■ホリー・ケラーさんの絵本 |
Holly Keller 1942年ニューヨーク生まれ。コロンビア大学歴史学修士課程修了。二人の子どもを育てながら創った絵本は30冊以上。邦訳に『いちばんすてきなプレゼント』(ポプラ社)、『ジェラルディンのちょうからおねえちゃん』(国土社)など。小児科医の夫とともにコネチカット州在住。 (『ファルファリーナとマルセル』岩波書店 著者紹介 参照) |
『ファルファリーナとマルセル』*『いちばんすてきなプレゼント』
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ホリー・ケラー作 河野一郎訳 岩波書店 2006年
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『ファルファリーナと マルセル』
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子どものときに出会った二人は、互いのやさしさにひかれあい、大切な友だちになりましたが、大人になって見違える姿になったとき・・・。
鳥と虫の無垢な友情を、落ち着いた色彩の澄んだタッチで描いた、みずみずしい絵本。
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いもむしのファルファリーナと、はい色の鳥のマルセルは、ある雨の日にはっぱで出会って、友達になりました。 ファルファリーナは、マルセルの、やわらかな羽とやさしい目がすきになりました。マルセルは、ファルファリーナのえがおと、きれいなからだの色がすきになりました。 かくれんぼをして遊ぶときには、ファルファリーナはシダの下にかくれました。 マルセルが木にのぼってこられないのがわかっていたからです。 マルセルは木のまうしろにかくれました。ファルファリーナがゆっくりとしかうごけないのを知っていたからです。
そんなある日、ファルファリーナが、木のえだにのぼったまま、おりてこなくなって・・・。
互いにひかれあい、互いを思いやり、互いを大切にするファルファリーナとマルセルのひとときが、抑えた色合いの空と池の青色の中に静かに描かれた絵本。 物語前半の、成長前の、どちらかといえば地味な姿の、互いを好きになる場面が好きです。外見だけでなく、内面からにじみでるものまで、ちゃんととらえているのですね。 姿形、特徴の異なる友だちへの思いやり、心配りも、さりげなくて、奥ゆかしくて、大切な友だちに守られているような、幸せな気持ちに包まれます。
成長とともに、外見の劇的に変化したお互いの姿を見失っても、ひたむきに探し続ける、二人のゆったりとした物語の展開が好きです。 それから、静かにあきらめを受け入れはじめたとき、やってくる展開と、その後の結末までの物語も好き。 いもむしがちょうちょに、灰色の鳥が大人の羽の鳥に、変わっていくモチーフをからめた絵本は、たくさんあるけれど、なじみやすい筋立てを活かしたシンプルさ、ワルツのように穏やかなリズム、それからりんとした美しい結末が印象的。「たつ鳥あとをにごさず」・・・こんなことわざが浮かんでくるくらい、いさぎよくて、透き通ったイメージを感じました。 文字のフォントまで、共鳴しているような、こだわりが感じられて、心地よい余韻にひたれそう。
本物の友だちに出会えた二人の前途に、祝福を祈りたいすがすがしい絵本。
原題は『FARFALLINA AND MARCEL』 、First published 2002 by HarpercollinsChildren'sBooks, an imprint of HarpercollinsPublishers, New York とあります。
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Trophy Pr; Reprint版 (2005/05)
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『Farfallina & Marcel (ペーパーバック)』
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『いちばんすてきな
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ホリー・ケラーさく/え あかぎかんこ あかぎかずまさ やく ポプラ社 2001年
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プレゼント』
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8歳のロージーは、おばあちゃんのお見舞いにいけません。病院は、10歳未満の子どもが入ってはいけない決まりになっているからです。 そこでロージーは、10歳の女の子に見えるように精一杯変装して、お小遣いで買った花を届けようとしますが・・・。
おばあちゃんを思うロージーの、さまざまにゆれる心と行動を描いた、繊細な絵本。ロージーのこと、いちばんわかってあげたくなります。
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ロージーは、まだ8さいだから、おばあちゃんのおみまいへ行けません。 10さいになっていない人は、行ってはいけない規則になっているからです。病院のロビーにも、そのことが大きく書いてはってあります。 けれど、大好きなおばあちゃんのお見舞いに、どうしても行きたいロージーは、ともだちのケイトのうちに行って、鏡をみながら言いました。 「わたし、いくつぐらいになら、見えると思う? 「えっ、どういういみ?」 「あのね、がんばれば、10さいに見えるかなあってことよ」 「そうねえ・・・。三つ編みをほどいて、ぼうしをかぶれば、10さいに見えるかもしれないよ」 そこで、ロージーは、土曜日、ケイトに手伝ってもらって・・・
おばあちゃんのお見舞いに行きたいと願った、けなげで切ない8歳の女の子の物語。 それほど長い入院ではないと聞いているのですが、手術後のおばあちゃんに会って、元気づけてあげたいロージーは、10歳未満おことわりの規則にためらい、迷いながらも、病院へ行く決心をします。 8歳の女の子が、三つ編みをほどいて、精一杯10歳の女の子になろうとする場面が、いじらしくてほほえましくて、なんだか鼻の奥がツンとしちゃいそうな感じです。 子供だましといえばそのとおりかもしれない、うわべの変身に対する自信のなさと、規則を破っているという良心の呵責が、ともすればびくびくした態度に出てしまって・・・勇気をふりしぼっとて歩きはじめた病院の廊下の、長いこと、長いこと。 抑えた色彩のシンプルな絵と、なめらかで淡々としたテキストが、ロージーの抑えきれない気持ち、高ぶる気持ち、せめぎあう心を、かえって際立たせてくれるよう。
ロージーが土壇場でとった行動も、その後のロージーの行き場のない心の揺れ動きを見事に数行で記した場面も、本当に、切ないくらいよくわかって、共感してしまいました。 大胆な行動はとったけれど、繊細な心を持つロージーの、心にしみる結末は、ほのぼのとしたやさしさに包まれていて、じんとします。
子どもを楽しませるユーモアも、大人の心にわけいるデティールも、そこここにちりばめられた切ない絵本。
原題は、『The Best Present』 コピーライトは1989 Holly Keller とあります。HarperCollin's Children's Books, A division OF HarperCollins Publihers, Inc., New York アマゾン洋書では、こちらなど。↓
『The Best Present (ペーパーバック)』 Walker Books Ltd (1990/7/26)
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表紙は、本文中の一場面だと思われます。
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『THE BEST PRESENT (単行本)』
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新世研 (2003/08) 品切れ
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かつて、新世研からも、英語版が出版されていたのですね。
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