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『ドラゴン マシーン』 作/ヘレン・ウォード 絵/ウエイン・アンダースン 訳/岡田淳 BL出版 2004年
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見ようとしないから見えないドラゴン。そこにいるのに。まるで、本当の姿をちゃんと見てもらえないジョージと同じ。 ちゃんと見てあげられるのはジョージだけ。 ジョージはドラゴンマシーンをつくって、ドラゴンたちを遠いすみかに連れて行ってあげることにしました。 ・・・
本当の姿を見てもらえない孤独を抱えたジョージとドラゴンの、神秘的で美しい再生の物語。
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ある雨の木曜日から、目をこらしさえすれば、ジョージはドラゴンが見えるようになりました。 でも、だれもドラゴンに気づいていません。 きちんと見ていないからみえないのです。 気にかけていないと目にもとまらないのです、きっと。 (それって、だれもジョージのことをきちんと見てくれないし、気にもかけてくれないのに似ているかも)
でもいたずらもののドラゴンに食べ物を与え、かまっているうちに、こまったことになりました。ドラゴンのやらかすいたずらを、ジョージのせいだとみんなが思うようになったのです。 きっとそのうち、ドラゴンのことにも気づくでしょう。
なんとかしなくちゃ!
図書館で調べるうちに、ジョージはドラゴンたちのすむところの地図を見つけました。 そこへはだれかがつれていかなければなりません。 そう、ジョージが。
ジョージはドラゴンマシーンをつくって・・・
内なる世界を持つ少年とドラゴンとの神秘的な交流を描いた物語と、内側から光を放っているような幻想的なウエイン・アンダースンさんのイラストがひとつにとけあった、美しい大型絵本。 物語を語る文章のテキストと、括弧がきの中の、思わず口をついて出た独りごとのようなテキストが、輪唱のように響いて、不思議な音楽のよう。 表紙のタイトル文字の金色が、詩情豊かで誇り高い物語にふさわしい輝きを添えています。
他の人には見えないものまで、まなざしを向けるジョージ。 自分自身にはそんなまなざしを注いでもらったことのないジョージは、ジョージにしか見えないドラゴンを愛しく思い、食べ物を与え、やんちゃないたずらをかばい、危険からかくまってやろうとします。 ドラゴンがドラゴンらしくのびのびと、生きてゆける場所とは? ドラゴンのために本来の住みかを探し出す旅は、もう一つの意味を重ねているのではないかと思いました。そう、ジョージ自身の本来の住みかを探し出す内なる旅・・・。
ところで、はじめ、表紙を見たとき、この絵は何だろう、と思いませんでしたか? 何かカプセルのようなものの中に、男の子がひざをかかえるようにして横たわって目を閉じているのはわかるけれど・・・。 それは、ドラゴンマシーンの瞳の部分。 その神秘的な瞳が映し出す、小さなドラゴンをかかえて眠るジョージの姿は、まるで誕生の時を待つ胎児のよう(ドラゴンのしっぽがへその緒のようにも見えるし!)。 誰かに気づいてもらいたいジョージの姿が、そこにありのままに眠っているような気がしました。 絵本を読み終えた後に眺める表紙のイラストにも、物語が再びうかびあがってくるような、奥深い余韻が魅力的。
まるで抒情詩のような、壮大な物語が完結を見た後の、ジョージのもとの世界の小さな物語も、嬉しい嬉しいお楽しみ。ジョージと、絵本を見たあなたとわたしだけが知っているお茶目な秘密ですよね。
『ドラゴン』、そして『ドラゴンマシーン』と、個人的に私の中の神秘的なドラゴン像を、あますところなく具現化してくれたような、心のときめく絵本たち。
テキストのヘレン・ウォードさんは、 「イラストレーター、絵本作家。ブライントン美術学校で、レイモンド・ブリックス、クリス・マクユーワンなどの指導をうけ、学生時代から受賞経験を持つ。」 と、あります。 (『ドラゴンマシーン』BL出版 表紙カバー裏見返し 著者紹介 より) ウエイン・アンダースンさんとのコンビの邦訳作品には、『12月通り25番地』▼(BL出版)があります。
原書は『THE DRAGON MACHINE』Templar Publishing 2003とあります。 アマゾン洋書ではこちらなど。↓
『The Dragon Machine (ペーパーバック) 』 Puffin; Reprint版 (2005/5/5) |
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『The Dragon Machine (ペーパーバック) 』 Templar Publishing (2005/1/1)
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邦訳と表紙が異なります。本文中の一場面と同じだと思われます。
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『ドラゴン』 DRAGON ウエイン・アンダースン作 岡田淳訳 BL出版 1992年
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ぼくはなぁに? かあさんはどこ?
ひとりで生まれたぼくは、ぼくに似た生き物たちに助けられながら、ぼくの仲間を探して旅に出る・・・。
幻想的で神秘的なドラゴンの絵と、壮大な自分探しの物語がひとつになった、ドラゴン絵本の道しるべのような絵本。 ドラゴンにあこがれるすべての子どもたちに。
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ドラゴン(ビーケーワン)
そのときのこと、おぼえているわけじゃないけれど、ぼくはどこかからぽちゃんとおっこちて、ながいことじっとしていたって、そう思う・・・。 ある日はじめて外に出たぼくを見て、 「うまれたわ。うまれたわ」 うれしそうな声がむかえてくれたけれど、だれもみんな、かあさんじゃないみたい。 「ぼくはなぁに?」 「あなたがなんだかわからないけれど、きっとわたしたちと同じ魚のなかまよ。だって、ほら、わたしたちと同じように、ひれがあるもの」 ぼくはみんなに育てられて大きくなったけれど、どんどん大きくなりすぎて、ひれが小さな翼になってしまった。 −ぼく、魚のなかまじゃないみたい。
「こことはちがうところで、かあさんに会って、ぼくがなんなのか教えてもらいたいの」 魚の教えで陸地にあがったぼくが、次にであった生き物は、空を飛べるトンボ・・・。
かあさんとはぐれて、ひとりぼっちで生まれたぼくが、いろんな生き物に助けられ、教えてもらいながら、自分を探していく幻想的な物語。 『ドラゴン』というタイトルにもありますが、これぞ「ドラゴン!」とひざを打ちたくなるような、きわめつけの、とっておきのドラゴンの物語です。 ドラゴンの謎も、神秘も、メルヘンも、ファンタジーも、尊さも、気高さも、希望も、冒険も、憧れも、はかなさも、古い地図に描きこまれたような美しい絵と華麗なる物語のなかに、全部盛り込まれている贅沢さ。
蜃気楼のように、月夜の霧の中の幻のように、ひんやりとやさしく浮かび上がる幻想的なイラストが、まさにドラゴンの王道。 成長するほどに現れる自分の特徴をもとに、ひたむきに自分のルーツをもとめていくぼくの物語には、ユーモアも、スパイスもたっぷり。 ドラゴンはいろいろな動物の一部分に似ているので、それぞれの登場人物たちをたずねていくのですが・・・、最後にぼくが手がかりをもとめて飛び込んで出会った人物が、人間の読み手の私にはとても嬉しくて、わくわくしてしまいました。 二人で立ち向かう冒険の場面は爽快で、ドラゴンのモチーフの断片がすべてぴったりとつなぎ合わさるような、手ごたえのある展開と、感動的な場面に、胸が熱くなるほど。 個人的にドラゴンの絵本は大好きですが、この由緒正しきドラゴン絵本『ドラゴン』の物語も、大切な宝物の一冊になりました!
ドラゴンが、永遠に、私たちのそばにありますように・・・。
原書は『DRAGON』1992 hutchinson Children's Books, London とあります。 当時、作者のウエイン・アンダースンさんの、数年ぶりに描いた絵本だそうです。 (『ドラゴン』ブックローン出版 表紙カバー 裏見返し 著者紹介より)
アマゾン洋書ではこちらなど。↓
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『Dragon (Red Fox Picture Books) (ペーパーバック) 』 Red Fox (1994/2/17)
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邦訳と表紙が異なります。本文中の一場面と同じだと思われます。
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作/ヘレン・ウォード 絵/ウエイン・アンダースン 訳/岡田淳 BL出版 2005年
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『12月通り 25番地』
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大切な相手への贈りものをさがしているうちに、にぎやかな大通りからはじきだされた小さな女の子。 うらぶれたさみしい12月どおり25番地の、そこだけ大忙しの不思議なお店で、女の子が目にした光景は・・・。
霧のようにやわらかく、どこかはかないタッチの幻想的なイラストと、夢と憧れを守り続ける格調高いテキストで、小さな女の子と、真心のこもったクリスマスのおくりものを描いた、繊細で美しい絵本。
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きょうはクリスマス・イブ。 小さな女の子は、ずっとプレゼントをさがしていました。どうしても贈りものをしたい相手がいたです。 けれどなかなか見つからないままに、にぎやかな大通りから、いつのまにかはじきだされてしまって・・・
気がつけば、暗くてさびしい 12月通りを歩いていました。 あきらめて帰ろうかと思ったとき、むこうのほうの窓がきらりとひかりました。 そこは25番地。 なんて不思議なお店でしょう。でもこんな店をさがしていたのです。 ドアをあけると、クリスマスの香りとでもいったものが、かたわらをすりぬけます。 店に入ると、みたことのないほどたくさんのおもちゃと、せわしなくおもちゃを買っている先客がいて・・・。
少し大きな子なら、たぶん、先客が誰で、何をしているところか、ピンと来て、嬉しくなってしまうのでは。 そんな少し大きな子の夢も、まだ小さな子の夢も、こわすことなくあたためてくれる、嬉しい物語です。 なかなか店の人に相手にしてもらえない女の子にはらはらして、てんてこまいの店の人にやきもきしてしまうかもしれませんが・・・、そういうわけだから、・・・ネ。
小さな女の子は、何歳くらいなのでしょう。 クリスマスの贈りものは、自分がもらう立場のような、まだあどけない年齢に思えるのに、一人ぼっちで、大切な相手のための贈りものを探し続けています。 自分のためではなくて、誰かのために、ほしいと思う、クリスマスの贈りもの。 この小さな女の子が贈りたい相手は誰で、ほしいと思うものは何だろう・・・。 ふだんはまだもらう立場ばかりの、読み聞かせの3姉妹も、美しい絵本の中のたくさんのおもちゃの場面には目を輝かせつつも、その中で女の子が選んだものは何か、夢中でイラストの中をたどっていました。
かすみがかった幻想的な絵の美しく不思議な物語は、一度読んで、女の子のほしいとおもったものや、贈りたい相手がわかってから、もう一度、初めから、女の子の気持ちで読むと、なお、テキストやイラストのすみずみまで楽しめるかも。 たくさんのおもちゃたちの中から、ただ一つ選んだものを、女の子はさりげなくずっと、目で追い続けているのですから。 ひたむきな女の子の気持ちが、粉雪のようにきらきらと美しく輝いてふりつもる絵本。 女の子へのプレゼントは、きっと、この物語、そのものですよね。
原書は『Twenty Five December Lane』2004 Templar Publishing とあります。 アマゾン洋書ではこちらなど。↓
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(ペーパーバック) 』 Templar Publishing (2005/10/1)
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『Twenty Five December Lane
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ホログラム絵本 『おばけ怪獣のなぞ』 A.J.ウッド作 ウエイン・アンダースン絵 偕成社編集部訳 偕成社 1997年 品切れ
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宇宙旅行から家の庭に帰ってきたはずのマックスとルーシーとおじいちゃんが、宇宙船から出てみると、怪獣がおいかけてきて・・・。 立体的にうかびあがるホログラムを利用した美しく幻想的な絵本。簡潔な物語が、謎めいたホログラム効果をひきたてているようです。
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マックスとルーシーはおじいちゃんにつれられて、宇宙旅行をしたあと、地球にかえってきました。犬のソープもいっしょです。(※) 「やれやれ、やっと家にかえれるぞ。」 おじいちゃんは、家の写真を見ながら、宇宙船のレバーをひきました。
とつぜん、ギューンというすごい音がして、ドシンと着陸しました。 「家の庭におりたはずなんだが・・・」 「キャー!怪獣よ!」 窓の外を見たルーシーがさけびました。 ・・・
(※、この宇宙旅行のお話は、シリーズの『ゆうれい惑星のなぞ』(偕成社、品切れ) で楽しめます)
怪獣が立体的に見えるホログラムを、効果的にページに配置した絵本。 「この本は、光の干渉作用を利用して立体像を浮かびあがられる、ホログラムという仕組みを使ったものです。」 とあります。 (『おばけ怪獣のなぞ』偕成社 裏表紙) 鏡のようなアルミのような銀色のホログラム部分は、見る角度によっても見え方が異なり、ぼうっと立体的に浮かび上がる怪物のさまざまな迫力が楽しめます。 幻想的なウエイン・アンダースンさんのイラストによるホログラムというのは、適材適所、本当にぴったり。 おそろしい中にも、ふっくらと愛嬌のある怪獣たちは、どこかで見たことがあるような、ないような・・・。 さて、家にかえったはずのみんなは、いったいどこに着陸してしまったのでしょう? さまざまなところにも冒険はひそんでいるのですね。
原書は『INVASION OF THE GIANT BUGS』1996 The Temper Company plc. とあります。
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『Invasion of the Giant Bugs (ハードカバー)』 Templar Publishing (1996/9/1)
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このホログラムシリーズには、他に『ゆうれい恐竜のなぞ』(偕成社、品切れ)があります。
『Dinosaur Graveyard (ハードカバー)』 Templar Publishing (1996/9/1) |
『ゆうれい恐竜のなぞ』の原書だと思われます。
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『Journey to the Haunted Planet (ハードカバー)』 Templar Publishing (1995/9/1)
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『ゆうれい惑星のなぞ』の原書だと思われます。
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『レプラコーンの 仲間たち』 ニアル・マクナマラ作 ウェイン・アンダーソン絵 井辻朱美訳 東洋書林 2002年
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もくじ はじめに 第1章 習慣および住まい 第2章 ならわしと文化 第3章 レプラコーンの部族について 第4章 レプラコーンの親戚たち 参考文献 カササギ・ゲーム 訳者あとがき
レプラコーンに関する徹底的な解説書。レプラコーンが人間をどう思っているか、遭遇してしまったらどうすればよいか、美しい挿し絵も豊富な、いたれりつくせりの贅沢な一冊。
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靴作りと黄金の壺と虹が大好きな、愛すべき妖精レプラコーン。アイルランドの各地方に生息するレプラコーンや、ヨーロッパに広く知られる類似の仲間たちについて、発見方法から捕獲方法(たいてい失敗に終わるけれど)、共存方法、その生態や特徴、気性、趣向などなど、伝説や迷信、目撃談を交えながら、すべてを気持ちよく明らかにしてくれる研究書。レプラコーンや仲間たちの存在を確信するに足るユーモアとウィットと美しい挿し絵が豊富にちりばめられています。 人間側から見たレプラコーン像はもちろん、レプラコーンの目から見た人間とのかかわりもつぶさに記されていて、両者の思惑の違いやかけひきは興味深く、将来レプラコーンと遭遇する機会に恵まれたときの頼れる一冊になりそう。 「みっつのねがい」や、「こびとのくつや」、「にじのたもとの黄金のつぼ伝説」などなど、絵本の世界にも登場するいろいろな伝説の源をもうかがい知ることができそうです。
原題 『THE LEPRECHAUN COMPANION』 Pavilion Books.Ltd.,London. 1999 アマゾンではこちらなど。↓
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『The Leprechaun Companion (ハードカバー)』 Pavilion Books (2002/9/5)
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『The Year of the Dragon: An Ancient Journal of Oriental Wisdom (ハードカバー)』 Raincoast Book Dist Ltd (2000/02)
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『Year of the Horse (ペーパーバック)』 Friedman/ Fairfax Pub (2003/05)
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『Dragonology (ハードカバー)』 Templar Publishing (2003/10/1) Dugald Steer (編集), Helen Ward (イラスト), Douglas Carrel (イラスト), Wayne Anderson (イラスト)
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『Egyptology (ハードカバー)』 Templar Publishing (2004/10/1)
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『The Fairy-Spotter's Handbook (ハードカバー)』 Frances Lincoln Ltd (2003/10/1)
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『Gnomes and Gardens (ハードカバー) 』 Pavilion Books (2000/9/7)
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