■ハンス・ノルマン・ダールさん絵本
Hans Normann Dahl 1937年ノルウェーのレースンコウに生まれ、国立工芸専門学校・ワルシャワ(ポーランド)の芸術大学で絵画を学ぶ。新聞・雑誌の風刺画家として活躍した後、アルフ・プロイセンなどの童話のさし絵、タブロウの制作を続け、各地で個展を開く。かたわら国立工芸専門学校や美術専門学校で教鞭をとる。1999年に出版美術賞を受賞
(『トロルのなみだ』偕成社 品切れ 著者紹介 より)
『トロルのなみだ』

 
『トロルのなみだ』偕成社 品切れ

『ト

なみだ』
リン・ストッケ=作
ハンス・ノルマン・ダール=絵
やまのうちきよこ=訳
偕成社
2001年
51p
品切れ

大好きな父さんが死んだ。そのときにこぼしたナミダが、息子のトリムに、涙の秘密と、"さいしょの花"の話を教えてくれた。
涙を流してはいけないきまりのトロル一族の子・トリムが、真実を求めて、「死」や悲しみと向き合いながら、森を冒険する美しいファンタジー絵本。

森の奥に住むトリムは、父さんと釣りが大好きな、ちいさなトロルの男の子。
トロル村には、なみだを出してはいけないという、大切なきまりがありました。
一つぶでも、なみだがおちると、長老たちがやってきて、だれにもみられないうちに、なみだをすくいとって、湖にすてるのです。
「なみだがないっていうことは、しあわせだっていうことじゃよ!」
今はもう死んでしまったおじいちゃんも、幸せそうに言っていたのですが、本当にそうでしょうか。

そんなある日、父さんが、重い病気にかかって、死んでしまいます。ベッドで最後にトリムを見つめた目から、涙を一粒、あふれさせて・・・。
トリムはあわてて、きらっとこぼれた父さんのなみだを、ポケットにしまいます。

死んでしまった父さんのナミダ・・・。
トリムは大切なナミダを持って森へ行き、長老たちから逃げながら、ナミダに教えられた"さいしょの花"のさいている場所を探します。その"さいしょの花"は、ナミダをかけると、うつくしいひみつの色の花がさくというのです。
トロルのナミダで、うつくしい花をさかせることができるのですから、なみだがあるから、うつくしいものうまれるのだと、きっとわかってもらえるでしょう。
・・・

涙を出してはいけないトロル一族の子・トリムが、父さんの遺したナミダをめぐって、涙の本当の意味に気づき、一族をしあわせへと導き、父さんの死を乗り越えて、再生していく物語。
51pの長編。挿し絵は、カラーと白黒(または単色)が交互で、一般的な絵本ほど多くありませんが、ほのぼのとしたタッチの中にも、静かな迫力があります。
ずっとトロルに我慢され、あふれかかってはのみこまれていたナミダ自身が、ひとりの凛とした人格を持って登場し、トリムを教え、導いていく展開は、神秘的で幻想的で、ドラマチック。きらきらときらめいているけれど、小さくてはかないナミダそのままに、かしこくてやさしくて、誇り高くていさぎよくて、そして、最後は切ない・・・。
なにより、そんな清らかで、愛らしいファンタジーにくるまれた、「死」や悲しみの概念が、「死」からふだん遠いところにいる子どもの心をひきつけ、子どもの心と向き合います。

作品の中で描かれる、三つの「死」も、象徴的。
トリムがまだ小さいとき、
「きょうは、森へいって、秋の花や木の葉のように、地面にねかせてもらうことにするよ」
といったきり、帰ってこなかったおじいちゃん。
病気で、家のベッドで息を引き取った父さん。
昔と今の二人の死の対照的な場面も、どこか現代に通じるような余韻を感じたり。
豊かな森の中の水と花にわかりやすくなぞらえて美しく描かれた、三つ目の「死」は、その先につながっていくものがあることを、はっきりとトリムに感じさせます。

自分の本当の気持ちと向きあって、見つめて、認める。そこから、新しい気持ちがまた、生まれる・・・。
涙をぬぐうと、はっきりとものが見えてくることもあります。かなしみから、よろこびが生まれることだってありますよね。

ゆらめく涙のように美しく、純粋で、深い森のように素朴で静かで、豊かな物語。透き通るようなファンタジーでありながら、血の通っている温かさを感じました。

巻末の著者紹介の訳者のやまのうちきよこさんの箇所をみると、1931年〜2000年、とありました。2001年に出版されたこの絵本は、晩年に近い作品だったと思われます。すばらしい作品たちのご紹介を本当にありがとうございました。

原書は、『Trollet Trym og den hemmelige farven』1994 Gyldndal Norsk Forlag とあります。

テキストの作者のリン・ストッケさんは、
1961年オスロ生まれ。ノルウェーの名優として知られる。四児の母でもあり、詩集も発表している。
そうです。
(『トロルのなみだ』偕成社 品切れ 著者紹介 より)

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