9月。 中秋の名月はすぎてしまいましたが、夜空のお月さまは美しいです。晴れるといいですね。 こちらの絵本は残念ながら品切れ・・・。再販されるといいのですが!
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『お月さまのかお』 ゲルタ・マリー・シャイドルぶん アントニー・ボラチンスキーえ こうしなともこやく ほるぷ出版 現在品切れ
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マリオンの上手に描いた可愛いおつきさまのかおの絵が、月の光をあびると不思議、動き出して、絵から落っこちてしまいました。 庭に出たおつきさまのこどもは、空に輝く本物のおつきさまを見て、「ぼくもひかりたいな」と、決意します。 そして月の光をたくさんあびた花の中にとびこんで・・・。
濃厚な闇の中で、燐光を発するようにほのかに美しく浮かび上がる幻想的なイラストが、とても心に残ります。 テキストも子ども心と茶目っ気を失わず、内面からきらきらと輝いているような夢のある美しい絵本。 無邪気でやんちゃなおつきさまのこどもと一緒に、夢のある大冒険が楽しめます。
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原書は『DAS MONDGESICHT』Seller GmbH Freising Verlag,Germany.1970 とあります。 このテキストは人気が高かったようで、アントニー・ボラチンスキーさんの他にも、こちらで『お月さまをめざして』でご紹介したリロ・フロムさんのイラストの1960年とあるもの(アマゾンドイツで発見しました)、比較的新しいものではヨゼフ・ウィルコンさんなどがお描きになったものなどがあるようです。ヨゼフ・ウィルコンさんの版は、講談社から邦訳が出版されていたようで、
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『マリオンのお月さま』 ゲルダ・マリーシャイドル ヨゼフ・ウィルコン 鷺沢 萠 講談社 現在品切れ
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こちらの可愛いお月さまも現在品切れなのですね・・・。残念。
で、今回は、ポーランドの画家・アントニー・ボラチンスキーさんのイラストの『お月さまのかお』です。 ボラチンスキーさんの邦訳絵本は、『やぎさんなかないで 』(福武書店(現ベネッセ)、絶版)、『うさぎくんはやくはやく!』(偕成社 品切れ)などがあるようですが、結構古く、すべて現在は品切れ。 現在の作品は・・・と、アマゾン洋書で検索するとこちら 、洋書作品の数は多く、嬉しいことに、最近の出版もあるようです。日本での邦訳は少ないですが、実は人気の高い、息の長いイラストレーターなのでは、と思います!
ボラチンスキーさんの『お月さまのかお』ですが、原書が1970年初版と、おそらく初期の頃の作品なのでは、と思います。 すでに当時から独特の雰囲気をもつ濃厚なタッチで、不思議な立体感を感じる美しいイラストです。 夜の闇の場面が多い中で、ほのかな燐光を発するように、月のこどもが美しく浮かび上がり、その控えめな光で濃厚な闇の一部に色を与えています。その明暗の差がとても印象的で、幻想的。
ユーモラスにデフォルメされ、ふっくらとした登場人物たち、動物たちも、子どものための可愛らしさを残しながら個性的で、日本の絵本ではあまり見ないタイプに思えて、とてものびやかで新鮮な感じです。
とりわけあどけなく無邪気な月のこどもの愛らしさといったらありません。 この月のこどものまあるい顔は、ある時期子どもが描く目と鼻と口をつけた顔の絵にそっくりで、3姉妹ともかなりの熱い注目を集めていました。
もともとこの絵本の主人公の月のこどもは、ちっちゃな少女マリオンが描いたもの、という設定です。 マリオンが黄色い絵の具でとても上手に月のこどもの絵を描いて、ベッドの壁に貼り付けていたのですが、ある満月の夜、月の光が差し込んで、月のこどもは絵から落っこちてしまいます。
ころがって、庭に出た月のこどもは、本物のお月さまを見て、「ぼくもお月さまみたいに光りたいな」と、大きな声で言って、月の光がいっぱいにたまっている花の中に飛び込みます。 灰色ねこに笑われても、こうすれば、お月さまのように光るだろう、と、信じていた月の子どもは、果たして、光る花から出ると、本当にきらきらあかるく輝いていたのでした!
ところが、お月さまはそのとき雲の後ろで居眠り中。 「お月様が光らないのならぼくが光ってあげるよ!」 月の子どもは大声で言って・・・。
ここから、月のこどもの可愛らしいやんちゃな大冒険の始まりです。 お月さまがうたたね中の闇の中で、泥棒につかまったり、逃げて川に落ち、猟師の網にひっかかったり・・・。
物語を追いかけながら、月のこどもと一緒にどきどき、はらはらしたり、ほっとしたりわくわくしたり、無邪気で無鉄砲な月のこどもと同じように、予測のつかない大胆な展開が、とてものびのびとみずみずしく、どこか型破りで新鮮な感じです。 大きな声で元気よくしゃべる月の子どもは、本当に自分の内なる欲求のままに行動していて、怖いもの知らずで向こう見ずで、まるで王さまか本物の子どものよう。こんなオコサマ、どこの家にも一人や二人や三人くらいいそうですよね(笑)。
イラストもテキストも子ども心と茶目っ気を失わず、内面からきらきらと輝いているような夢のある美しい絵本です。 品切れなのが切に惜しいかぎりですが、よろしければ図書館などでお読みになってくださいね。
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