夜空を見上げたくなるこの絵本を。
|
『おそらに はてはあるの?』 佐治晴夫・文 井沢洋二・絵 玉川大学出版部 2003年
|
「なぜ夜は暗いの」 という小さな疑問を受けて、大いなる答えが宇宙の真理へと広がってゆく、子どものはじめての科学絵本。切子硝子のような、美しくシンプルなイラストが、夜空に夢と希望をはぐくみます。 宇宙の秘密を、そっと教えてくれるような宝物絵本。
|
この、実にハハ好みの藍色と黄色のくっきりした対比の美しいグラフィカルなこの絵本、実は、1999年福音館書店から出版された「かがくのとも」版の、再販、なのだそうです! 祝・復刊、の仲間でしょうか。嬉しい!
私物はまさに福音館書店版の、 月刊予約・科学絵本 「かがくのとも」通巻369号 「おそらにはてはあるの?」 1999年12月号 なのです。 それで、月刊予約絵本という性質から、現在では入手困難なのだろうなあ・・・と、早合点で悲しんでいたのですが、さにあらず、嬉しいハヤチトリで、再刊されて本当によかった!
テキストの作者の佐治晴夫さんは日本を代表する理論物理学者のお一人で、その他の本には、『宇宙はすべてを教えてくれる』(PHP研究所)、『わかることはかわること』(MNS)などなど、さまざまな著書があり、幅広い分野でご活躍の科学者のようです。
イラストの作者の井沢洋二さんは、世界的にもご活躍中のイラストレーターで、1986年『あさ・One morning』(ジーシー・プレス 品切れ)で、ボローニャ国際児童図書展グラフィック大賞、ニューヨークタイムス年間最優秀絵本賞、同作品にて1987年産経児童出版文化賞を受賞なさったそうです。
▲上へ
図書館で早速借りた、きりりと詩的で、一枚一枚がポストカードのような絵本はこちら。
|
『夏の日―one fine day』 井沢 洋二作 河出書房新社
|
夏の日差しのようにくっきりと鮮やかな切り絵と、夏の花火のようにぱっときらめく短い言葉のなかに、夏の陽炎のようにゆらゆらとなつかしさがたちのぼる、そんな、暑い長い夏の思い出を切り取って大切に集めたような、どこか切なささえ感じる絵本でした。 永遠のような同じ暑い夏をすごした、かつての子どもたちのための絵本、ともいえるかもしれません。
|
井沢洋二さんの最近の絵本には、『みんなおともだち』(ポプラ社)などがあります。(この絵本については後述しますね。)
すごいコンビの絵本だったのですね!
さて、その『おそらにはてはあるの?』です。 「なぜ夜は暗いの」という小さな疑問を受けて、大きく広がってゆくこの絵本、「かがくのとも」の名前どおり、小さな子どものはじめてふれる科学の絵本、にまさにぴったりの、いえ、大人が読んでもあらためて溜息がでるほどの、とてもとても豊かで美しい科学絵本なのです。 理系が苦手で無知なハハなどは、すっかり目からウロコが落ち、目の前が急にきらきらとまぶしく開けた感じでした。
「おそらにはてはあるの?」という、子どものような質問に対する真摯な答えに、こんな奥深い、宇宙の神秘が隠されているなんて! その宇宙の真理へ私たちをやさしくいざなうまでの、井沢洋二さんの切り絵のようなシンプルなイラストの、きわだつ美しさはどうでしょう!
直線と、少しの曲線で、これほど豊かで大いなる世界が描けるのですね。 そして鮮やかな色の対比で、これだけ世界に奥行きと広がりをもたせることができるのですね・・・。
子どものためにやさしく書き下ろした文章と、子どものためにシンプルに描きおろしたイラストが、大人の胸をも打ち、心をも捉える、スケールの大きな絵本だと思います。
今回普通の絵本として再販されたことは本当に嬉しいかぎり。 近所の図書館にも蔵書があることが判明して頼もしいかぎりです(一般絵本とは別の、科学・知識の絵本コーナーなどにあることが多いかも)。 よろしければぜひ親子でお読みになってくださいね。 きっと、夜空を眺める楽しみが増えることでしょう(そして、もう少し星の数が見えるような夜空になったら本当によいのですけれど)!
▲上へ
そして、井沢洋二さんの幼児絵本をもう一冊。
|
副題に「Four Seasons」とあるこの愛らしい絵本は、「あれっ、なんだろう?」と、問いかけながら、やわらかな短い言葉と、鮮やかな色と切り口で、四季折々の身近で小さな生き物たち、自然たちに、やさしく目を向けることのできる、そして素直でやさしい気持になれる、喜ばしい絵本。
親子で可愛いかくれんぼ・みつけっこを楽しんで、自然への親愛なる気持をはぐくむことができたらいいですね!
|
副題に「Four Seasons」とあるこの愛らしい絵本は、愛嬌たっぷりくりくりおめめの生き物たちが、まあるい丘で和やかに手をつなぐ、ほほえましい表紙です。 そしてテキストは、さらにほほえましくなるような、可愛い可愛いかくれんぼ・みつけっこの絵本。
「あれっ、なんだろう?」
と、明るいピンクの空と、緑の地面の境界線から、なにやら茶色いとがったものと、茶色いまあるいものの背中がちょこっと顔を覗かせています。 切り絵独特の、まっすぐでかしこまっていてつんととがった質感と、ちぎり絵の、やわらかくふるえるような質感がの対比が、生き生きとしてとても面白く感じられます。
何かな、何かな、と、わくわくしながらページをめくると・・・
それは春の、小さな生き物たちでした。 そして春の生き物たちは、春の空気を胸いっぱいすいこんでのびをします。きもちよさそう!
続いての真っ青なページに、ちょこっと白くのぞくのは・・・。 「あれっ、なんだろう?」
やわらかな短い言葉と、鮮やかな色と切り口で、四季折々の身近で小さな生き物たち、自然たちに、やさしく目を向けることのできる、そして素直でやさしい気持になれる、喜ばしい絵本。
「あれっ、なんだろう?」 には、お気に入りの同じ絵本ばかりを持参する2歳半の三女も、三女に邪魔されてなかなか新しい大きい子向けの絵本が読めない長女も二女も、それぞれの手を止めて、ひったくらんばかりにページにすいよせられるくらいの、強い魅力があるようです。 そして、シンプルがゆえに、すっきりくっきりとした美しさと、絵本にきらきらとこめられた作者の願いが、いっそう際立つような魅力的な幼児絵本です。
言葉も、絵も、文字の配列さえも、はじめて絵本にふれる幼児のために、丁寧にいつくしんで選ばれたような、楽しくてやさしくて、そして切なる願いのこめられた美しい絵本。 よろしければ図書館などで親子でごらんになってくださいね。
この記事へのコメントを読む▼*書く▼ (この記事へ戻るには、ブラウザの戻る、をクリックしてくださいね) |
▲上へ
「あ」の絵本箱へ
HOMEへ
Copyright (c)2006 kudolacieko All Rights Reserved
|