■イワン・ガンチェフさんの絵本

1925年ブルガリア生まれ、ソフィアの美術アカデミー卒業。1967年以降当時の西ドイツに移住、広告代理店勤務のかたわら絵本の創作を続け、退職後、絵本の制作活動に専念している。邦訳作品には『いろいろいろ』(学研ワールド絵本)オンライン書店ビーケーワン:いろいろいろ、『みずうみのたから』(講談社 品切れ)オンライン書店ビーケーワン:みずうみのたからなど多数。
『三にんの王さま』*『おかのうえのおおきな木』
≫別頁『お日さまとお月さまのじまんくらべ』

 
『三にんの王さま』ペンタン 品切れ

『三にんの王さま』
THREE KINGS
クルト・バオマンさく
イワン・ガンチェフえ
もきかずこやく
DEMPAペンタン
1992年
品切れ

厳寒の雪野原で、「リュート王」とよばれる旅のリュート弾きの男の子・フィンジェと、「こじき王」とよばれる旅の老人・アルンが出会いました。二人はやがて冬でも祭りが行われているという、ユール王の城に向かいますが、途中とても美しく明るい不思議な星が流れているのを目にします。
お城でフィンジェはリュートを披露しようとしますが、指が寒さでかじかんでいてうまく弾けず・・・

凍りつくような寒さの中、神の子誕生を告げる星に導かれ、その誕生の場に集った三人の王の、美しく気高い物語。クルト・バオマンさんの作り出した聖夜の物語に、イワン・ガンチェフさんの色使い、筆使いが、しみじみと美しく映えて、おごそかな余韻につつまれます。

原書は『Drei Könige』(Three Kings)、Nord-Sud Verlag AG,Gossau Zurich and Humburg. 1990、とあります。アマゾン洋書で画像を発見しました。↓

Drei Koenige.
Eine Weihnachtslegende』
Nord-Sued Verlag AG

12月も終わりに近づいたある日、厳寒の雪野原で、ひとりの旅のリュート弾きの男の子・フィンジェと、ひとりの旅の老人・アルンが出会いました。
お祭りのたびに、それはみごとなリュートを奏でるフィンジェは、「リュート王」と人々に呼ばれていました。
身にまとっているのはぼろなのに、どこか堂々とした威厳ある盲目の老人は「こじき王」と呼ばれていました。

そのアルンに、この寒さの中どこへいく、と、訪ねられたフィンジェは、お城へ、と、答えます。お城では冬をいわうユールの祭りが開かれているのです。そこへいけば、あたたかいし、たべものももらえるかもしれません。フィンジェはリュートを弾くことができるかもしれません。

そこで二人は連れ立って王さまのお城へ向かいます。
途中、二人は、夜空にひときわ明るく大きく輝く美しい星が現れたのを目にします・・・。

星も凍てつくようなしんとした寒さの中で、なお静かに強く輝く不思議な星が、神の子誕生を告げる、聖夜の物語です。
三人の賢者たちが、不思議な星に導かれ、神の子誕生の祝いにかけつける、という、モチーフの物語を絵本を何冊か読んだことがありますが、このフィンジェとアルンと国王の三人の王の物語は、邦訳絵本の表紙に、
クルト・バウマンさく」
とありますので、クルト・バウマンさんが独自にお作りになられたものでは、と思われます。
ですが、昔からそのまま語り継がれていたように、美しい伝説の一つとして完成しているようです。
イワン・ガンチェフさんの、東洋の水墨画にも通づるところのあるような、凛とした筆さばき、色使い、透明感とにじみの美しいイラストも、敬虔な物語にとてもよく映えてとても美しいです。

作者のクルト・バウマンさん(1935-1988)は、ドイツ生まれ、金細工師の見習い学校に通い、金細工師など、さまざまな職業を経た後、執筆活動に入り、大学に通うかたわら、中学校の教師をつとめた、そうです。
イワン・ガンチェフさんは1925年ブルガリア生まれ、ソフィアの美術アカデミー卒業、1967年以降当時の西ドイツに移住、広告代理店勤務のかたわら絵本の創作を続け、退職後、絵本の制作活動に専念している、そうです。
世界的に評価が高く、作品が10ヶ国語以上に翻訳・出版されているそうで、日本にもファンが多いそうです(もちろんハハもその一人です)!

なぜか現在はその邦訳作品の多くが品切れ状態なのですが、また、新しい作品の邦訳出版や、古い作品の復刊などで、たくさんの絵本たちが普通に手に取れるようになったらすばらしいですよね!

なおこのクルト・バウマンさんのテキストは、1972年ヨゼフ・パレチェクさんのイラストにより、同タイトルの『Drei Koenige』として、同じくノルド・ズッド社より出版されたことがありました。
全く同じテキストかどうかは、ドイツ語原文を未確認のため不明ですが、登場人物の設定や名前、おおまかなあらすじなどはほぼ同じだと感じました。
ただ、イラストを眺めるかぎりでは、ラスト場面で馬に乗っている人物が微妙に異なるので、もともとのテキストも異なっている可能性があると思います。
ともあれ、こちらももちろん素敵です!

すぐれたテキストには、すぐれた画家がつくものなのですね。

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『おかのうえのおおきな木』ペンタン

『おかのうえの
おおきな木』
イワン・ガンチェフえ
ディミター・インキオフぶん
佐々木 田鶴子訳
DEMPAペンタン
1992年

おかのうえのおおきな木も、はじめはちいさなたねでした。遠くの森のにぎやかな木々たちをうらやましく思うこともあったけれど、ひとりぼっちのおかのうえで、小さな木は、少しずつ、豊かでゆるぎない世界を作り上げていったのです。

大きな木をとりまく自然の美しいいとなみ、季節のめぐりを、静かにつむいだ喜ばしい絵本。

赤ちゃんをほしがったお人形など楽しい作品が、ドイツをはじめ世界中で広く読まれている、ブルガリア出身の現代児童文学作家のディミーター・インキオフさんのテキストに、同じブルガリア出身の画家イワン・ガンチェフさんが、詩情豊かなイラストを添えた、美しい絵本。

おかのうえにいっぽんのおおきな木がたっています。
まわりにはたくさんの花が咲き、枝にはたくさんのことりがさえずり、幹にはたくさんのどうぶつが住みつき、木陰ではいろいろな動物たちが休んでいきます。
雨や風にもびくともしない、おおきな木。
でも、そのおおきな木も、はじめはちいさいたねだったのです。
まわりになにもないおかのうえに芽吹いたちいさな木は、はじめはひとりぼっちだったのです・・・

小さなたねが大きな木になるまで、そしてみんなの木になるまでを、穏やかな言葉とのびやかな絵で、静かにうたいあげた美しい作品。深い森の緑、灰色がかった青、落ち着いたすみれ色・・・美しい色彩の波紋が、絵本の中でとけあい、響きあい、心の中で広がっていくよう。

原書は『FILIO DER BAUM』Neugebauer Press,Salzburg,Austria,1992、とあります。邦訳も1992年初版なので、ほぼ同時発売だったのですね。

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