■ベイチ・アク(べヒッチ・アク)さんの絵本

Behic Ak  1956年、トルコ・サムソン生まれ。絵本作家。建築を学ぶが、漫画家になった。10年間、トルコで一番古い新聞「ジムフーリエット」紙に漫画を連載。イスタンブール在住。
(『めがねをかけたドラゴン』福音館書店 別紙おりこみふろく 著者紹介 参照)

他の邦訳作品には、『高血圧のプラタナス』蝸牛社(べヒッチ・アック)、学研ワールド絵本に『ごろにゃんサーカスだん』(1997)、『ぞうのジャンボ』(1995)、『ふしぎなくも』(1989)、『かぜに のる まち (自然に逆らわずに暮らすお話)』(1997)、などがある。建築家としての活躍の紹介が、『10+1〈No.22〉特集 建築2001―40のナビゲーション』(INAX出版)のトルコのページに掲載されているようです。

『めがねをかけたドラゴン』*『ぞうのジャンボ』*『ごろにゃんサーカスだん』

 
『めがねをかけたドラゴン』福音館書店 品切れ

めがねをかけたドラゴン

↑ビーケーワン

『めがねをかけたドラゴン』
ベイチ・アク作
三村美智子訳
福音館書店
こどものとも年中向き
通巻108号
1995年3月号
品切れ

あまりよく見えないとわかったドラゴンが、虹のむこうの町で、めがねをつくってもらう楽しいお話。鮮やかで華やかな色で描かれたユーモラスなイラストと、おおらかで夢の広がるテキストが、新鮮な風を運んでくるよう。
ドラゴンたちの平和がいつまでもつづきますように。

おおきなにじのむこうにドラゴンのすむもりがありました。
ドラゴンたちはおなかがすくと、じめんにひっくりかえり、くちをおおきくあけ、うれたみがおちてくるのをまってたべました。
でも、どうしてもくだものがくちにはいらず、じょうずにたべられないドラゴンがいました。目が悪くて、くだものがよく見えないのです。
虹の向こうの国に行けば、めがねをつくるひとがいるかもしれないと、おじいちゃんや目医者さんに教えてもらったドラゴンは・・・。

めがねをさがして、虹のむこうの、人間の住んでいる町をはるばるたずねた、愉快なドラゴンの物語。
人間の住む町へ行く方法も夢と花がいっぱい。そらとぶおばあちゃんや子どもたちが住むどこか不思議な町も、花がいっぱいさきほこり、美しいメルヘンをかなでています。
斑点もようのドラゴンの黄緑色や、家並みの淡い青緑色、花やおばあちゃんの洋服の紫がかったピンク色が、明るく澄んでいて、本当にきれい。華やいだ美しさが、まだ見ぬトルコの地のあこがれをかきたてます。
別紙の折込付録の、訳者の三村美智子さんによる解説「トルコ的なもの」も、とても参考になりました。この絵本の中にさりげなく出てくる月や星・ハートなどのモチーフにも、町の風景にも、美しく彩る花々にも、トルコ的なものがいっぱいちりばめられているそうです。
大好きなドラゴンの絵本としても、ドラゴンのかもしだす伝統の迫力や神秘性を守りながら、人間との人情あふれる温かい交流を描いているところが嬉しい!
ドラゴンの愛らしさが、ユーモアたっぷりの軽やかな画風の中ににじみでていて、さわやかな余韻。

余談ですが、個人的にいちばん好きなところは、物語最初の、ドラゴンのなごやかな食生活風景を描いたところ。くだものが熟して自ら落ちてくるのを、その木の下にあおむけに寝てひたすら口を開けて待つなんて、のどかで、平和で(だってだれも傷つけないのですから)、イラストを見ただけでにっこりしてしまいます。つぶらな瞳の生まれたての赤ちゃんが、あーあーと口を開けて、空を仰いでいるみたい。
その中で、ひとり、なかなかくだものが口にはいらないドラゴンがいるという設定も新鮮ですが、そのわけが、よく見えていないから→めがねをつくる、という展開も、とてもわくわくとときめいてしまいました。

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『ぞうのジャンボ』学研 品切れ

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『ぞうのジャンボ』
作/絵 べヒッチ・アク
文 青木久子
学研ワールドえほん
1995年2月号
通巻275号
品切れ

高いビルと自動車がいっぱいで、動物がみんな逃げ出してしまったさわがしい町に、ぞうのジャンボたちのサーカスがやってきました。はじめてみる動物たちにみんな大喜び。
ところがジャンボには、夜明けに眠ったまま歩きまわるくせがあって・・・。

軽やかな明るい色彩でリズミカルに描かれた楽しい寓話。都会の人々が忘れかけていた大切なものを、ジャンボが思い出させてくれました。

ここは、トルコのおおきなまち。
たかいビルがたくさんたっていて、みちもじどうしゃもいっぱいです。
自動車の音があんまりうるさいので、町はどんどん騒がしくなり、動物はいっせいに逃げ出しました。
あるひ、このまちにサーカスがやってきました。子どもたちにとってはじめてみる動物でした。
なかでも、にんきものは、つなわたりするぞうのジャンボで・・・。

巨体のぞうが、つなわたりをするなんて!
さらに、もっとびっくり、ねぼけてビルまでわたってしまうんです。
奇想天外な楽しさと、風刺の効いたユーモアで、軽快に描かれた楽しい絵本。ひょいひょいとテンポよく進む物語と、登場人物たちのまんまるい目と存在感のある鼻のユーモラスな表情が痛快。
高いビルにたくさんの自動車の騒がしい町・・・とくれば、あの町やらこの町やら、おもいあたる場所が近くにもいろいろあったりして、さわやかな色彩のトルコの絵本とはいえ、人事ではないような感じがしますよね。
けれど町がそんなふうに騒がしくなってしまっても、ジャンボを思いやる町の人々の人情の温かさがまだ存分に残っていて、読後はとてもほのぼのとした余韻です。
黄色や、黄緑色、赤紫、紫色などの明るく澄んだ色彩が、ユーモラスなタッチにとけこんで、印象的。

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『ごろにゃんサーカスだん』学研ワールド絵本 品切れ

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『ごろにゃんサーカスだん』
作/絵 べヒッチ・アク
文 面谷哲郎
学研ワールド絵本
1997年2月号
通巻299号(ペーパーバック)
現在品切れ

小さな島は、夏が終わると家もお店もからっぽになり、ねこたちだけが残されます。えさも手に入らなくなった寒い冬の日、これからどうすればいいか、ねこたちはみんなで相談して、人間みたいに働くことにしました。ねこたちのサーカスをやって、人間たちに見てもらうのです。

身の軽いねこに、サーカスはぴったり!
軽やかで華やかな色彩のユーモラスなイラストが、がんばるねこたちをにぎやかに描いて、盛り上げます。

なつのあいだだけにぎやかになる、ちいさなしまがありました。
つりをしたり、おひるねしたり、島にいるたくさんのかわいいねこたちと遊んだり。
やがて夏が終わると、人々はねこを残して帰ります。
そして冬、島中凍るほど寒い日、毎日船でえさを運んでいたやさしいおばあさんも、来られなくなってしまいました。
「どうしたらいいかにゃー・・・」
みんなであれこれ考えた結果
「にんげんみたいに、はたらこうよ。」
「みんなでサーカスをやろう。」
・・・

けなげでユーモラスで、前向きで、義理堅いねこたちの、明るいごろにゃんサーカス団の物語。
ねこちゃんたち、本当に人々に愛され親しまれているのでしょうね!
身軽で優雅でしなやかなねこちゃんですもの、本気でサーカス団を結成したら・・・と思うと、わくわくしてしまいます。そんなときめきが、軽快で華麗で鮮明な色使いのユーモラスなイラストで、ふんだんにもりこまれた楽しい絵本。
ユーモアとウィットに富み、人(?)情に厚いねこたちに。

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