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『お日さまと お月さまの じまんくらべ』 イワン・ガンチェフさく ささきたづこやく ペンタン
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「あるとき、お日さまとお月さまが、どちらがえらいかで、じまんくらべをしました。」 まずはじめはお日さまの出番。 朝、おはよう、と、人々の心を新しく希望に染めて、顔を出すのはお日さまです。 木々や草花を育てるのもお日さま、水を温めて空に戻すのもお日さま。 お日さまがいなければ、きっと世界中が闇と寒さにのまれることでしょう。
すると、今度はお月さまが言います。 「あら、わたしだって、やくにたっているのよ・・・」
光と影が響きあう美しいイラストにぴったりの結末に、読後も静かな余韻が長く残ります。 絵本の中を旅するような、心地よい光を感じる絵本。 |
原書は『Guten Morgen - Gute Nacht』Newgebauer Press,Salzburg 1991、とあります。 邦訳初版は1992年1月となっているので、当時ほぼ同時に日本でもお目見えになっていたのですね!
澄んだ明るい空を温かな黄色に染めて、丸いお日さまが輝いている表紙です。オレンジ色で、翼の青い小鳥が一羽空を舞っています。 裏表紙は、青い、静かな夜空に、白くて丸い月が浮かんでいます。空を舞っているのは一羽のふくろう。
にじみとぼかしを美しく効かせた、しみじみと詩情豊かなイラストで、イワン・ガンチェフさんの美しい邦訳絵本の中でも、個人的にいちばん気に入っている絵本の1冊です。
物語は、邦訳タイトルのとおり、「お日さまとお月さまのじまんくらべ」。
「あるとき、お日さまとお月さまが、どちらがえらいかで、じまんくらべをしました。」 そして果てしない美しい競い合いがはじまります。 まずはじめはお日さまの出番。 朝、おはよう、と、人々の心を新しく希望に染めて、顔を出すのはお日さまです。 木々や草花を育てるのもお日さま、水を温めて空に戻すのもお日さま。 お日さまがいなければ、きっと世界中が闇と寒さにのまれることでしょう。
すると、今度はお月さまが言います。 「あら、わたしだって、やくにたっているのよ・・・」
お日さまの昼の空、お月さまの夜の空、町の空、野原の空、畑の空、湖の空、浜辺の空・・・と、四季折々の美しい空が、ページをめくるごとにつぎつぎとあらわれて、絵本の中を旅しているような心地よさです。
たんぽぽのようなやわらかい橙色、あじさいのようなみずみずしい紫色、藤の花のように淡い紫色、そしてお日さまにお月さまに照らされてにじむ影ぼうしから、幻想的な調べがいまにも聞こえてきそうな1冊。
光と影が響きあうイラストにぴったりの結末に、読後も静かな余韻が長く残ります。 よろしければ図書館などで、ぜひ美しいイラストをしみじみと堪能なさってくださいね。
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そして。 お日さまとお月さまのじまんくらべを、きらびやかな色使いと大胆なタッチで、少しシニカルに描いた絵本はこちら。
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『お月さまのさんぽ』 ブライアン・ ワイルドスミスさく わたなべひさよやく らくだ出版 1983年
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ある日お月さまがお日さまにこぼします。 「わたしはまだいちどもしたのせかいをみたことがないの」 闇の中でのみ現れる月は、光あふれる明るい地球を一度も見たことがないのです。 それを聞いたお日さまは嬉々として、地球の案内役をかってでます。 「ほら、これが、これが、ぞう、これが、ことり・・・」
光の世界のおひさまが、見たことのないものなんてひとつもないのです。
すると、お月さまは静かに言いました・・・。
リズミカルできらびやかなイラストをたっぷり楽しんだ後の、シニカルできらりと鋭いラストの輝きを、ぜひ図書館などでお読みになってくださいね。
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原書は『What the Moon Saw』Oxford Univ Pr Childrens Books とあります。 アマゾンで検索するとこちら 、初版はおそらく1978年と思われます。
30年近くも昔の絵本とは思えないほど力強く、見るものを圧する迫力を持っているのは、ブライアン・ワイルドスミスさんの魔法のような画力と、昔話のようにシンプルでわかりやすくまっすぐに訴えかけてくるお話の普遍性にあるのでは、と思います。
そのお話はこんな風。
ある日お月さまがお日さまにこぼします。 「わたしはまだいちどもしたのせかいをみたことがないの」 闇の中でのみ現れる月は、明るい地球を一度も見たことがないのです。 それを聞いたお日さまは自慢げに、地球の案内役をかってでます。早速、次のページから、見慣れた地球のあちこちが、生き物たちが、お日さまのシンプルでユニークな案内と、ブライアン・ワイルドスミスさんのさまざまな技法を駆使した大胆なタッチで、つぎつぎと画面いっぱいに登場します・・・。
例えば、見開き左のページほぼ一面に、大きなぞう。右のページには、同じ背景に、少し小さな小鳥。 テキストは短く一行程度なのですが、しゃれています。 左のぞうのページの下には、 「これはぞうさん。とてもおもそうだろ」 そして右の小鳥のページの下には、 「こっちはことり。とってもかるいんだ」 ぞうは重くて、小鳥は軽い。当たり前のお話のようですが、同じ背景の同じ中心に、鏡のように向かい合わせにする楽しい配置で、ぞうと小鳥の対比をくっきりと際立たせています。 小さな子どもも納得し、あらためてその対比をしっかりと楽しむことの出来る、見ごたえのある展開だと思います。
このような遊び心いっぱいの案内が、お日さまのしゃれたナレーションで次々と続き・・・、
とうとうお日さまがまばゆく見開き一面に現れて、自慢に決着をつけようとします。 すなわち、ぼくは何てしあわせだ、光の中で、ぼくの見えないものは何もない、と。
するとお月さまは言いました・・・。
この最終決着は、どうぞ図書館などで、親子でお読みになってくださいね。
鮮やかでとぎすまされた色彩の、力強い絵本にぴったりの、鋭く光る結末に、私はすっかりほれこんでしまったのでした。ブライアン・ワイルドスミスさんの邦訳絵本の中で、個人的にいちばんお気に入りの1冊です。
よろしければ図書館などで、おひさまとおつきさま対決のよみくらべなどしてみてくださいね。
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