■小澤摩純さんの絵本 |
1962年東京都生まれ。女子美術大学版画科卒業。挿画の著作に『ウォーリアーズ 1 ファイヤポー、野生にかえる』(小峰書店)、 『影を殺した男』(講談社)、『わたしの秘密の花園』『ジーク』(ともに偕成社) 、『レベル21』『おやすみなさいサンタクロース』(ともに理論社)、『くいしんぼうがまってるぞ』(金の星社)、『ピーターパン』(小学館) 、『いすいすいいな』(福音館書店こどものとも012、品切れ)ほかがある。教科書の挿絵、企業カレンダー、ポスター、グリーティングカードなど、さまざまな作品を手がけている。 |
『天使はみつめている』*『天使への手紙』*『いすいすいいな』*『ゆめがとびだしたケーキ』*『魔女シャーホ』* |
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『天使はみつめている』 小澤摩純:絵と文 理論社 1998年
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天使はみまもっている 天使はきみのそばでみまもっている ・・・
天使のまなざしのような、美しく繊細な絵と文で、心にそっと語りかけてくる絵本。 大切な人への贈り物に、自分への宝物に。
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天使はないている 天使はきみのそばでないている きみがひとりぼっちでさみしいときに
天使はみまもっている 天使はきみのそばでみまもっている ・・・
小澤摩純さんが文も絵も手がけた最初の絵本だそうです。 くっきりと鮮やかなタッチの美しい、贅沢なポストカード集のような絵本。 くもりなく晴れた空のような、すみずみまで冴えた色使いや、かぼそいところまでかっちりと描きこまれた完璧なタッチ、音楽を奏でるような美しい装飾模様が、輝くような一枚の絵にとけこんで、いつまでもいつまでもみつめていたくなります。
そえられた文章が、いっそう美しい音色を奏でるよう。 つらいときも、苦しいときも、ひとりぼっちだと感じたときも、天使がずっとそばで見守っていてくれたなら、また新しい勇気が、ひたひたとわきあがってくるのを感じます。 嬉しいときも、悲しいときも、そばにいて、気持ちを分かち合い、そっと希望で照らしてくれる天使。 天使ってなんだろう・・・と、ふと考えました。天使は希望、天使は勇気、元気の源、生きる力、影のようにいつもよりそって、日なたのようにいつも照らしてくれる、いのちの源・・・。
小澤摩純さんの描く天使の澄んだ瞳の美しさが、闇に輝く星のように、心に明かりをともす絵本。 本棚から、いつも天使が見守っていてくれるみたい!
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『天使への手紙』 文・喜多見瀧一 絵・小澤摩純 ヴォイス 2000年
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さまざまな人が、 頭上の天使へ書き送った 22通の手紙
とあります。 (『天使への手紙』ヴォィス、裏表紙 より)
小澤摩純さんの描く、鮮明で美しいイラストの奏でる世界と、天使に宛てた小さな手紙の世界が、まるでポストカードの表と裏のような装丁で、一つになりました。 天使の切手や消印も、贅沢なこだわり。 裏には切り取って使える本物のポストカードと、専用ブックスタンドつき。
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日々のふとした瞬間のふるえるようなはかなさや、燃えるような情熱をとらえたテキストと、光と影をあわせもつ豊かなイメージのイラストが、天使からの贈り物のよう。 童話をモチーフにしたイラストや、『天使はみつめている』▲(理論社)の表紙と本文のイラストも一部おさめられていて、新しい物語をつむいでいます。 神秘的なイラストから流れる物語、みずみずしいテキストから広がる物語を、こころゆくまで眺めたい絵本。
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いいいすいいな
ビーケーワン
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『いすいすいいな』 まつのまさこぶん おざわますみえ 福音館書店 こどものとも012 通巻53号 1999年8月号 品切れ
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いすいすいいな すわれていいな のぼれていいな ・・・
椅子はすわるもの。 でもそれだけじゃあないんだよ。 ねえみてみて、ぼくは椅子で、こんなこともできるんだ。
深い色使いの美しい椅子たちは、まるでアンティークな洋館に迷い込んだよう。キャンバスの地模様を残したタッチも味わい深くて、布張りの椅子の質感にもぴったり。 いきいきとした子どものしぐさや、青いつなぎの赤ちゃん服のおしりの部分のもこもこ感(きっとまだおむつなのでしょうね)が、本当にほほえましい絵本。 小さい子の絵本だけれど、絵画鑑賞の雰囲気も楽しめます。
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小澤摩純さん作品をもっと読んでみたくて、図書館で見つけた初期の本たちはこちら。タッチが異なりますが、繊細で優雅な線画に、シックな淡い色使いのクラシカルな画風も、これまた美しい・・・。↓
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『ゆめがとびだしたケーキ』 奥田継夫・作 小澤摩純・絵 佼成出版社 品切れ 1989年
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熱が出て、おばあちゃんのお見舞いにいけなかったしろネコのひろみ。 ひろみのみるゆめ、どんなゆめ?
昔話を思わせるような、とりかえっこの繰り返しや、不思議な展開の楽しいテキストと、クラシカルで優雅なイラストで、ひろみの夢と現実の交錯する世界を描いた、とびきり愛らしい絵本。 復刊希望! |
おばあちゃんが病気だときいて、しろネコのひろみは、明日の日曜日の朝、お見舞いに行くことにしました。庭でおばあちゃんの好きなチューリップをつんで準備をしたのに、次の日の朝、そのひろみが熱を出してしまいます。 まくらもとのかびんのチューリップのはなもさみしそうです。 ひろみはそのままねむってしまって・・・
あとはゆめ。 みんなゆめ。 ひろみのみるゆめ、どんなゆめ?
熱で見た夢か幻か、ひろみはおばあちゃんのお見舞いに行く途中で、出会う動物たちそれぞれの持っているものと、チューリップのはないっぽんをとりかえます。 クマとハチミツ、リスとクルミ、ウシとミルク、人形とメリケンコ・・・おばあちゃんの家にたどり着く前に、とうとうチューリップはいっぽんもなくなってしまいました。 でもね、おばあちゃんはすっかり元気になっていて、ひろみのとりかえっこしたものを見て、いいことを思いつきました。 「バターとさとうをたすと、ケーキがつくれそうね。ぜんかいいわいにケーキをやいて、こうちゃでもいただきましょうか」
できたケーキのおいしそうなことといったら! たべようとおもって、ナイフできったら、ケーキがふたつにわれ、なかから、 ゆ め とかいてあるカードがでてきました。 「なーんだ。ゆめだったのか!」
ひろみがほんとうにめをさましてみると・・・。
しろネコのひろみの見た夢とうつつのはざまの、不思議な不思議な物語。 おばあちゃんのお見舞いに行く、という出だしが、どこか、グリム童話の「あかずきんちゃん」を思わせたり、次々に出会う動物たちと、自分の持ち物を最後の一本まで交換していくモチーフが、何か昔話的なものを思わせたり、わくわくする展開が、途中までとんとん拍子に続きます。クマのクスコとか、リスのキラメキなどなど、一風変わった(?)新鮮な名前の動物たちと、とりかえっこしたものたちを見ていくと、ああ、たぶんこれはケーキかクッキーを作るのでは、なんて楽しく予測もしたり。
けれど、リズミカルな文と繊細で優雅な絵に見とれるうち、 「ゆめ」 というカードが出てくるあたりから、物語はどんどん、まるで軽い手品みたいな、不思議な不思議な展開に。 「ゆめがとびだしたケーキ」というタイトルは、本当に「ゆめ」のカードが飛び出してくるという出来事の意味も、重ねられていたのですね! まるで、くじびきみたいだなあ、なんて、すっかり楽しくなってしまうのですが、この事件は後々のお茶目な出来事にもつながっていきますので、本当にお楽しみ。
『天使はみつめている』▲(理論社)などのくっきりしたタッチとはことなるタッチで、色使いが北欧絵本のようにシックで、品のよいメルヘンを感じるクラシカルな絵も、ページをめくるのがもったいないくらいきれいです。 細やかな線がやわらかい質感をかもし出していて、のどかな緑の風景も家の中のしつらえも、読み手のあこがれをかきたてます。 浅いティーカップに入れた紅茶の色を楽しみながらいただくみたいに、透きとおった色使いがなんとも優雅。
ケーキからゆめがとびだしてくるみたいに、文も絵も丁寧に描かれた絵本からも、とびきりのゆめと驚きが飛び出してくる絵本。
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『魔女シャーホ』 奥田継夫・作 小澤摩純・絵 佼成出版社 1987年 品切れ
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魔女なのに、色つきのおしゃれな帽子や人間の心に惹かれて、おせっかいをしたり、やきもちをやいてしまったり、いたずらをしかけたり、可愛らしいところのあるシャーホが、軽やかな文と優雅な絵で描かれた読み物。落ち着いた色調の淡いタッチで描かれた繊細な絵が、それぞれに年を重ねたふたりのおばあさんの魅力をひきたてているよう。
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魔女たるもの、にんげんにきづかれないようにすること。 魔女たるもの、にんげんにおせっかいしないこと。 魔女たるもの、つねに黒いぼうしと黒いマントをちゃくようしていること。
魔女のシャーホは、キャリア魔女。年をとってきたこのごろでは少し、カラフルな装いに心ひかれるようになりました。 なかでもお気に入りは、からし色の上品な帽子。 つばのまわりにはみどりときいろでつややかに色づけされたばらのつぼみがならび、そのうえにうっすらとまかれたレース。
毎日帽子屋のウインドーごしに見とれていると、その同じ帽子に、これまた同じように見いっている、にんげんのおばあさんと、ぶつかってしまいました。 おばあさんに興味を持ったシャーホは、公園で写真を手に思い出にひたっているおばあさんのとなりにすわって、見えないおしゃべりをかわします。その写真には、あの帽子そっくりな帽子をかぶった若い頃のおばあさんと、新婚で戦死したおじいさんのりりしい帽子姿が・・・。 「いいおもいではかなしいものよ」 おばあさんのつぶやきが、シャーホの心に残ります。
そんなある日、とうとうおばあさんが、あの帽子を買いに帽子屋にやってきてしまいました。 シャーホはなんとか邪魔をしますが・・・。
おしゃれで粋なおばあちゃん魔女のシャーホと、大切な思い出を抱えた乙女のような人間のおばあさんの、同じ帽子をめぐる悲喜こもごもを温かく描いた、ちょっぴりほろ苦い物語。 なんとかあの帽子を自分のものにしたいけれど、思い出の帽子のように、その帽子がとても似合っているおばあさん。シャーホの知らないいろいろな経験をして、いろいろな感情を味わってきて、いま、孫もいて幸せだれど、ひとりぼっちのおばあさん。 シャーホはいつしか帽子だけでなく、おばあさんの生きざままでも、心を動かされていたのでした。
シャーホはぼうしとひきかえに、もっともっとすばらしいあるものを おばあさんにあげようというかんがえがうかびました。 ・・・
シャーホのあるすばらしいおくりものの考えは、まさしくおばあさんにぴったりなのですが、自分で考えついたことなのに、自分までも惹きつけられてしまうところが、魔女なのにどこか人間味のあるところで、魅力的。 ちょっぴり切なくて、ほろ苦い結末は、どこかはかなさのただよう繊細な絵にぴったり。『天使はみつめている』▲(理論社)などのくっきりしたタッチとはまた趣きのことなるタッチですが、こちらにも惹かれます・・・。
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小澤摩純さんの絵本 「あ」の絵本箱へ

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