|
『ちいさな曲芸師 バーナビー』 フランスに伝わるお話 バーバラ・クーニー再話 末盛千枝子訳 すえもりブックス 48p 2006年
|
フランスに伝わる「聖母マリアの曲芸師」の伝説をもとに、2度にわたるコルデコット賞受賞作家のバーバラ・クーニーさんが、新しい解釈と美しい挿絵を添えた珠玉の絵本。
自分にできるただひとつのすべてを、ただひたむきに神に捧げた小さな曲芸師・バーナビーのお話。 ひたむきな再話に添えられたひたむきな挿絵たちが、バーナビーと共鳴し、深い感動を呼ぶ絵本。
|
みなしごの小さな曲芸師、バーナビーは、芸達者で、お城でも町でも人気者。けれど寒い冬がやってくると、広場に出てくるお客も減って、バーナビーは寒さと寂しさに途方にくれるばかり。そんなバーナビーを、おいで、と、救ってくれたのは、修道院の修道士たちでした。 みなが神に仕え、それぞれの仕事にいそしみ、賛歌や詩編の祈りをささげる修道院で、曲芸以外なにもできないバーナビーは、マリアさまと神の子イエスさまのために、自分に何ができるか、泣きたくなるほど考え、そして、悟ったのです。 「ぼくにできるのは、あなたのために、最高の芸をお見せすることなんです。・・・」 バーナビーは毎晩ひっそりと、ひたむきに、小さなチャペルのマリアさまの前で踊って跳ねて見せるのでした。
クリスマス間近の日、ミサに出てこなくなったバーナビーを気にしていた修道士が、こっそり後をつけて、バーナビーの秘密を見てしまいます。 ・・・
フランスに伝わる「聖母マリアの曲芸師」の伝説をもとにしたバーバラ・クーニーさんの美しい絵本。 この絵本を描くために、バーバラ・クーニーさんは、フランスへ旅をして、伝説の元となった13世紀の写本を実際に確かめ、少年の面影を求めてあちこちを訪ね、たくさんのスケッチを行ったそうです。
そうして、出来上がった絵本の、なんと清らかで美しく、気品に満ちて輝いていること! 白と黒のきりりとひきしまった、繊細な版画のような、おごそかで、美しい挿絵たち。 どのページも、どのページも、草の葉先、石畳の影、洋服のひだにいたるまで、丹念に真心を込めて描かれ、まるで命をふきこまれているかのように鮮やか。 おくゆかしく添えられている三色の、赤、青、緑の際立つ色が、白と黒の絵に気高く共鳴し、本当に、宝石のようにきれいです。
闇と光が山河にとけあい、人々のぬくもりとやさしさが石の町に響きあう、荘厳な中世の世界に、ひととき迷い込んだような、バーバラ・クーニーさんの美しい挿絵。 静かに語り継がれ、後にオペラや歌の題材にもなった美しい伝説が、選び抜かれた再話の言葉たちも美しく、磨きぬかれた結晶のような挿絵も誇り高く、あらたな感動を刻む大切な絵本になりました。
絵本のはじめに記された、バーバラ・クーニーさんの「この本について」というメッセージも、心に残ります。
原書は『The Little Juggler』、最初のコピーライトは1961年とあります。 アマゾン洋書では、≫こちら、≫こちらなど、現在は品切れかもしれません。もしかすると邦訳はとても貴重な一冊かも(関係者の方々ありがとうございます!)。
▲上へ
『どうぶつたちのクリスマス』日本キリスト教団出版局
|
|
『どうぶつたちの クリスマス』 ノーマ・ファーバーぶん バーバラ・クーニーえ おおたあいとやく 日本キリスト教団出版局 2006年 『どうぶつたちのクリスマス』 (佑学社、1981年、品切れ)、 の復刊。
|
どうしてとうみんちゅうのいきものが、ベツレヘムにやってきたのでしょう。
明るく輝くほしが、銀の光で、眠っているいきものたちを揺り起こし、赤ちゃんイエスのもとに導くクリスマスの物語。
静かでおごそかな美しい絵で、地中にまで及ぶ尊いクリスマスを描いています。
|
むかしむかし、2000年前のある冬の夜のこと、はるか遠くに星がひとつ、大変明るく輝いて、冬の間眠っているいきものたちをつぎつぎおこしました。 ほしは銀のひかりの銀のシャベルで、銀の鍵で、銀のつえで、冬眠中のいきものたちの居心地のいいねどこを訪れてうたいます。 「ベツレヘム!」
揺り起こされた動物たちは、みんなそろってでかけました。ほしのうたに導かれながら、ベツレヘムの馬小屋のかいばおけに眠る、生まれたばかりのあかちゃんイエスさまのもとに。
・・・
地中で眠っている動物たちが、イエスさまの誕生を告げる星に導かれ、ベツレヘムに集い、祝う、静かなクリスマスの物語。3人の王も登場しています。
この絵本は、かつて佑学社より出ていたものの復刊で、絵本の大きさや、訳者などは同じですが、訳文や訳文テキストの配置の方法などが、少し新しくなっています(何度か原書も再販されているようで、それぞれの原書がどうなっているのかは残念ながら未読のため不明)。 例えば表紙画像の、右上に輝くほしですが、佑学社版(旧版)では普通のイラストですが、日本キリスト教団版(新版)では、さりげなく銀箔の型押しになっています。 さらに、イラストの中のテキストの配置ですが、旧版では、四角の枠(本文中ほどに、このレイアウトを用いたイラストがあるので、それに準じているものと思われます)の中におさめられたテキストが、イラストの上に載っている感じで、その下の部分のイラストが見えなかったのですが、新版では、イラストの上に直接テキストが印刷されている感じで、下のイラストもそのまま見ることができます(先述の本文中ほどの四角枠のイラストは、そのまま同じです)。
それから、太田愛人さんの訳文が新しくなっていて、よりリズミカルでなめらかな、美しい訳文になっているように思われます。 旧版には、牧師の太田愛人さんのあとがきの「お母さまへ」の美しい文章があって、そこには、 「・・・あらかじめ、新約聖書のマタイによる福音書1、2章とルカによる福音書1、2章を読んでおくと理解を助けてくれます。・・・聖書での"博士たち"は、ここでは王たちになっており、白人、黄人、黒人に描かれているのは、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、つまり全世界を象徴しています。・・・ここでは、神の救いが世界に及び、地中に生きる者にも及ぶということが、斬新な発想で描かれています。・・・」 とあります。 このあとがきが、新版にないことだけが残念ですが、嬉しい嬉しい、美しい復刊ですよね。
バーバラ・クーニーさんの藍色を基調としたイラストは、淡々と静かで格調高く、画面の右上で燦然と輝く星の光が照らし渡る地平線のような、ベツレヘムへの遠い道のりのような、横長の版型が、とても効果的。 小ぶりの大きさも、子どもたちの手になじみやすく、一緒にクリスマスの物語の理解を深めたり、親しんだりできそうです。
原書は『HOW THE HIBERNATORS CAME TO BETHLEHEM』Walker & Company,New York、テキストのコピーライトは1966年、イラストのコピーライトは1980年とあります。 アマゾン洋書ではこちらなど。↓
|
『How the Hibernators Came to Bethlehem (図書館)』 Walker & Co (Lib) (2006/10/17)
|
|
▲上へ
|
ぶん マーガレット・ワイズ・ブラウン え バーバラ・クーニー やく まついるりこ 童話館出版 2003年
|
『うまやのクリスマス』
|
寒い冬、いきもののあたたかな吐息に包まれ、静けさと星に見守られながら、誕生したおさなごのクリスマスの物語。
文も絵も訳も、格調高く共鳴しているような、静謐な絵本。
|
むかしむかし あたたかいうまやのなかで
うまはひくくなき ろばはたかくなく うまのあしぶみと かちくのいきがきこえる
しずかにひがおち ひるまがとじる いちばんぼしが ひときわあかるい
つかれたふたりが たどりつくゆうぐれ やどやにへやなし うまやへどうぞ
・・・
バーバラ・クーニーさんの黒を基調とした、端整で美しい絵と、マーガレット・ワイズ・ブラウンさんの簡素で美しい文章と、まついるりこさんのリズミカルな訳文の、ハーモニーのようにひとつにとけあった聖なるクリスマス絵本。
マーガレット・ワイズ・ブラウンさんの奏でるおさなごの誕生の物語が、賛美歌のように清らかに響きわたり、素朴なステンドグラスのようなバーバラ・クーニーさんの絵が、静かにページを照らし、さながら小さな境界にひざまづいているよう。
白と黒の明快で繊細な境界と、配分のバランスがきわだって美しい、バーバラ・クーニーさんの版画のようなイラストが大好きなのですが、この絵本もそんな美しい一冊。 少しくすんで、あたたかなオレンジ色、水色、赤色と、黒の4色のみの素朴で大胆な配色も好き。そのカラーのページと白黒のページが交互に編まれたかっちりと古典的な構成も、おくゆかしくて好きです。 カバーを外すとあらわれる、深紅のシンプルな表紙の装丁も好き。 クリスマスのはじまりの物語を子どもたちに伝えるとき、大切に読みたい絵本の一冊です。 おさなごの周りの人々が、どこか親しみのある装いで描かれているのも、小さい子になじみやすいかも。
『Christmas in the Barn』 Harper Collins Publishers,Inc.,New York、最初のコピーライトは、1952、とあります。
▲上へ
この記事へのコメントを読む▼*書く▼ (この記事へ戻るには、ブラウザの戻る、をクリックしてくださいね) |
▲上へ
バーバラ・クーニーさんの絵本2 「は」の絵本箱へ
HOMEへ
Copyright (c)2005-2007 kudolacieko All Rights Reserved
|