『ブッレブッセとまほうのもり』徳間書店 品切れ

『ブッレブッセとまほうのもり』
シールス・グラネール文
ルイス・モー絵
やまのうちきよこ訳
徳間書店
1998年
現在品切れ

今日はブッレブッセの5歳のお誕生日。家族みんなから、新しい洋服や靴をもらって、ぴかぴかの装いで、元気よく森にいってきまーす!

「こんにちは、ブッレブッセ。あら、いいわね、その洋服・・・」
ところが、出会う先々の動物たちがみな、ブッレブッセの服をほめて、ほしがります。
「いいよ、ぼくはなくてもだいじょうぶ!」
最初のうちは気前よく、どんどんあげていたブッレブッセでしたが、だんだん裸になるにつれ・・・。

たたみかけるような楽しい繰り返しの果てなし話と、しっとりとしたシックな色彩の格調高いイラストで、大人も子どもも魅了する、美しいノルウェーの傑作古典絵本。
大好き!

原書は『Burre-Busse i Trollskogen』、コピーライトは1994年Louis Moe's heirs. Det norske Samlaget,Norway、とあります。この絵本はノルウェーの古典的傑作絵本だそうで、もともと約100年前に出版されたものだそうです。

テキストの作者、シールス・グラネールさん(1870-1937)は、教師などでもあり、「ブッレ・ブッセとまほうのもり」を1908年に書いて人気を博し、続けてブッレ・ブッセ・シリーズをお書きになったそうです(ぜひとも読んでみたいのですが、出版社サマ!)。

イラストの作者、ルイス・モーさん(1859-1945)は、自然描写の確かさ、動物の擬人化の上手さで知られる、当時の挿し絵画家の第一人者で、北欧、ドイツ、アメリカなどで広く知られているそうです。
かつて丸善ブックメイツが、1991年に「世界の絵本」として洋書70冊セットで特別販売した、豪華きわまりない丸善ソンリーサ・シリーズという絵本セットがあったようなのですが、その中の一冊に、ノルウェーの絵本として、ルイス・モーさんの作品、
Festen hos Skogkongen(森の王様のパーティー)
が、紹介されていたようです(ぜひともこちらの邦訳出版も・・・出版社サマ!)

て、『ブッレ・ブッセとまほうのもりオンライン書店ビーケーワン:ブッレブッセとまほうのもりです。

「ブッレ・ブッセ」という、一風変わった名前も気になりますが、加えて「まほう」、「もり」という、わくわくのキーワードのタイトルも、本棚で背表紙を見た瞬間、目と心を射抜かれてしまいます。

さらに手にとって、少し抑えた渋い色味の、シックでクラシカルな色彩と、美しくおごそかな雰囲気の、確かな描写の表紙をながめただけで、
「これは・・・!」
という、何だかかなり上質の予感にうちふるえます。

果たして、オオモノでした!それもきわめて。

おはなしのはじまりは、ブッレブッセの5さいの誕生日。
ブッレブッセは可愛い男の子で、お誕生日のお祝いに、とうさんかあさんから、新しいぼうしと新しい上着とあたらしいシャツと・・・、とにかく、上から下まで、真新しい素敵なお洋服でぴかぴかになります。
ほら、みてください(品切れですので、図書館などで・・・ね)。

このとびきりお洒落な格好で、ブッレブッセはもりにブルーベリーをつみにいくことにします。
ねえさんがあたらしいかごをプレゼントしてくれて、いぬたちもみんな
「いってらっしゃい!」
これで用意は完璧です。

あ出発。
元気よく歩いていくと、カラスの奥さんに会いました。
「こんにちは、ブッレブッセ。あら、そのかご、いいわね・・・」
レンガ色のネッカチーフに、灰色の格子縞のショールをはおり、くつをはいたカラスの奥さんが、ブッレブッセの新しいかごに早速目をつけます。
そんなかごがちょうどほしかったの、と、ためいきをつくカラスのおくさんに、ブッレブッセは、なんとあっさりと、
「いいよ、ぼくはなくても、だいじょうぶ」
と、あげてしまうのです!

この、カラスをはじめとする、森で出会う動物たちのそれぞれの特徴づけにそぐったお召し物や、小道具や、表情や振る舞いなどの擬人化の手腕が、とても鮮やかでお見事で、冴えわたっていますので要注目。
国もタッチも時代も少し異なりますが、ロシアのエブゲーニー・ラチョフさんの、民族衣装を着た動物たちに通ずる、なんともいえない温かみと巧みなユーモアがあるように思います。

そして、カラスの奥さんに気前よくかごをあげたブッレブッセが、さらにどんどん歩いてゆくと、今度はリスに会いました・・・。

という、繰り返しの楽しい果て無しはなし。

横長の絵本で、左側にモノクロの線画の動物たちの楽しげに遊ぶ挿絵、右側にシックなカラーのイラストと、その下に短くて愉快なテキストが、美しくおさめられている豪華な絵本です。
3-4歳からの読み聞かせにもぴったりで、3姉妹もハハもかなりとびきりお気に入り。

どんどん主人公が進みながら、出会った人たちにつぎつぎと持ち物を与えてゆくモチーフは、グリム童話の「星の銀貨」などにもありますし、反対にどんどん剥ぎ取られていくモチーフは、つい先日復刊したばかりのあの名作、『ちびくろさんぼ』(瑞雲舎)オンライン書店ビーケーワン:ちびくろ・さんぼなどにもあります。

この『ブッレブッセのまほうのもり』には、そのどちらの面白さも醍醐味もある感じ!ですので、ぜひその驚き・どきどき・ときめきの粋なラストを、図書館などで親子でお楽しみになってくださいね。

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