2005年、嬉しいフランソワーズさん(1897-1961)の初邦訳絵本が、2冊同時発売になりました!
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『コレットちゃんは おかあさん』 フランソワーズ・セニョーボさく・え ないとうりえこやく 徳間書店 2005年
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「わたし、どうぶつたちのおかあさんになるの」 小さな黄色いおうちに一人で住むコレットちゃんが、いろいろな動物たちのおかあさんになって、やさしくお世話をしてあげます。 動物たちもコレットおかあさんが大好き。
ところが、コレットちゃんの小さなおうちは、どんどん動物たちでいっぱいになっていって・・・。
素直でピュアでいとおしく、小さな女の子の夢とやさしさがふんわり広がる絵本。
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可愛い! 親子ともども叫んでしまいました。
とりわけ、レモン色の、つや消しの表紙にハハは釘付け。 7歳、5歳の姉二人は、自分たちの描くラクガキのお人形にそこはかとなく(もちろん月とスッポンくらいの差はありますが)似ている、シンプルで分かりやすく親しみやすいまあるいお顔の、愛らしいコレットちゃんにもう夢中。
原書は『THE STORY OF COLETTE』1940、とあります。 5歳から絵を描き続けたフランソワーズさんの、初期の作品、と、カバー見返しにありますが、初期からすでにして、このように愛らしくチャーミングで、完成度の高いイラストをお描きになっていたのですね!
表紙からもお分かりの通り、使用されている色は、緑、赤、黄色、黒、灰色、白。 細い筆で無邪気に、かつ的確にとらえた輪郭線は、赤色や緑色など、とても楽しいにぎやかなバランスで、色数以上に豊かな色彩に思えてしまうほど。
そして、これだけ愛らしくデフォルメされた女の子や動物たちでありながら、媚びたところをまったく感じさせないところがさすが。 子どもの落書きのようにのびのびと無邪気でありながら、子どもには決してかけないバランスのよさ、大人にはなかなか描けない素直な大胆さが、読み手の子どもも大人の心もとらえて、とろけさせてしまいそうです。
あっさりした筆の輪郭線のやわらかいイラストが、アイシングで絵を描いて焼き上げた素朴なクッキーのようで、マジパンで作ったお菓子のようで、何だかとても美味しそう。
物語も、クッキーのようにとても素直で甘くて、ほのぼのと手作りの素朴さと、焼きたての温かさをほんのり感じる、やさしいお話。
ちいさなきいろいおうちに、ひとりですんでいたコレットちゃんは、なんだかさびしくなってきたあるひ、 「わたし、どうぶつたちのおかあさんになるの」 ときめました。
まずさいしょにことりのおかあさんになりました。ことりたちはやさしいコレットおかあさんがだいすきでした。 それから、こねこのおかあさんになりました。こねこもコレットおかあさんがだいすきでした。 そして、こいぬ、うさぎ・・・。 大切にお世話をしてあげるコレットちゃんは、たくさんの生き物に愛されるおかあさんになりました。
ところが、動物たちはどんどん増えます。 ちいさなおうちは、どこもここももういっぱいになってしまって、コレットちゃんはとほうにくれてしまいました。 ・・・。
3姉妹のままごと遊びを見ていたら、それぞれが独立した家を持つ一人暮らしの設定のごっこ遊びがしばしば出てくるので(それぞれが大人のお母さんのつもり)、コレットちゃんが一人で住んでいて、みんなのお母さんになる、というところは、ほのかな憧れと親しみがあるようです。 さらに家中のお人形とぬいぐるみに無理やり布を巻きつけて、おむつの赤ちゃん役にしてしまう3姉妹には、コレットちゃんのほほえましい活躍ぶりがとても身近で興味深いもののよう。
素直なお話の中にも、小さな女の子ならではの夢と憧れがよくとらえられていて、読後とてもやさしい気持になれる、とびきりの愛らしい絵本。 フランソワーズさんの作品は、自分も小さな女の子に戻った気持になるような、赤ちゃんのふくふくのほっぺをながめているような、ゆったりとした気持になれるところがとても好みなのですが、この絵本で、またまた宝物が1冊増えました。
いえ、さらに、もう一冊!
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『ねずみのちょびちょびサーカスのスターになる』徳間書店
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『ねずみの ちょびちょび サーカスの スターになる』 フランソワーズ・セニョーボさく・え ないとうりえこやく 徳間書店 2005年
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ちいさなすてきなおうちにうまれた、かわいいねずみのちょびちょびは、子だくさんのおかあさんに楽をさせてあげたくて、ある日、サーカスの団長さんに頼みました。 「わたしのげいをみてください!」
そうして、いまこそだいじなときとこころをきめて、げんきいっぱいはねあがり、ゆうがにまいおどってみせました。
こうして、サーカスの一員になったちょびちょびは、いろいろな芸でサーカスの人気者になって・・・。
小さなちょびちょびが、がんばって大きな夢をかなえる、いっしょうけんめいが愛らしい無垢な絵本。
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原書は『SMALL-TROT』1952、とあります。 上記『コレットちゃんはおかあさん』から12年後の作品は、彩色にやわらかな桃色と水色が加わって、黄色のふちどりが効果的な、『まりーちゃんとひつじ』(岩波書店)などでおなじみのフランソワーズさんならではの画風です。
でも、基本をつらぬく物語の愛らしさ、筆遣いのぬくもりややさしさは、まったく変わらず、フランソワーズさんの全邦訳作品を通して息づいている、という感じです。 誰が見てもひと目でそれと分かり、にっこりとほほえまずにはいられない特徴的なフランソワーズさんのイラストは、甘い甘いとっておきの砂糖菓子のよう。3時のおやつのように、子どもたちとくりかえし一緒に楽しんだり、心が疲れたときにもそっと一口、キャラメルをとかすように、自分のために時間をかけてながめたり。ゆっくりと心地よい甘さが広がって、やさしい気持ちで満たされてゆくのがわかります。
子沢山で女手一つで苦労しているお母さんに楽をさせてあげたいと願うやさしさ、あこがれのサーカスに入ろうと、ここ一番でがんばる強さ、大好きなものを大切にやりとおすひたむきさ、変わらないちょびちょびの無垢な素直さは、ほのぼのと心まで桃色に染めてくれるようです。
たぶん、フランソワーズさんの作品の中でも、かなり貴重な絵本たちなのではないかと思いますので(古本でも、あまり見たことがないですよね?)、今回の2冊を初邦訳・出版してくださった徳間書店さんに熱い感謝をささげたいと思います!
よろしければ図書館などでごらんになってくださいね。
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『ありがとう のえほん』
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フランソワーズさく なかがわちひろやく 偕成社 2005年10月 |
「ありがとうのえほん」。 新しい一日のはじまり、おこしてくれたおんどりにありがとう。 あさごはんのゆでたまご、生んでくれためんどりにありがとう。 ぽかぽか心も照らしてくれる、おひさまにありがとう。
クリスマス・クッキーのアイシングのように美味しそうでさえある、温かな色使い、筆遣い、丸みをおびてやわらかく、はっきりとわかりやすい形、心の満たされた幼児が夢中で描く絵のように、どの人物の顔もはっきりにっこりほほえんでいて、眺めるだけでこちらの心もぽかぽか満たされる感じです。
原書は『The Thank-you Book』1947とあります。
日々のささやかな一つ一つにもありがとうをささげる、やさしい気持、敬虔な気持、透明な気持が、ほんのり心を包んでいく絵本。
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本当に、ありがとうです。こんな可憐な絵本を作ってくださったフランソワーズさん(1897-1961)にありがとう。出版社のみなさまにありがとう。
ちなみにこのシリーズは、 「時代的、宗教的な背景をもったテキストを、現代の日本の子どもたちにもわかりやすく、心楽しく感じられるように工夫した訳出になっている」 そうです。(シリーズの絵本カバーの裏表紙見返しの訳者中川千尋さんの紹介欄より)
日本の生活習慣とは少し異なる部分もあるものの、海外の子どもたちの、素朴で健康で生き生きとした日常に、すうっと素直にとけこんで楽しむことのできる、すばらしい絵本に仕上がっていると思います。 訳者さま版元の関係者のみなさまに本当にありがとう。
日々のささやかな一つ一つにもありがとうの気持をもつことの心地よさを、やさしく示してくれるような、心の明るくなる1冊。
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『おおきくなったら なにになる?』 フランソワーズさく なかがわちひろやく 偕成社 2005年10月
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「おおきくなったらなにになりたい? なにしたい?」 船乗り、探検家? おうちの近くで、ペット屋さん、帽子屋さんもいいね。 それとも写真屋さん?サーカスなんてどう? ・・・ひとつひとつ丁寧にいつくしんで描かれた金平糖のような愛らしいイラストが、小さな子どもたちの夢を大きく綿菓子のようにふくらませるお手伝いをしてくれます。 うんと外の大きな世界でのびのびはばたいてみたい人も、おうちの近くの世界であれこれあこがれを試してみたい人も、みんなみんなここにおいで。
原書は『What do you want to be?』1957 とあります。
無邪気な天使のおしゃべりのような愛らしいテキストに、無邪気な天使の舞い姿のような無垢なイラスト、大好きな砂糖菓子が心で甘くとけていくように、至福の時をくれる1冊。
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『わたしのすきなもの』 フランソワーズさく なかがわちひろやく 偕成社 2005年10月
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「わたしいきものがすき」 どんな姿の生き物も、みんなだいすき。 むかしからずっと続いてきた命をありがとう。
わたしのまわりのものたち、おうち、たべもの、なつやすみ、ピクニック、クリスマス、みんなみんなだいすき。
「ほらね、わたしすきなものがいっぱいあるの」 敬虔な気持にも、ほほえましい気持にも、喜ばしい気持にもなれる、心が素直になる絵本。 だいすき!
原書は『The things I like』1960 とあります。
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「わたしのすきなもの」。
フランソワーズさんのカラーのページの色使いのやわらかさ、ピンクと黄色の挿し色、一つ一つの色の選び方と全体のまとまりは、もう本当に「わたしのすきなもの」なのですが、かっちりと交互にさしはさまれる単色のページもまたこれ大好き。 筆の濃淡と、一色の挿し色だけで、どうしてこんなに心が安らぐ深い世界になるのでしょう。楽しかった思い出をとどめるように、際立った色の部分だけが残り、あとはゆっくりと色褪せて記憶の底にとけていく、そんなセピア色の写真を見ているようです。
ちなみに、このシリーズは、 「著作権者に了解を得て、原書から直接スキャニングし、製版して作製したものです」 とあります(シリーズの奥付より)。 専門的なことはよくわかりませんが、とても貴重なもののようですね! 邦訳版を見るかぎり、用いられている紙の質もしっとりとした手触りのもので、そのせいかフランソワーズさんの淡い筆のタッチもとてもみずみずしく感じられます。月日を重ねるごとに、この邦訳の絵本たちも、とてもいい感じに落ち着いていきそうな感じです。 だいすき!
なんと感涙のこの3冊、なかなか海外の洋古書などでも、見当たらないレアな本だと思うのですよ・・・とはいえ、最近は、フランソワーズさんに対する再評価が高まっているそうで、つぎつぎと嬉しい復刊の運びになっているようです。
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フランソワーズさんの最近復刊された洋書たち 版元はOmnibus Pub
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アマゾンの洋書から集めてみました。画像を眺めているだけで幸せ。最近の洋書を2冊ほど購入したのですが、その本文の紙の質はつるつる系(アート紙というのでしょうか、専門用語がわからなくてごめんなさい)。個人的には、邦訳の画用紙系の方がちょびっと好きです。
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『こねこのミヌー』 フランソワーズさく きしだえりこやく のら書店 2006年
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パリにすむ小さな女の子ネネットが、いなくなったこねこのミヌーを探して、町中をたずねる物語。 子どもの心にふんわり広がる甘い色彩と形で、パリの町と人々がやさしく描かれ、小さなネネットの不安と期待が、あたたかなまなざしで描かれています。
ミヌーはどこにいってしまったの・・・。
描かれていない再会の場面を思い浮かべると、ほのぼのとぬくもりにつつまれ、心がにっこりするような愛らしい粋な絵本。
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嬉しい! フランソワーズさんの絵本が、また一冊、手にとって、つくづくと眺めることのできる、てざわりもやさしい温かな絵本になりました。
パリにすんでいるちいさなおんなのこ、ネネットの大切な白いこねこが、いなくなってしまいました! ミヌー!ミヌー! ネネットはあっちこっちをさがしています。
レストランでたずねます。 「ねえ、おしえて。わたしのこねこ、ここにこなかったかしら。」 魚売りのおばさんにもたずねます。 それから、新聞売りのおばさんにも、道路掃除のおじさんにも・・・。
でも、ミヌーは、いません。 次の日、ネネットは橋の下のおじさんにたずねました。 すると・・・。
春の花のようにあたたかで可憐な色、ときおり、穏やかな光のような黄色の輪郭線をまとって、まろやかにうかびあがる形・・・。こじんまりとした愛らしいイラストから、逆に夢一杯のしあわせがあふれだしてきそうです。眺めているだけで、ほのぼのと心に喜びが満ちてくるよう。子どもが思い描く風景を、そのまま形にあらわしてくれたような、親しみやすくてのびやかな絵。 大好き。
いなくなったこねこのミヌーを探す素直で愛らしい物語は、小さなネネットの不安で心配な気持ちを思うと、読みながら一緒にはらはらどきどきしてしまいます。 やさしそうなおじさん、おばさんの、誰かが何か知っていたらいいのに。 でも、町の人々は何も知らなくて、それぞれの仕事に一生懸命。 ミヌーはいったいどこなの・・・。
「くびにあおいリボンをむすんだ、わたしのちいさいしろいねこ、みなかった?」
ネネットが眠れぬ夜を明かし、次の日最後にたずねたのは、橋の下にいるおじさん。おじさんは残念そうに言いました・・・。
いなくなったミヌーの、首の青いリボンに注目して、絵本を読んでみてくださいね。 ひょっこりとミヌーに会えた時のネネットの喜びを想像すると、こちらの心まで胸が一杯になってしまいます。 どこにもいなくなったミヌー。 どこかにいってしまったミヌー。 どこかにたびだってしまったの・・・? でも、ええ、きっと、ミヌーはまたもどってきますよね!
原書は『MINOU』、コピーライトは1962年とあります。 アマゾン洋書ではこちら。↓
品切れのようですので、邦訳出版は、本当に貴重な一冊ですよね。関係者の方々に心からのありがとうをささげます。嬉しい!
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