■林明子さんの絵本
『ぼくはあるいたまっすぐまっすぐ』*『こんとあき』*『いってらっしゃーい いってきまーす』*『おつきさまこんばんは』*『もりのかくれんぼう』*『いもうとのにゅういん』

 
『ぼくはあるいた まっすぐまっすぐ』ペンギン社



オンライン書店ビーケーワン:ぼくはあるいたまっすぐまっすぐ

『ぼくはあるいた
まっすぐまっすぐ』
マーガレット・ワイズ・ブラウン
坪井郁美 ぶん
林明子 え
ペンギン社
1987年初版

「はい、もしもし
あ、おばあちゃん?
いまからいくね」

そしてぼくはでかけます。
たったひとりで、何も持たず。
道はまっすぐ、おばあちゃんに聞いたとおり。
どこまでもまっすぐ、まっすぐ。

林明子さんの描く、牧歌的で美しい田舎道を、少し朴訥なぼくと一緒にひたむきにまっすぐ歩きながら、いつしかぼくそのものになって、ページをめくる楽しみ、新鮮な驚きを受け止める喜びを、子どもたちと一緒に共有できる美しい大型絵本。

元になったお話は、マーガレット・ワイズ・ブラウンさんの " Willie's Adventures " におさめられた3編のお話のなかの一つ、" Willie's Walk " (1944)、とあります。

好きなのです、この絵本。

うららかなある日、おばあちゃんから「あそびにいらっしゃい」 と、電話をもらった小さな男の子が、おばあちゃんにおしえてもらった道順の 「このみちをまっすぐ」 の言葉どおり、どこまでも素直にひたすらひたむきにまっすぐまっすぐ歩いてゆく、と、いうお話。

あなたもお好きですか?

オンライン書店ビーケーワン:ぼくはあるいたまっすぐまっすぐ左記bk1さんの画像をクリックしていただくと、力作の書評がずらり!
アマゾンさんではこちら、『ぼくはあるいたまっすぐまっすぐ』、さらにさらに、コメントと☆の嵐!
・・・それ以上、何を書かむや、ではありますが、少しばかり。

少し大きめのゆったりとした版で、手を伸ばしたら本当に触れそうな、やわらかい色彩のとびきり美しい林明子さんのイラストが、両手で包み込みたいくらい愛らしい、作者の坪井郁美さんセンスきらきらあふれる、男の子のとっておきのひとりごとたちを彩ります。

そう、テキストは、主人公の、どこまでもまっすぐ歩いていく、果敢なぼくのつぶやきを、そのままきりとったかたちの短い文章。シンプルで耳に心地よく、ひとつの無駄もなくとても巧みに構成されているので、読み手はいつしか行間にはいりこんで、ぼくそののものになってしまいそうです。
そしてイラストは、ぼくのまわりに広がる静かでのどかな景色を、ぼくの目線で、ぼくをくるむようにゆったりと描かれたもの。いま来たぼくの道のりと、これからゆく道のりが、読み手の目前にもしかすると本物以上に美しく広がるようです。

つまり読み手はいつしかぼくとなり、ぼくと一緒に歩いて、ぶつかって、のりこえて、わくわくして、どきどきして、はっとして、わあっと声を上げるような、ページをめくる楽しみ、目で追う喜び、読み聞かせする醍醐味、を存分に満喫できる絵本なのです!

うやのすんでいる町並みといい、ぼくの歩いたいなか道といい、緑の中のおばあちゃんのおうちといい、いつか行ったことのあるような、なければ必ず行きたいような、そんな懐かしい和やかな雰囲気です。

そしてその心地よさの中で、ぼくの素直で曲がっていないまっすぐさ、そしてひたむきで曲げないまっすぐさ、が、ぼくのつきすすむどこまでもまっすぐな道のりにぴったり重なって、途中ふりかかってくる愛らしいアクシデントの一つ一つが、とびきりのスパイスのようにきいています。

読み聞かせする楽しみも、一人で読む楽しみも、ページをめくる楽しみも、つくづくとすみずみまで一枚ずつ絵を堪能する楽しみも、ぼくになりきって、テキストを声にだして読む楽しみも、表紙から裏表紙まで物語を読み通す楽しみも、その他何もかも「絵本」の持つ楽しみが、この絵本にぎゅっと凝縮されている感じです。

は、3姉妹ハハが、まだ読み聞かせデビュー当時のン年前、図書館で借りて返せなくなって、近所の書店にてはじめて 「キャクチュウ (お取り寄せのこと。客の注文、で、キャクチュウというらしいです。どこの書店でもそういうのかしら?)」 を頼んだという、思い出の絵本の一冊。
読み聞かせ初心者のあの頃に、こんな質の高い美しい絵本に出会えてよかったな、と。そして今のこんなつっぱしった方向が決定づけられた、ような(笑 イエイエ)。
この絵本のぼくのように、どこまでも「まっすぐ」歩いていきたいものです。
そして3姉妹ハハとしては、娘ももちろんかわいいのですが、こんな息子、ほしかったな、と(笑)。

おすすめですので、よろしければ図書館などでお読みになってくださいね

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『こんあき』福音館書店

『こんあき』
林明子さく
福音館書店
1989年

こんは砂丘まちからやってきた、おばあちゃんの手作りのぬいぐるみ。あきは赤ちゃんの時から、こんと一緒にだんだん大きくなりました。ところがこんはだんだん古くなって、とうとう腕がほころびてしまいます。

「おばあちゃんちにいって、おばあちゃんになおしてもらってくる」
元気にとびだすこんのあとをあわてて追いかけて、あきとこんの砂丘まちへの列車の大旅行が始まりました。

さあ、出発です。切符は持っているかな?おなかがすいたらどうする?おばあちゃんちへの道はわかるのかな?

「だいじょうぶ、だいじょうぶ」

こんの力強い「だいじょうぶ」が、あきと読み手の心を頼もしく元気付けます。
ところが、そのこんが、砂丘まちについて砂丘をちょっとだけ見ている間に、犬にさらわれて・・・。

あどけなくまっすぐなあきとこんを、自然にひたむきにやさしく描いた、夢いっぱいの美しいファンタジー。なつかしくきらめく風景、あたたかく見守る人々、つぎつぎと訪れるどきどきとはらはらに、大人も子どもも夢中です。

1989年初版なのですね!3姉妹をはじめとして、数々の子どもたちをいまなお魅了し続けている絵本という意味では、すでにして古典の域に到達しているかも。
上記アマゾンさんの情報をクリックすると、カスタマーレビュー数はなんと25件(さらにどんどん増えていくことでしょうね)!この上私が何をいまさらつらつら書かん・・・と、かなり怖気づいてしまいますが、またまた少しばかり(笑)。ちなみに、bk1さんでは、8件も・・・↓

オンライン書店ビーケーワン:こんとあき

こんはおばあちゃんの手作りのきつねのぬいぐるみ。
あきが生まれたときおばあちゃんの故郷のさきゅうまちからやってきて、以来あきと一緒になかよく大きくなりました、いえ、こんは古くなりました。
そして今こんの腕がほころび、こんはおばあちゃんになおしてもらうことをすぐに決意します。

「わたしも、つれてって」
あきはいそいで旅行のしたくをして、こんと一緒に汽車に乗りこみます。
「ずうっとうわっていればだいじょうぶ。しぜんにおばあちゃんの駅につくからね」
と物知りの頼もしいこんに、
「ずうっとすわってて、おなかがすいたらどうする?」
とあき。
だいじょうぶ、だいじょうぶ、と、こんは請け負い、つぎの駅でお弁当を買いに行きます。
ところが、なかなか戻ってこない間に、きしゃはとうとう動き出して・・・。

林明子さんのイラストが美しいのひとこと。写真のように端正でリアルでありながら、写真よりもずっと自然に生き生きと、ひょっとしたら本当にこんのようなぬいぐるみがどこかにいるかもしれない、いれば、まさにこんな表情・こんな動きをするはずだ、と思わせてしまうほどにみずみずしく、やわらかなタッチで描き出しています。

駅の場面、汽車の中の場面、砂丘の場面、海の場面・・・と、こんではありませんが、
だいじょうぶ、だいじょうぶ、このままずうっとページをめくっていけば、しぜんに一緒に旅行に行けるからね。
と言いたいくらい、物語の中にすうっと入り込んで、一緒に同じ景色を見ているようなわくわくした気持になります。

それもそのはず、『こんとあき』には、わくわくどきどきはらはらする見せ場がたくさんつまっているのですよね。まるで毎朝真っ先に開かずにはいれらない波乱万丈の新聞小説のように。
そしてどきどきの後には、だいじょうぶ、だいじょうぶ、と、心温まる美しい場面がやさしく包み込んでくれるのです。大波、小波と果てしなく繰り返す海のように。

あきが赤ちゃんからだんだん大きくなり、こんがだんだん古くなったと思ったらたちまち、
「おばあちゃんになおしてもらってくる」
とこんは身軽く旅立ち、難なくあきと汽車に乗ります。
以前ご紹介した『かしこいビル』(ペンギン社)のメリーが、旅立つための準備に手間取り、ああでもないこうでもないとかばんの中身を出したり入れたりしたのとは対照的に、
「あわててりょこうのしたくをしました。」
の一文で、次のページにはもう駅の場面なのですから、読んでいる子どもたちも一緒に、ぽーんとひといきにこんとあきの旅行に飛び入り参加してしまうわけです。

しかも、そんな急に思い立った旅行とは思えないくらい、ちゃんと席もとってあり(もしかすると自由席かもしれませんが)、きっぷも持っていて、お腹がすいたときのことまでちゃんと考えてくれているのですから、こんはなかなか頼れるぬいぐるみ、さすがおばあちゃんの手作りという感じです。

見たところ保護者が同伴している様子のない、こんとあきだけの冒険旅行、という感じで、そこが子どものあこがれをくすぐる箇所のようですが、さらにきっぷとか席とかお弁当とか、細やかな小道具がリアリティをもたせ、子どもを喜ばせている、という感じがします。
つまり、きっぷにしろお弁当にしろ、子どもがこだわり喜ぶポイントをきっちりおさえている、という感じなのですよね。例えば、新幹線で帰省する際に、途中一度は駅員さんに見せる切符は3姉妹の興味をかなり刺激するのかその後すぐひったくられますし(笑)、新幹線で食べるお弁当やおやつは、長旅の気をまぎらわす3姉妹のおもり役もしてくれますし(その上うるさい口をふさぐチャックの役目もしてくれるのですよネ)、汽車の旅で子どもが気にする箇所をしっかり把握していらっしゃるな、と思ったりします。

そのお弁当を買いに行ったまま戻ってこなかったこんは、実はしっぽを汽車のとびらにはさまれて動けなくなっていたのですが、ここに一つの小さな物語の盛り上がりがあります。
その後こんは駅員さんに包帯を巻いてもらうのですが(このほのぼのとした場面はハハのお気に入り)、ほうたいとか、ばんそうこうとかの小道具も、子どもの大好きなポイントですよね!

で、盛り上がってほのぼのした後は、ずうっと窓の外を見て座っていて・・・きしゃはめざす駅に到着です。このあたりのずうっと座って窓の外を眺めている一場面も、きっちり手を抜かず描いているところが、長旅のリアリティをかもし出しているというか、ファンタジーとリアリティの間を自然に行き来できる秘密ではないかと思います。

に着いた後も、おばあちゃんの家にたどり着くまで、一波乱、二波乱と美しいどきどきする場面が続くのですが、物語の展開が、あるところでは丁寧に、あるところでは飛ぶようにぽーんと、まったく予測できない自由なスピードで、予測できない楽しい場面に連れて行ってくれるのです。
眠っているときに見る夢が、ちょうどこんな風に自由に驚くべき展開をみせてくれたりしますよね。あるいは、楽しかったお出かけの記憶をたどると、あるところは妙に生々しく細部まで覚えているのに、あるところはぱっとしか思い出せなかったり・・・。
そういえば、『こんとあき』のラストの部分は、あれっ、もうおしまい?と惜しむあまりにもう一回最初から繰り返し読むほど、ぱっといさぎよい印象的な締めくくり方かも。

オンライン書店ビーケーワン:こんとあきこんとあき』は、物語は身近で楽しいファンタジーですが、描き方は、何だかとてもリアリティのある、子どもの心によりそって子どもの心のままに自由に描いた、等身大の不思議な物語、という感じがします。だいじょうぶ、だいじょうぶ、と、すべてを受け止めてくれるおおらかな登場人物が本当に素敵で、小さな子どもが見上げる頼もしい大人のよう!あくまで個人的感想ですけれども、そこがずーっと心に残って、お気に入りの一つです。

よろしければ、図書館などでお読みになってくださいね。

余談ですが、林明子さんイラストの『こんとあき』と、『ぼくはあるいたまっすぐまっすぐ』(ペンギン社 拙文は上記に)って、・・・どこか根っこでつながっていそうな感じがしませんか?
 オンライン書店ビーケーワン:こんとあき オンライン書店ビーケーワン:ぼくはあるいたまっすぐまっすぐ 
主人公のあきちゃんと、ぼうやの服装が、どことなく似ているせいかもしれません。テキストの作者がまったく違うので、関連なし、といえばないのですが、偶然にもどちらも子どもだけでまっすぐおばあちゃんに会いにゆくお話。あわせてお読みになってみてくださいね!

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『いってらっしゃーい、いってきまーす』福音館書店 限定復刊

て、4月、大きな期待や不安をぴかぴかのランドセルや園カバンにつめて、新しい活躍の場に毎日おもむく子どもたちも、そろそろ新しい世界になじみはじめた頃でしょうか・・・。実は3姉妹長女が今年から新一年生なのですが、こちらが拍子抜けするほど、はつらつと楽しそうに通っているのですよ。毎朝 「 いってらっしゃい 」 と、まだまだランドセルがよたよた歩いているみたいな背中を見送りながら、本当にホントウに大丈夫なのかしら。なんて思うのはハハたちだけかもしれませんが(笑)。

そこで今日は、ちびっこはつらつこの絵本。なんと今だけ限定復刊で待望の登場です!

いってらっしゃーいいってきまーす

『いってらっしゃーい
 いってきまーす』
神沢利子 さく 
林明子 え
福音館書店
1983年 
限定復刊


朝。お母さんはお仕事へ、なおちゃんは、絵描きのお父さんの自転車で保育園へ。今日も一日の始まりです。
あのねえおとうさん、きのうね、おうちごっこしたんだよ。あ、ゆうちゃんがきた。おはよう。あ、やっちゃんだ。かいじゅうのえ、うまいんだよ。・・・
おとうさんにばいばいをしたら、さあ、楽しい保育園、今日はなにをするのかな・・・。
共働きの家庭の小さな女の子の保育園での普通の一日を、一つ一つ丁寧にいつくしんで描いた絵本。ページからなおちゃんの可愛いおしゃべりが聞こえてくるようです。

お探しのかたも多いのでは?

からりと晴れた水色の空に、赤いとんがりお屋根のかわいいおうち。
おとうさんに抱っこされた小さな女の子、なおちゃんが、おつとめにゆくおかあさんに手を振ってばいばい。
「いってらっしゃーい いってきまーす」
と、元気な声が聞こえてくるようです。

林明子さんの描くくっきりほっそりとしたバランスのよい文字は、「あ、林明子さんの文字だ」と、文字通りひと目でわかってしまうほど個性を主張している感じです。このような個性的な美しい書き文字を書かれている方には、『こぐまちゃんおはよう』(こぐま社)オンライン書店ビーケーワン:こぐまちゃんおはようなどこぐまちゃんシリーズでも有名な、わかやまけんさんなどがいらっしゃると思います。

さて、モダンな表紙の扉をあけると・・・今度はおとうさんと、なおちゃんが自転車にのっていってきまーす。いきいきとはずむようなお話は、表紙からもう始まっているのです。
ちょっとレトロな、昔暮らしたあの町をまざまざと思い浮かべことができるような林明子さんの確かな描写力と、むかし同じことをつぶやいたような親しさで語りかける、神沢利子さんの巧みなおしゃべりで、ごく普通の小さな女の子の素朴で健康な一日は元気に続きます。表紙から裏表紙まで、さりげなく計算されたひとコマひとコマの構成がお見事。

園生活を実際におくっている子どもや、いまやそのハハとなっているかつての子どもたちは、そうそう、こんな風なのよ、そしてあたしのときはこんなこともあってね、と、なつかしく楽しい場面に、おもわずにっこりほほえんでしまいそう。

まだ入園していない小さな子どもたちは、なおちゃんたちが送る園生活の丁寧な場面の一つ一つに興味津々、こんなことをするんだな、こんな楽しいところなんだな、と、見知らぬ集団生活へむけて、わくわくと期待がふくらみます。

おかあさんとの帰り道は、なおちゃんの視点にあわせて描かれているので、いつもの町も少し新鮮。寄り道がしたくなる気持が少しわかりそうです。
つい時間に追われてせかせか急いでしまいがちなハハですが、たまにはこんな風にのんびりと、子どもの視点や速度にあわせて歩いてみたいな、と、思います。

なんでもない平凡な一日に、きらきらと幸せがいっぱいつまっている愛らしい絵本。

せっかくめでたく復刊されたのですから、のんびりこれからもずーっと、定番絵本になってくださったら本当にいいのですけれど。

お探しのかたは、お近くの書店などでどうぞお急ぎくださいね!

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おつきさまこんばんは』福音館書店

三女(2歳)がいま夢中の絵本はこちら。

おつきさまこんばんは
林明子作
福音館書店
1986年

はっきりとした青と黄色、くっきりとした線と形、豊かな表情で、シンプルに美しく幼児にうったえかけてくる絵本。
リズミカルなテキストも楽しく、目にも耳にも心地よい一冊。おまけのあかんべにも、赤ちゃんはもう夢中。

青と黄色で、シンプルに美しく幼児にうったえかけてくる絵本。
青色でも、紺色・明るい青色、黄色でも、橙色・明るい黄色と、色使いにリズムがあり、はっきりとした心地よい対比が感じられます。

個人的に、水色や、ペパーミントグリーン色・藍色・青色などの青色系、そしてさしいろにレモン色・黄色などの黄色系を用いた絵本にとても魅力を感じるのですが、その一つの根底には、夜空とお月さまの美しい対比のイメージがあるのかもしれないなあ、と思ったり。

そんなこんなで、ハハも3姉妹も大好きな絵本の1冊です。
幼い子のつぶやきを書きとめたようなシンプルでやわらかいテキストは、家族中ほとんど丸暗記状態。

「だめだめくもさん、こないでこないで
おつきさまがないちゃう」

なんて、リズミカルなテキストとともに、幼い子の喜怒哀楽をいきいきと描きとめたようなお月さまの表情もすっかりそらんじていて、家族中ほとんど百面相状態(笑)。

裏表紙のあかんべをしているお月さまのイラストも、3姉妹の興味をかなりひくもので、読み終えた後にいっしょにぺーと舌をだしてみるのがほとんどお約束状態。


オンライン書店ビーケーワン:おつきさまこんばんは目にも耳にも心地よい作品で、ご存知の方も多いと思いますが、よろしければ図書館などでお読みになってくださいね。
・・・と、無難にひとくぎりしておいて(笑)、ここから少し、ハハのたわごと、勝手にうがったアレコレなどを。

えばハハのお気に入りは、上記の一文「だめだめ・・・」に添えられた、大変困ったお顔のお月さまのへの字の口と、口元にきざまれた微妙なシワ。
黒雲に困惑して泣き出す前の子どもの顔にも見えますし、大人が、困った状況を子どもに伝えるために、子どもに向けてわかりやすく困った顔をしてみせているような、ちょいとオーバーでユーモラスな顔にも見えます。

青と黄のきわだつイラストの中で、お月さまを困らすわるい(?)黒雲は、そこだけほとんど黒色と灰色のモノトーンで描かれていて、不穏な空気をかもし出しているのですが、やがて、ページをめくってゆくと、その意外な正体を明かして去っていきます。

「ごめんごめん、おつきさまとちょっとおはなししてたんだ・・・」

黒雲に顔はないのですが、黒雲から再びのぞいたお月さまの顔は、幼い子が、ふうん・・・、というような、少し納得したようなしていないような、泣きやんだ後に何かしゃべる手前のような、複雑に結ばれた表情。

黒雲が覆い隠し、お月さまを困らせていたのではなくて、ちょいとなかよくおしゃべりしているだけだった、というのであれば、お月さまの表情は実際はもっと別のものだったと想像できますが、幼い子の気持によりそって描かれたお月さまの表情は、幼い読み手の表情を映す鏡の役目も果たしているのだと思われます。
つまり、黒雲がきたら、お月さまがないちゃう、と心配しながら実は泣きそうなのは子どものほうだったりする、素直な子どもの気持を鏡のように映しているのが、「だめだめ・・・」のお月さまのお顔だとすると、
ごめんごめん・・・」のお月さまのもひとつ腑に落ちないような顔は、その心配が、実は取り越し苦労だったとわかって、え、そうだったの?、となんとなく面映い(勘違いだったのでなんとなくはずかしいような照れくさいような)子どもの気持を映し出したもの、という感じでしょうか。

そうだとわかったら、よかったね、おつきさま、と、嬉しくなった子どもの気持を汲んで、ラストの満面のお月さまの表情がとてもまぶしく思えます。

してその大団円の後に、そのお月さまとはまた別の、裏表紙の、あかんべをしている、お月さまのイラストがあるのですが・・・これは、必ず3姉妹の興味を惹くいたずらなお顔でもあります。
同時に、これは、大人が読むと、「へっへっへ、心配してくれてアリガトウ」、と言っているお月さまの裏の顔、というか、もう一つの茶目っ気ある顔にも思えて、子どもでもあり大人でもある、むしろ子ども・大人の枠をはるかに超えたお月さまの神秘性を垣間見たような気もします。

つまり、個人的にハハが読むと、ラストが実は二つある・・・子ども用と続く大人用の二つかくされている、という感じでしょうか。
美しいイラストとテキストに、大人のユーモアをそこはかとなく感じて、そこがまたお気に入りの絵本の一つの理由でもあります。
また、この絵本に登場するねこの軌跡をたどったり、家の明かりや登場人物に着目しても、また物語に新しい奥行きを発見できそうな感じで、そこもお気に入りの一つです。

よろしければ親子でお楽しみになってくださいね。

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『もりのかくれんぼう』偕成社

『もりのかくれんぼう』
末吉暁子作
林明子絵
偕成社
1987年

美しく巧みなかくし絵の、見つけっこの探しっこの楽しいかくれんぼうの物語です。
読み聞かせすると、目を輝かせてとんできて、我先に発見せんとばかりにやっきになってコゼリアイをひきおこし、はじきとばされた誰かが泣き、誰かがむくれるというくらい、3姉妹に大人気ひっぱりだこの絵本です。
なんといっても、美しいかくし絵のイラストが、日本の絵本作家を代表するお一人、林明子さんの手になるものですものね!
テキストはこれまた日本の児童文学界の代表するお一人、末吉暁子さんによるものですし。
なんて贅沢な作品でしょう。

何気なく見落としがちな絵本の表紙にも、裏表紙にまでも、黄金色の美しい森にまぎれて「かくれんぼう」がかくれているのでお楽しみ。

の表紙をわくわくしながら開くと・・・団地に住むけいことお兄ちゃんが、公園で遊んだ帰り道。
けいこはかくれんぼがしたかったのに、お兄ちゃんたらともだちとボール投げばかりで、つまらなかったとふくれていたら、
「ようい どん」
なんて、お兄ちゃんたら、ひとりで先に行ってしまうんです。
あわてておいかけたけいこの目の前に、ぽっかりと、知らない黄金色の森が広がっていました。

そして、少しおびえるけいこの背後に、からかうような男の子の声。

「お兄ちゃん?」

と、ふりかえると、・・・だあれもいません

いいえ。

そこには、よおく見ると、枝や木の葉と同じ色をした不思議な少年、「かくれんぼう」がにやにや笑いながら立っていました。

「おいらもりのかくれんぼう。おいらたちとかくれんぼしよう」

そして、けいことかくれんぼうと、森の動物たちとの、楽しいかくれんぼう遊びが始まります・・・。

明子さんの、すみずみまで美しいかくし絵がとても巧みで自然なので、初めて読む際にいちばん真剣に探してしまうのは、実は読み手のママだったりして。

いわんやお子さまは、きっと絵本にしがみついて、微にいり細にいりながめいりとことん調べつくし、最後の一匹をついに発見するまで、断固として次のページをめくらせてくれないことでしょう。対象のお子さまが複数で、年も近い場合は(ウチのように)、おきるかもしれない検索場所のなわばりあらそいを、公平にさばく心の準備も必要かも(笑)。

今の絵本には少し珍しい感じの縦書きのテキストは少し長めですが、最後まで静かに味わいたい、少し切ない物語です。
この絵本が最初に出された1980年代半ばに、けいこと同じような少年・少女時代をお過ごしになられた方には、描かれている団地風景など、ひときわなつかしいものがあるかもしれません。そして、その頃からいまもなおずっと続く、自然開発の波・・・。

もう一度、本当に、かくれんぼうに会えることを願わずにはいられない、楽しくて少しほろ苦い、心に残る絵本です。
ご存知の方も多いとは思いますが、よろしければ図書館などでお読みになってくださいね。

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『いもうとのにゅういん』福音館書店

『いもうとのにゅういん』
筒井 頼子作
林 明子絵
福音館書店

あさえが幼稚園から帰ってくると、朝うばぐるまの中に寝かせていった、お気に入りのお人形がありません。
「また、あやちゃんのしわざね」
そこへ、ぐったりしたあやちゃんをおんぶしたおかあさんが、部屋から出てきました。
あやちゃんは盲腸で、これから入院して、手術をすることになったのです。

あやちゃんとおかあさんが病院へ行ってしまって、お友達も帰ってしまうと、夜に向かって泣きそうな荒れ模様の空の下、だあれもいない家の中であさえは一人ぼっちでお父さんを待ちます。

あやちゃんはだいじょうぶよね・・・。

妹の突然の入院という非日常的特別な一夜を過ごす中で、姉のあさえの心の成長を細やかにつづったさわやかな物語。

然ですが、この絵本。

筒井頼子さんのやさしいまなざしでつづった、身近でいきいきとした姉妹の日々と、林明子さんのデッサン確かな、本物以上にふっらと美しい子どもたちをみずみずしく描いたロングセラーで、福音館書店の「こどものとも」の傑作絵本シリーズ。たいていの図書館などに1冊は蔵書があるのでは。

林明子さんの描く、薄紅色のほっぺたのつやつやとした少女たちが、どの場面も、これ以上ないくらい子どもらしい生き生きとした表情を見せてくれて、こちらまで微笑んでしまうような、美しい絵本です。
林明子さんも、表紙から裏表紙まで、すべてのページで物語を語り、繊細な心配りをすみずみまで施す画家さんなので、本文が終わったあとも、澄み切った余韻が心に残ります。

私事ですが、うちは3姉妹で、妹には事欠きませんので(笑)、この絵本はもう長いこと定番絵本として『あさえとちいさいいもうと』(福音館書店)オンライン書店ビーケーワン:あさえとちいさいいもうととともに、家の本棚に並んでいる一冊です。


・・・で。

なんと、うちの事欠かない妹についても、突然ふりかかってきたのですよ、「いもうとのにゅういん」が!

※ここから先は、お食事中の方、これからお食事をご予定なさっている方には不向きな部分もあると思いますので、ご都合のよろしいときにお読みくださいませ※

 

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