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『ぼく、 お月さまと はなしたよ』 フランク・アッシュえとぶん 山口文生やく 評論社 昭和60年 |
やまびこを介して、お月さまとおしゃべりを楽しんだ無邪気なクマくんの、いとおしいメルヘン物語。 澄んだ月明かりに照らされて、読むとほのぼの、心が清らかに満ちていくよう。
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ある夜のこと、クマくんはお月さまを見上げて、考えた。お月さまに、たんじょう日のおくりものをあげたいな。
でも、お月さまのおたんじょう日って、いつだろう。 それに、何をあげたらいいかしら。
そこでクマくんは、お月さまに話しかけようと木に登ったけれど、遠すぎて聞こえないみたい。 そこで遠く山の頂上に登ったら、今度はだいぶ近くなって、ちゃあんと聞いてもらえたみたい。
「こんばんは!」 「こんばんは!」 「たんじょう日、いつですか。おしえてください。」 「たんじょう日、いつですか。おしえてください。」 ・・・
ほら、ちゃんと返事がかえってくるよ! ぼくのたんじょう日はあしただけど、お月さまのたんじょう日もあしただって。 ぼくのほしいものはぼうしだけど、お月さまのほしいものもぼうしだって。 ああ、よかった!これでお月さまになにをあげればいいか、わかったぞ。
クマくんは次の日大喜びで・・・。
チョコレートみたいに茶色い横顔クマくんと、カステラみたいに黄色くてボタンみたいにまんまるお月さまの、愛らしい勘違い、ほのぼの掛け違い物語。 こっくりとした深い色合いと、そのものの色より少し明るい輪郭線で縁取られた優雅な絵がきれい。月明かりにおぼろにうかびあがっているみたい。 きわめて明快で簡潔な絵なのに、幻想的で、不思議な奥行きも感じます。 とうとう最後まで幸せに思い込み続け、めでたく願いのかなったあどけないクマくんの、幼子のように純粋なメルヘンに、ぴったり。 ぼうしがお茶目な脇役として大活躍するところや、絵本のさりげない裏表紙も見逃せず、個人的には「ぼうし絵本」▼の仲間に入れたいいとおしい絵本。
茶色のクマくんは、いつもいつも横顔なのですね。しかもほとんど同じ向き。まんまるいお目目でお月さまをひたと見つめ、しっかりとした両足で、前へ前へとよどみなく進んでいる、まっすぐなイメージ。 どんな困難も、持ち前の明るさと素直さとひたむきさで、自分ではそれと知らぬまにはねかえし、結果として幸せな結果をまねきいれる、あるいは知らぬままくつがえし、結果として幸せな結末をこしらえてしまう、頼もしいまねきグマなのですね。
クマくんの無邪気な勘違いに、たとえ最後まで気が付かなくても、楽しく読める小さなお話。 いちはやく気が付けばもっと楽しくはらはらどきどき、やきもきしながら、ほほえましいクマくんを守ってあげたくなる愛らしいお話。 絵本の中にいるクマくんは、きっと、元気で前向きでひたむきで、純粋さを失わない、もうひとりの小さなあなたかも。
原書は『HAPPY BIRTHDAY, MOON』 1982 Prentice-Hall Inc.,New Jersey とあります。 アマゾン洋書ではこちらなど。↓
『Happy Birthday, Moon (学校) 』 Simon & Schuster (Juv) (1982/05) |
↑ 邦訳と同じ表紙だと思われます。
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『Happy Birthday, Moon (Moonbear) (ペーパーバック)』 Aladdin Paperbacks; Revised版 (2000/3/1) |
↑ 邦訳の表紙とよく似ていますが、クマくんの手など、少し異なっています。
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『どこへいったの、 お月さま F.アッシュえとぶん 山口文生やく 評論社 1987年
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クマくんはお月さまとかくれんぼをした。 クマくんはすぐに見つかったから、こんどはお月さまのばんだ。 クマくんはいっしょうけんめい探したけど・・・あれ、ここかな?ちがった。じゃあ、ここかな? お月さま、まいった!
無邪気なクマくんと静かなお月さまの、ほのぼのといとおしい物語。
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ある日、日が沈むまで、コトリくんと楽しくかくれんぼをしたクマくんは、夜になると、今度はお月さまによびかけた。 「かくれんぼしましょ! さいしょは、ぼくがかくれるよ。」 くまくんはさっそく木のうろにかくれたけれど、しばらくしてちょっと首を出してみると、そこにちゃんとお月さまがいる。 「あーあ、みつかっちゃった。こんどは、あなたが、かくれるばんですよ。」 くまくんが目をとじて数えていると、 ちょうどそのとき、風がやさしくふいてきて、大きな雲のかげに、お月さまを、かくしてしまった。
数え終わったくまくんが、お月さまを探し始めたけれど、なかなか見つからない・・・。
夜空に煌々と輝くお月さまと、かくれんぼをしてしまったクマくんのお話。 フランク・アッシュさんの描く黄色いお月さまが、こっくりと濃厚な夜の色調の中でひときわ輝いて、ほんとうにつやつやとしたチーズみたい。 無邪気なクマくんの幸せな勘違いが、読み手にほほえみと、やさしい気持ちを届けてくれます。クマくんのお月さま探しも読み手を楽しませ、にぎやかな結末も読み手の予想を裏切らず、だれもがにっこり、幸せな眠りにつけそうです。
原書は『MOONGAME』1984 Prentice-Hall Inc.,New Jersey とあります。 アマゾン洋書ではこちらなど。↓
『Moongame (ペーパーバック) 』 Aladdin Paperbacks; Reprint版 (1987/04)
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↑ 邦訳と同じ表紙だと思われます。お月様はちらり。
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『Moongame (ペーパーバック) 』 Aladdin Paperbacks; Reprint版 (2000/3/1)
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↑ 邦訳の表紙とよく似ていますが、少し異なっています。お月様はまんまる。
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『かじって みたいな、 お月さま』
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フランク・アッシュえとぶん 山口文生やく 評論社 1985年
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お月さまをかじってみたいな。 思いついたクマくんは、信じるままに、さっそくロケットをつくりはじめました。
夏から冬へ、クマくんにとって、はじめてのロケット、はじめての旅立ち、はじめてのゆき、はじめてのつき、はじめてのあじ、はじめてのあしあと・・・。 はじめてづくしの未知の世界で、いまや舞台は整って、クマくんの出番をお待ちかね。
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ある夏の夜、コトリとお月さまを見ていたクマくんは言った。 「ねえ、ぼくさ、お月さまをぱくっとかじってみたいんだ。きっと、おいしいだろうなあ!」 驚いたコトリは、 「ぜったい、まずいと思うな!」 と、忠告したけれど、クマくんはちょっと考えて、お月さまめがけて、弓で矢を放ってみた・・・だめだった。 「ロケットでなくちゃむりだよ。」 コトリの進言に、 「それなら、すぐつくろう!」 クマくんはさっそく次の日、古道具屋でロケットの材料を買ってきて、長い長い時間をかけてじっくりとロケットを作った。 その間に季節は変わり、コトリは南に飛んでいき、クマくんもねむたくなってきたけれど・・・。
こっくりココア色のクマくんの、ゆっくりじっくりうでまくり、ここ一番で睡魔に倒れながら強運をつかみとる、転んでもただでは起きない物語。 ひとつひとつ着実にトントン拍子で進む絵物語と、クマくんのお約束の幸せな勘違いが魅力的ですが、今回はいくつかの季節にまたがった長い物語なので、夢も勘違いも思い込みもさらにでっかく、小気味よい威力をはなっています。
今回もまた、月夜にじっくり目をこらしたときに、ゆっくり浮かび上がってくるような、静かな深い色合いのイラストが、無邪気なクマくんの幸せな世界を大切に大切に守っているよう。
原書は『MOON CAKE』1983 Prentice-Hall Inc., New Jersey とあります。 アマゾン洋書ではこちらなど。↓
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『Mooncake (ペーパーバック)』
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Aladdin Paperbacks; Reprint版 (2000/3/1)
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邦訳表紙とよく似ていますが、別の表紙だと思われます。お皿からすくって食べているクマくんのイラストは同じように見えますが、小鳥とろうそくの位置が、邦訳の表紙と反対になっていて、色使いも異なっています。
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