|
『パンやの ろくちゃん』
|
長谷川義史作 小学館 2006年
|
いつもげんきでかおがバンバン しょうてんがいのパンやのろくちゃん
おつかいにいく しょうてんがいでおこられる おみせばんをする いぬをかいたいよう の4つのおはなし。
元気な男の子がこぶしをつきあげ、力いっぱい「えいえいおー」しているような楽しい絵で、活気あふれる商店街のパン屋の日々を、にぎやかに描いたこんがりほかほか物語。
|
かおがパンパンパンやのろくちゃん、カレーのぎゅうにくのおつかいにでかけて、いそいですべってこけたひょうしに、なにをかうのか忘れてしまった。
「にくにく、なんのにくだっけ」 なんててくてく八百屋の前を通っていたら、 「はい、にんにくひとつ、まいどありー」 なんて、八百屋のたいしょうに言われて、お買い上げ。 ろくちゃんのつぶやきひとつが、いきのいい八百屋で、肉屋で誤解され、気がつけばろくちゃんちの今夜のメニューは、カレーじゃなくて、あれれ?
うーん、ちゃきちゃきの八百屋の大将のなんとお茶目で商売上手なこと(?)。なんとなく気おされて(?)言われるままに買ってしまうろくちゃんも愛らしくて、ろくちゃんのおつかいの品々にあわせて、あっさり献立変更してわいわいたいらげてしまうろくちゃんの家族もおおらかで、いいないいな。
丁寧に大胆に描きこまれたにぎやかな店先の風景のカラフルな絵を眺めるのも楽しくて、いきいきした活気ある雰囲気にたっぷりひたれます。元気な店の呼び声や、近所の客のおしゃべりなどが、いまにも聞こえてくるみたい。 生活感ただよう風景なのに、天真爛漫であかぬけているのは、下から元気につきあげるような独特のレイアウトと、たっぷりとした絵の具の色使いと、塗りのタッチによるものかしら。ケーキのクリームみたいで、絵を描いている喜びが、こちらにまでバンバン伝わってきそうな絵ですよね。
かおがパンパンバンやのろくちゃんの、リズミカルで楽しいテキストで、元気いっぱいパンやのろくちゃんのにぎやかな毎日を描いた絵本。短いけれどしっかりかみごたえのある味わい豊かなお話が4つもおさめられた大盤振る舞い。 他の3つのお話も、どれもこれもこんがりやきたて、人情ほかほか、商店街のたいしょうたちのきっぷのよさは格別。いつまでもなくしたくない、大切に伝えていきたい、下町の風景がつまっています。
▲上へ
『おじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃん』BL出版
|
|
『おじいちゃんのおじいちゃんの おじいちゃんの おじいちゃん』 長谷川義史 BL出版 2000年
|
ぼくのおじいちゃんってどんなひと? ひいおじいちゃんはどんなひと? どんどんねっこをたぐっていったら・・・
脈々とぼくへつづいてきたはてしない道のり、ぼくといっしょに見てみよう! 活気あふれる下町背景も、人情あふれるおじいちゃんの顔も、エネルギッシュなテキストも、見どころたっぷり、聞かせどころいっぱいの楽しい楽しい絵本。
|

これがぼく。 5さい。 ようちえん たんぽぽぐみ。
これがぼくの おとうさん。 38さい。 ・・・
これがぼくの おじいちゃん。 72さい。 ・・・
これがぼくの ・・・
さあ、どんどこどんどんいってみよう! ぼくのおじいちゃんのルーツ、いったいどこまでたどれるかな。 ぼくのご先祖様のでっかくて大きな顔のイラストの影から今にも飛び出て出てきそうな、活気あふれる時代背景にもご注目。大胆なデフォルメに見えながら、かわらの一枚一枚まで律儀に描きこまれたにぎやかなタッチで、そのおじいちゃんの生きていた毎日の風景が、今、鮮やかによみがえります。 ほらほら、どんどんなつかしくなったと思ったら、今度は新鮮になってきて、映画の世界か、博物館の世界。
子どもの絵みたいな素朴さや大胆さを残しながら、澄んだ色を無邪気に重ねた軽やかなイラストがたまらないですが、この絵本においてはテキストも痛快! どんな小さな通りすがりの人の顔にも目や鼻を描き、畳の目筋模様までかっちりと描きこんだ、楽しさの凝縮されたようなイラストの一部に、いつのまにかテキストも共鳴するかのように、ひいひいひい・・・おじいちゃんの「ひい」の手描き文字がぎっしりと列挙されるさまはまさに圧巻。ひい〜。 さっそく3姉妹は釘付けになって、指でたどり始め、きっちり全「ひい」文読み上げ貫徹を要求してきて、目が回り、ロレツが回らなくなりそうになりました。もしかして、数え上げ満了する勇気のある子はいるかな?
ぼくのねっこをどんどんたどっていくと・・・。 加速しながら深い穴に落ちていくような、楽しいイラストとテキストに導かれながら、どこか敬虔な気持ちになるのは、ぼくのひいひい・・・おじいちゃんと私やみんなのひいひい・・・おじいちゃんが、いつかつながっていると思えるからかも。 誰もが主人公になれて、誰もが冒険(?)できて、誰もが思いを馳せられる絵本。 この長い遠い尊いつながりの一点を、今、自分たちも生きているのですね。
▲上へ
|
家族みんなのこんな様子が見えたら赤ちゃんも嬉しい、赤ちゃんが見てくれていたと知ったら家族も嬉しい、見守っているお月さまも嬉しい、にこにこ絵本。 おへそのあなを通じて、赤ちゃんと家族はきっとつながっているのですね。
|

ちいさなちいさなあかちゃん。 おかあさんのおへそのあなから みえる みえる。
おにいちゃんがみえる。 おねえちゃんがみえる。 おとうさんがみえる。 ・・・ なにしているのかなぁ。
・・・
もうすぐ生まれようとしているおなかのなかの赤ちゃんが、おへその穴からみんなを見たら、どんな光景が見えるかな。 ちゃんと赤ちゃんによりそって、さかさまに描かれた光景が、見慣れているはずなのに新鮮。本当にこんな風に見えたり、かいだり、聞いたりしているのかもしれませんよね。
誕生を待つあかちゃんと、家族の期待と喜びが、ページからいまにもあふれそう。 のびのびと闊達な絵のすみずみまで、まだ見ぬ赤ちゃんへの愛情で満たされています。 明るくて鮮やかな色と、たたみや床や人肌の色などの中間色が、絶妙にとけあっている感じ。
3人目でもまるではじめての赤ちゃんのように準備万端整えるおとうさんの頑張りももちろんあちこち光っていますが、家族みんながそれぞれ思いを馳せて待つ光景がほのぼのと描かれていて、心が熱くなります。 自分が赤ちゃんだったときも、こうだったんだろうなって、どの子にも思ってほしいですよね。 生まれてきた幸せをもう一度かみしめられるような絵本。
この記事へのコメントを読む▼*書く▼ (この記事へ戻るには、ブラウザの戻る、をクリックしてくださいね) |
▲上へ
長谷川義史さんの絵本 「は」の絵本箱へ

HOMEへ

Copyright (c)2005-2007 kudolacieko All Rights Reserved
|