絵本はひとまずさておき、必ずや親子で目を通しておきたい、ぴかぴかの定番の永遠の一冊。
原書は『THE THREE BEARS』The Seabury Press,Inc.,New York,1972、とあります。
アマゾン洋書ではこちら。
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『THE THREE BEARS』 Houghton Mifflin (Juv) |
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