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『おおきくなるの』 ほりうちせいいち さくとえ 福音館書店 1964年 こどものとも発行 品切れ
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おおきくなりたい幼子の、心弾む可憐な一歩のお話。
ちいさいときのくつした は もうはけないけれど、 おねえさんの ぼうし は まだぶかぶかの、 みっつになった女の子。 もう赤ちゃんではないけれど、 まだおねえさんでもない、 みっつの「わたし」。
「わたし」のつぶやきが、なんて可愛い、なんて愛らしい、もうたまらなく可憐でいとおしくて、抱きしめたくなっちゃうくらいです。
1ページ、1ページ、ハッとするくらい大胆で鮮やかな配色とデザインで、目も身も心も奪われます。 ひとことひとこと、小さな詩人のような「わたし」のつぶやきの心地よさに、耳も胸もときめきます。
幼い子どもが良く知っているもの、親しんでいるもの、大好きなもの、あこがれるものが、絵本の箱をあけるとすべてぎゅっとつまっている感じ、まさにわくわくする宝箱のような一冊です。
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なんと、1964年の作品なのですね! 信じられないくらい、モダンで垢抜けていてお洒落です。抜群のデザイン、斬新なテイスト、とびきりのテキスト。
しかも、読めば読むほどその完成度の高さに脱帽してしまうのは、センスあふれるイラストとテキストが共鳴して、よりいっそう美しいハーモニーを奏でているページ。 ・・・だけではなくて、ふいにおとずれる、静かに迫ってくるような鮮やかな言葉のないページに、言葉以上のものがきちんと・あるいはこっそりと描かれているところ、です。 その美しい残像を追いかけるように、ぴったりの言葉のテキストが、ストーリーを見事に受け止めて、また新しくつむぎだしてゆく・・・読み手は、わくわくしながら、この楽しいからくりに身を任せ、つぎつぎとページをめくることが出来るのです。
この絵本の読者にぴったりの、まだ文字の読めない幼い子どもたちは、その分イラストを全身でつぶさに眺めいりますので、シンプルで力強く、美しいイラストの、どんな些細な点も見逃さないことでしょう。
・・・とはいえ、おばあさんの誕生日ケーキの、ろうそくを喜んで全部数えた3姉妹も ( さすが1964年の作品のためか、以外にこのおばあさんはお若い?かも・笑 )、ハハも最初見落としてしまったのですが、この絵本のひとつの注目のポイントは、ぼうし、だと思います。 ぶかぶかのおねえさんのぼうしをかぶってみた女の子。「わたし」はそのぼうしがすっかり気に入ったようで、どのページでもどの服装でもちょこんとかぶっているのですが、そのさりげない服装がそうであるように、ぼうしもまた「わたし」を象徴しています。 その「わたし」のぼうし以外にも、思わずかぶりたくなるようなお洒落でチャーミングなぼうしたちが鮮やかに象徴的に描かれていますので、ちょっぴり着目して、お読みになってみてくださいね。 きっと、堀内誠一さんの並々ならぬ才能に、脱帽してしまうのでは・・・。すごいです。
少し前の限定復刊シリーズ10冊の一冊でした。現在は品切れのところもあるようです。お探しの方はお早めに! (以下に順不同に備忘録として並べてみました。主としてアマゾン、ビーケーワンにリンクしていますので、在庫状態をチェックしてくださいね。アンデルセン生誕200年を記念した限定復刊『おやゆびちーちゃん』ものせています。すごいラインナップですね・・・)
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堀内誠一復刊絵本10冊セット 福音館書店、品切れ (↑上記画像をクリックすると、セブンアンドワイ書店で詳細がごらんいただけます) アマゾンなどのネット書店でも、品切れのところが出始めているようです。ビーケーワンでは、まだ入手可能のものもあるようです。お探しの方はお早めに!
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『いかだはぴしゃぴしゃ』 岸田衿子さく 堀内誠一え
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『どうぶつしんぶん』 岸田衿子ほか ぶん 堀内誠一え
春・夏・秋・冬の4枚の新聞が折りたたまれて入っています。広げたら大人の新聞みたいに大きくて、大人の新聞よりおしゃれ!?すみからすみまで楽しく目を通したら、きちんとたたんでしまいましょうね。
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『ふくろにいれられたおとこのこ』 フランス民話 山口智子再話 堀内誠一画
おとこのこの名前は、ピトシャン・ピトショ。ジャックと豆の木を思い出す楽しいテキストは、どきどきはらはら、オニにふくろにいれられた絶対絶命ピトシャン・ピトショ、どうなるどうなる?
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『でてきておひさま』 スロバキア民話 ほりうちみちこさいわ ほりうちせいいちえ
ざわざわと胸騒ぎのするような、紫の色使いが印象的。力強い民話の世界を、美しいイラストで。 くわしくはこちら▼
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『きこりとおおかみ』 フランス民話 山口智子再話 堀内誠一絵
きこりとおおかみの知恵比べ、こんくらべ。おおかみだって今度こそ頑張るけれど・・・。食べ物の恨みはコワイ。記憶はもっとコワイ? |
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『てがみのえほん』 堀内誠一さく え
これは豪華! 堀内誠一さん描く、子どもの絵本のベスト版。さまざまなタッチを自在に操る美しいイラストに、釘付け。ちゃめっけに、首ったけ。
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『おおきくなるの』 堀内誠一さく え 品切れ
ことばがえをおいかけ、えがことばをつむぎ、ことばがえをみちびき、えがことばをいざなう・・・。えとことばの水玉もようのような絵本。例え子どもがおおきくなって読んでも、決して色あせることはない作品。 くわしくはこちら▲
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『ひでちゃんのにっき』 永瀬 清子作 堀内誠一絵
さわやかなことば。 さわやかな絵。 はじめての逆上がりで見上げた青空、抱えたスカートからこぼれたみかん・・・なつかしい風がよみがえります。
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『てつたくんのじどうしゃ』 わたなべしげおさく ほりうちせいいちえ
とびきりのテキストに耳もうきうき、とびきりのイラストに目もにこにこ、こころはずんで、ちょっとくらいころんでも平気、なんどでも楽しいドライブに連れて行ってくれる絵本!
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『たろうのばけつ』 村山桂子さく 堀内誠一え
カラーペンを駆使したような、ながれる線、はずむ色、きわだつ形、どのページも、飾っておきたくなるイラスト!にわとりのこっこ、あひるのがあこ、いぬのちろ、ねこのみーや、おなじみのメンバーの、にぎやかに繰り返すテキストもおちゃめ。
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たろうシリーズには、DVDもあるのですね。アミューズソフトエンタテインメントから。
DVD 『たろうのともだち』 アミューズソフトエンタテインメント
「たろうのともだち」「たろうのひっこし」収録。 谷啓さんの語りで映像化されているのですね。
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DVD 『たろうのおでかけ』 アミューズソフトエンタテインメント
「たろうのおでかけ」「たろうのばけつ」収録。
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こどものともシリーズではありませんが、限定復刊中の児童書はこちら。↓
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『おやゆびちーちゃん』 アンデルセン作 木島始訳 堀内誠一画
華やかで、繊細なタッチのおやゆびひめの物語。 限定復刊。
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『でてきて
おひさま』 スロバキア民話 ほりうちみちこ再話 ほりうちせいいち絵 福音館書店
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昔話の持つ大らかな持ち味を生かした、のびのびとした水彩のイラストが印象的な絵本。くすんでにごった紫色が、太陽の隠れた不穏な世界を象徴しているようです。
おひさまが黒雲におおわれて、世界が闇に包まれて3日目、いさましいひよこたちがおひさまを探すたびに出ました。
おひさまへの道をたずねながら、出会った動物たちを仲間に加えて、みんなでおひさまのもとへいくと・・・。
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堀内誠一さんの限定復刊シリーズの1冊です。 シンプルな表紙の、おおかな手描きのタイトル文字の黄色の輝くばかりの明るさと、中央で気難しくふさぎこんでいる真黒なおひさまの対比が、ハッとするような1冊です。
本文は、こまかい輪郭線をとらず、水彩で自由にぬりわけたような、のびのびとしたイラスト。 本文前半の大地の色として画面の大半に塗り込められている、少しくすんでにごった紫色が、どこか不気味で不吉な感じ。 おひさまのかくれてしまった不安で不穏な雰囲気を、開いたページ全体からかもし出しているようです。
物語は、あるとき、ふいに空を黒雲がおおって、おひさまがかくれてしまって三日目に、いさましいひよこたちが、おひさまを探しに出かけてはじまります。 とはいえ、どこにおひさまが住んでいるのか、まったく知らないひよこたち。 どんどん行くうちに出会った、かたつむりに聞くと、 「知らないねえ、かささぎにきいてごらん」 それではかささぎに聞くと、 「知らないわ、うさぎにきいてみたら?」 それではうさぎに聞くと・・・
結局おひさまの住んでいる場所を知っているはりねずみにたどり着くまで、ひよこたちの問答はリズミカルに続き、かたつむり以外のであった動物たちすべてと、ひよこたちはおひさまのもとへと向かいます。そしてやっとたどり着くと、おひさまは・・・。
動物たちそれぞれに、クライマックスでの重要な役目が与えられていて、物語として、晴れ晴れと美しく完成されている作品だと思います。 ひよこたちのこっこと地面のえさをついばむ姿や、はりねずみのはりのイメージなどが、上手く物語に重なって、さらに迫力ある堀内誠一さんのイラストもあいまって、大きく楽しく、想像力のふくらむ絵本です。 大らかな物語の、リズミカルなテキストが耳に心地よく、いきいきとした動きの、大胆でのびやかなイラストが目にも心地よい、何度も繰り返し読みたくなる絵本。
限定復刊ではなく定番化してほしいところですが、お探しの方はお早めに! ちなみに『おやゆびちーちゃん』(福音館書店)も、2005年アンデルセン生誕200周年を記念して、限定復刊されました。そして気がつけばのら書店さんから『アンデルセンどうわ』も復刊の運びになったそう。めでたいですね!
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そして復刊といえば、少し前にあかね書房さんから、「あかね書房・復刊創作幼年童話」シリーズがめでたく復刊の運びとなっているそうです。 この中に、大好きな『モモちゃんとアカネちゃん』(講談社)シリーズの作者の松谷みよ子さんの作品で、
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『おひさまどうしたの』 松谷みよ子文 西巻茅子絵 あかね書房
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ある日おひさまが病気になり、世界中が暗くて寒くて冬のようになります。 心配した女の子と動物たち(ねこ、ひよこ、めうし)が、おひさまのもとへ訪ねる方法を何とか探し当て、おひさまに会いに行って・・・。
昔話の骨組みに、現代のしゃれっ気を加えた、楽しい読み物。そして少し、環境問題についても考えさせられる、奥の深いお話です。
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という初版1969年の児童書があるのですが、このおはなしの下敷きとなっているのが、チェコの民話だそうです。 ある日おひさまが病気になり、世界中が寒さと闇に包まれて、女の子と動物たちがおひさまに会いに行って・・・というモチーフは、上記のスロバキア民話の『でてきておひさま』と、同じ根っこの民話だと思われます。
しかし、この『おひさまどうしたの』は、さらに、いろいろな昔話やお話に親しんできた少し大きい子が、ひとりで読む楽しさを十分に味わえるように、他の昔話的なエッセンスをしのばせたしゃれっ気あるエピソードがあったり、読み手に身近な主人公の女の子と、ねこやふくろうなどとのやりとりが楽しかったり、とても現代的な楽しい読み物になっています。 そしてただ楽しい読み物であるばかりでなく、何より、まっくろになった病気のおひさまのモチーフに、現代の環境問題が重ね合わされていて、これからも民話を語り継いでゆく現代の大人たち、子どもたちに、大きな宿題を明示してくれているようです。
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さらに、『でてきておひさま』と、よく似たモチーフの絵本には、
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『そらにかえれた おひさま』 ミラ・ギンズバーグ文 ホセ・アルエーゴ 絵 エーリアン・デューイ絵 アリス館 |
根っから明るいイラストで、おひさまを元通り輝かせて空にかえす動物たちの昔話を、とんとんと楽しく描いた絵本。
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という絵本もあって、こちらのユニークでからりと明るいイラストの物語も、とても楽しい絵本です。 ミラ・ギンズバーグさんは、ロシア出身のアメリカでご活躍の方で、ロシアの物語の翻訳・翻案の仕事がたくさんあるそうです。 スロバキア、チェコ、ロシア・・・と、この「でてきておひさま」つながりは、とても壮大なモチーフのようですよね!
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