■ベニ・モントレソールさんの絵本

1926-2001。イタリア生まれ。舞台美術家出身。1965年『ともだちつれてよろしいですか』でコールデコット賞を受賞。作品多数。
『クリスマス・イブ』*『ともだちつれてよろしいですか』*洋書*『I Saw a Ship A-Sailing』*『Little Red Riding Hood』*『The Nightingale』

 
『クリスマス・イブ』ほるぷ出版

『クリスマス・イブ』
マーガレット・ワイズ・ブラウンぶん
ベニ・モントレソールえ
やがわすみこやく
ほるぷ出版
1976年
2003年復刊

クリスマス・イブ。ねむれない子どもたちが、そっとベッドを抜け出して階下で見たものは・・・。

子どもたちが見上げ、感じ取ったすべてを、少ない色使いで浮かび上がらせた美しいイラスト。聞いた歌声さえも、聞こえない静けさまでも、簡潔な言葉で美しくつむいだテキスト。
聖なる夜に心打たれた子どもたちの静かな物語が、読み手の心をしみじみと打つクリスマス絵本。

オンライン書店ビーケーワン:クリスマス・イブ

待ちに待ったクリスマス・イブ。
しんしんと雪が降り、みんなが寝静まったしずかな夜・・・4人の子どもたち以外は。
「ねむるまえにしたへいって、クリスマス・ツリーにさわって、おねがいごとをしよう」
眠れない子どもたちは、そうっと着替えをして、息をひそめて両親の部屋の前を通り、足音をたてないように階段をおりていきました。

そして、4人の子どもたちは見たのです。暖炉の残り火にきらめく、みごとなクリスマス・ツリーを。たくさんのおくりものを。
そして聞いたのです。雪のように静かにふってくる、大人たちの歌う聖なる歌を・・・。

「マーガレット・ワイズ・ブラウンの遺作に、イタリアの舞台美術家出身のベニ・モントレソールが絵をつけた、静かで美しいクリスマスの絵本。」
と、あります。
(『クリスマス・イブ』ほるぷ出版 表紙カバー見返し より)
1976年初版の嬉しい復刊。

クリスマス・イブの聖なる夜の、祈りに満ちた清らかな静けさ。特別な夜に心が浮き立ち、ほほえましい冒険へとベッドを抜け出た子どもたちは、大いなる夜に心を打たれ、話すことも、動くこともできませんでした。

オレンジ色の地に、温かみのある線画。かすれた輪郭が、暖炉に暖められた空気のように、ゆっくりとたちのぼっていくよう。あるいは、ぱちぱちと静かにはぜる暖炉の炎を見ているよう。
ふりしきる雪を描いた、軽やかで、流れるような線の集まりが、清らかな歌声の合唱のように心に響きます。
少ないけれど、効果的な色・・・黄色、ピンク色がさしこまれているのは、子どもたちが、抜き足差し足で階下におりる場面から。高揚感を抱えた4人の子どもたちが、息をのんで見た景色がまぶしくおごそかに描かれていて、まるで読み手も隣で一緒に目撃しているかのようです。
白ではない、オレンジ色の地が、神聖な特別の夜のとばりをそっとかぶせているよう。

原書は『ON CHRISTMAS EVE』、テキストのコピーライトは、1938 and 1965 by Roberta B. Rauch.
イラストのコピーライトは1961 by Beni Montresor とあります。
アマゾン洋書で検索すると、異なる画家の作品が見つかりました。↓

On Christmas Eve (ハードカバー)』
Nancy Edwards Calder イラスト
Harpercollins Childrens Books
(1996/10)

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『ともだちつれてよろしいですか』童話館出版

『ともだちつれて
よろしいですか』

ビアトリス・シェンク・ドゥ・レニアぶん
ベニ・モントレソールえ
わたなべしげおやく
童話館出版 
2003年復刊

日曜日から一週間、おうさまとおきさきさまが、毎日ぼくをご招待してくれました。ぼくは二人にたずねます。
「ともだちつれてよろしいですか」
「わたしのともだちのともだちなら、だいかんげいじゃ」
そこでぼくは毎日違う楽しい友達を連れて、二人をたずねていきました。

ちょっとずつ趣向を変えながらの楽しい繰り返しを重ねた、わらべ歌のような不思議な古典絵本。

オンライン書店ビーケーワン:ともだちつれてよろしいですか

おうさまとおきさまさまが
にちようびのおちゃに
ぼくをごしょうたい
してくださいました。

ぼくはおきさきさまにききました。
おきさきさまはおうさまにききました。
「ともだちつれて
よろしいですか。」

おうさまがおきさきさまにいいました。
「いいともいいとも、
わたしたちのともだちのともだちなら
だいかんげいじゃ」

そこでぼくはともだちつれて・・・

日曜日から土曜日まで毎日、おうさまとおきさきさまのご招待を受けたぼくが、友達を連れていってもよろしいですか、と、お伺いを立てて、毎日違う友達といっしょに遊びに行く物語。
(まったく余談ですが、この絵本の中の、おうさまとおきさきさま、月曜日から毎日、ぼく、というキーワードの古典絵本で、個人的に思い出す大好きな絵本は、『あるげつようびのあさ』(徳間書店)オンライン書店ビーケーワン:あるげつようびのあさ。)

ベニ・モントレソールさんの、独特の影とかすれを持つ美しい線画が、淡々と、ナンセンスともいえる楽しいお茶会、食事会を描いています。
白黒とカラーの交互の構成もクラシカル。
カラーのページの、ピンク・オレンジ系の色調に統一した、明快で味わい深いイラストが、華やかさと晴れやかさに、古風で優雅な雰囲気を添えています。
子どもの喜ぶ丁寧な繰り返しに、大好きな動物たちの華やかな登場、だんだんにぎやかに高まっていく展開と、楽しくて不思議なわらべうたのような、古典的絵本。
ともだちつれてよろしいですか』(富山房、1974、品切れ)の再刊だそうです。祝・復刊!

原書は『May I Bring a Friend?』1964 とあります。1965年コールデコット賞受賞。
アマゾン洋書ではこちらなど。↓

『May I
Bring a Friend?
(ペーパーバック)』
Aladdin Paperbacks;
Reprint版
(1989/08)

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 ベニ・モントレソールさんの洋書絵本を検索すると、こちらなど。↓

『Hansel
and
Gretel
(ハードカバー)』Atheneum
(2001/09)

これは『クリスマス・イブ』『ともだちつれてよろしいですか』などの絵とはタッチの異なる、影絵絵本のようです。

その他、
1961 Belling the Tiger
1963 Old Neapolitan Fairy Tales
1963 Witches of Venice
1967 CINDERELLA: FROM THE OPERA BY GIOACCHINO ROSSINI.
1967 I Saw a Ship A-Sailing or the Wonderful Games That Only Little flower-Plant Children Can Play
1968 Willy O'Dwyer Jumped in the Fire 』(De Regniers, Beatrice Schenk 、ビアトリス・シェンク・ドゥ・レニア)
1969 A FOR ANGEL』(ABC絵本)
1982 The Birthday of the Infanta: And Other Tales
1985 The Nightingale
1991 Little Red Riding Hood
などなど、魅力的な多数の絵本を手がけているようです。
amazon.comで検索すると≫こちら

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『I Saw a Ship A-Sailing』
・A Picture Book With mother Goose Rhymes・

Beni Montresol
1969
Collins Clear-Type Press:
London and Glasgow

『I Saw a Ship A-Sailing』
・A Picture Book
With
mother Goose Rhymes・

図書館で借りた紅色の表紙のハードカバー版を見ると、コピーライトは、
1967 by Beni Montresol
とあります。

中表紙には、
I Saw a Ship A-Sailing
OR THE WONDERFUL GAMES THAT
ONLY LITTLE FLOWER-PLANT CHILDREN CAN PLAY
AS SHOWN BY
BENI MONTRESOL
とあります。

本文前書きを読むと、どうやら『The Witches of Venice』の続編ではないかと思われます。その結末で、鳩の形の木の船に乗って輝かしいベニスの空を飛んだ、主人公の二人の花の子どもたちが、『I Saw a Ship A-Sailing』で、続けて活躍するお話を描いた絵本だと思われます。

テキストは数行の短いライムで、マザーグースに基づいているようです。
ハンプティ・ダンプティが出てきたり、10人の子どもがひしめくくつの家のおばあさんがでてきたり・・・。
どのページにも、二人の可愛い子どもたちが出てきて、はしごをのぼったり、気球に乗ったり、なわとびをしたり、ライムの世界でちゃっかり大活躍しています。例の鳩の飛行船に乗っている場面もみられます。

朱色を基調とした、かすれた線のどこか版画のような絵は、何色刷りなのでしょう?重ね刷りしている部分もあわせると、朱色、ピンク色、赤紫色、紫色、水色、草色、茶色・・・と、全体的に渋め。黒色を用いず、テキストも朱色。茶色はどこか金色にも見えて、豪華で華やかな雰囲気。
あまり多くの色を用いられてはいないのですが、独特のコクのある豊かな世界が広がっていて、とてもとても魅力的。

ベニ・モントレソールさんの描くマザーグースの楽しい世界を、贅沢なレイアウトでたっぷりと。
表紙カバー裏見返しには、著者の顔写真も載せられていました。ハンサム!
The Witches of Venice』とともに、探してみようと決意した一冊でした(もちろんカバーつきのものをネ)。

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 『Little Red Riding Hood』

 『Little Red Riding Hood』
Beni Montesor
The original story
by Charles Perrault
With an introduction
by Luciano Pavarotti
Translated from the French
by George Martin
Doubleday a division of
Bantam Dell
Publishing Group,Inc
1991

図書館で借りたのは、ハードカバー版の一冊。
シャルル・ペローの「赤ずきんちゃん」のお話だから、多少シドロモドロでも大丈夫・・・と思ったら、結末で宙に放り投げられたような衝撃。
繊細な線と点描をちりばめた美しい絵は、アンティークな銅版画のよう。さまざまな淡い澄んだ色をほどこされた背景の木々や部屋のカーテンは、オーロラのような荘厳な雰囲気。赤いフードにコート姿の、ビスク・ドールのように端整で美しい赤ずきんちゃんに、きっちりと白いダブルのスーツとステッキとぼうしでめかしこんだオオカミは、一見紳士淑女とも見える感じで、まるでどこかの劇場の舞台の一幕を見ているようです。
その丹念な美しさゆえに・・・結末に向かう文字のない数ページは、本当に、深い深い血肉の闇の中に吸い込まれてゆきそうになりました。
他の「赤ずきんちゃん」の絵本などで、オオカミのおなかの中から助け出された赤ずきんちゃんが、
「ああこわかった。オオカミのおなかのなかって、本当に真っ暗なんですもの」
と言う場面がありますが、まさにまざまざと、この台詞をあらゆる角度から思い浮かべてしまう絵本。

美しい烙印のように心に焼きつく絵本ですが、どこか曖昧であっけない幕切れは、読み手にゆだねられていて、少し大きい子向きかも。

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『The Nightingale』

Hans Christian Andersen 
『The Nightingale』
Illustrated by beni Montresor
adapted by Alan Benjamin
Crown Publishers,.
Inc.New York
1985

図書館で借りたのはハードカバーの一冊。
1985年に出版されたこの絵本のベニ・モントレソールさんの絵は、鉛筆画に水彩でしょうか、パステル画でしょうか、やわらかな線画とやわらかな色彩が、プリズムのような光彩をはなち、しっとりと神秘的な雰囲気をかもし出しています。
アンデルセン童話の「ナイチンゲール」を描いた絵本には、その画家の憧れと魂が込められているような、情熱的で美しい作品が多いと思いますが、ベニ・モントレソールさんの描くこの絵本も、まさに冴え冴えと美しい一冊。
はるか古代から脈々と続く中国の歴史への畏怖と憧憬、東西問わず同様に揺れ動く人々の心の綾を、幾重にも光のヴェールを重ねたような幻想的な絵で静かにあぶりだした、珠玉の絵本。

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