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『絵くんとことばくん』 文 天野祐吉 絵 大槻あかね 福音館書店 2000年 たくさんのふしぎ傑作集 2004年
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「ぼくのおこづかいを500円から1000円にして!」 なんて、なかなか言えない言葉も、ポスターでなら、どうだろう。優太くんが考えていたら、<絵>くんと、<ことば>くんが頭の中にやってきて、あれこれ一緒に、いちばんいいアピール方法を考えてくれました。
あの手この手でお母さんをかきくどくポスター大作戦、定番から斬新なもの、奇抜なものまで、どれもこれも説得力とセンスがあって、将来商売上手世渡り上手、手ごわいお母さんより一枚うわてまちがいなしかな?
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ぼくはもう4年生なのにおこづかいが500円だ。 お母さんに、「1000円にして!」といいたいのがだ、口ではとてもかなわないから、ポスターをつくって、それをキッチンにはって、それでお母さんにうったえようと思う。
「だったらこうしなよ」 そのとき優太くんの頭の中で、声がした。いつもことばでものを考えている<ことば>と、絵でものをかんがえるのがとくいな<絵>だ。 「だめだめ。そんなんじゃ伝わらないよ。もっとこんなふうにしたらどうかな」 ・・・
お母さんをぷっとふきださせて思わずいいよと言わせるか、おどしをかけてそれじゃあ困るからしかたないわねと言わせるか、具体例をあげながらたたみかけてそれもそうねと納得させるか、それくらい軽い軽いと思わせてその気にさせてしまうか、そうしたらこんないいことがあるよなんてくどいておっと思わせるか・・・
<絵>と<ことば>が、優太くんのおこづかいアップという大いなる目的にむかって、互いの魅力、得意な面を活かしながら、さまざまな表現方法をあれこれ練り上げていく物語。<絵>だから一目瞭然に伝えられたり、<ことば>だから切々長々ととうったえることができたり。両者の魅力がひとつになったポスターならば、効果てきめん、おこづかいアップ間違いなし? とはいえ、時にお母さんの反応を考えて弱気になったり、楽観的にかまえて強気になったり。気を取り直して盲点をついてみたり。問題がおこづかいアップという、誰にも親しみやすく共感できる切実なものであるだけに、気が付くと本気でうなづいたり、真剣にうなったり、その手があったかとはっとひざをうったりしてしまいます。
しかも、こつぶで愛らしいのにぴりっとしている、胡椒粒みたいな手描き文字と手描きイラストが、またまた抜群にあかぬけていて、ぐっと魅力的なものばかり。同じ文面、同じモチーフでも、この心ときめく絵とこの愛らしい文字だからこそ、「いいわよ」なんて、お母さんもついほだされたりして?
お母さんの弱点をつくか、意表をつくか、笑いのツボをつくか、反意をそぐか、腰砕けにするか、ふところにはいりこむか、それともストレートに「あたって砕けろ」で突進するか。ぴりっと愛らしい字と絵とあなどれない鋭いテキストで、読み手の心をがっちりつかむ絵本。 ところで、「もう4年生」のおそるべし優太くん、この豊富な着想とあれこれお母さんの気持ちをおもんぱかるおくゆかしさははっきりいって無敵だわと思っていたら、作者が広告評論家・天野祐吉氏と知って納得しました。
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けいとだま
ビーケーワン
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『けいとだま』 大槻あかね作 福音館書店 こどものとも年少版 2004年1月号 通巻322号
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赤いまんまるい毛糸だまで、ながいながいマフラーができました。さっそく巻いてみたら・・・
じゃれたくなるようなふわふわの毛糸の絵と、記号みたいな人形の絵のやりとりが楽しい、ナンセンス絵本。転がる毛糸だまを追いかけるみたいに、行き着くところまで行ってみようっと。
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けいとだまがありました。
あ。
だれかさんがやってきて、見つけました。
マフラーをあみましょう。
ながいながいマフラーになりました。
・・・
きわめてあっさりとシンプルな絵の、毛糸のようなもこもこふわふわした感じが楽しい絵本。 単純明快、簡潔な絵と文は常に一致しているのですが、なんだかあれれ?。赤い毛糸と黒いはりがねみたいな人物のみで構成されている記号みたいな絵の、毛糸だまの大きさと、人物の背丈を比べてみて! こんな毛糸だまとこんな人物なら、できあがったマフラーの長さは、文字通り計り知れませんよね。 ただただ、楽しいお出かけの途中で、 あ。 と、こけないことを祈るばかり(笑)。
本当に毛糸だまが転がっていくみたいに、てきぱきとテンポがよくて、「長い」のでっかいスケールが楽しい絵本。正方形サイズの「こどものとも年少版」が、思わず横長の普通の「こどものとも」に思えちゃうかな?? 見返しのざっくりメリヤス編みの編目模様も、きれいです。
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あ
ビーケーワン
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『あ』 大槻あかね作 福音館書店 こどものとも年中向き 2005年1月号
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あ。 それはあいうえおのはじまり。それは発声。それは驚き。それはひらめき。
針金みたいな人形のちょいとハッスルした行動が、見慣れた世界を一新する楽しい写真絵本。 これを読めば、 あ と、思わず発してしまうかもね。
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あ
だれかさんがなにか見つけた。
あ
しろいホーローのポット。
ひょ
なよっと、だれかさんのなめらかに曲げられたかぼそい腕を見て見て! ポットの取っ手と注ぎ口のまねっこだね。上手、上手!
それじゃあ今度は何するの?
わずかな動きも見逃せない、だれかさんの動きに注目。 針金をぐるぐるまきつけて作ったようなだれかさん、名前もなければ目も口もなくて、台詞だって一文字(たまに二文字)、
あ
よ
は
なんてね。 高い跳び箱を飛んだ後、きりっとポーズを決めるみたいに、ぴしっと活きのいい掛け声を発して、つぎつぎとお茶目なポーズを見せてくれるだれかさん。 ほんのわずかな首の傾き、体の角度で、マドラーの持ち手みたいな針金の人形のわきあがる好奇心や、得意満面の表情が、目も鼻も口も無いのに見えるよう。 ひねって作られた手足のなめらかな動きも、誰もが思い当たるフシのある格好ばかり、大笑い。 筋金入りの役者ですな、針金さん!
上記の『けいとだま』(福音館書店)▲のだれかさんが(この人物も名前なしでしたが)、立体人形になったような、楽しくて新鮮な絵本。 普段みなれたコップもポットも、だれかさんの手にかかると、たちまち快活な遊びの世界に早がわりなのですね。
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