■アイリーン・ハースさんの絵本
Irene Haas ニューヨーク市生まれ。舞台美術・陶器・テキスタイルなど様々な分野で活躍する傍ら、絵本も手がける。作品に『みかづきいちざのものがたり』『わたしのおふねマギーB』(ともに福音館書店、品切れ)など。
『べスとベラ』

 

『べスとベラ』福音館書店

『べスとベラ』
アイリーン・ハース作
たがきょうこやく
福音館書店
2006年

寒い冬の日、ベスのささやかなおままごとパーティーにやってきた、不思議なお客様たちとのひとときを描いた、愛らしいちっちゃな物語。

ひとりの楽しさと、さみしさが、薄絹のように重なり合った、美しくはかなく、居心地のよい小さな世界。
空想の世界から、現実の世界へのさりげない橋渡しの余韻も、とても好きです。

オンライン書店ビーケーワン:ベスとベラ

さむいふゆのひのごごのことです。
「わたしたちふたりっきりだね」
そとでおにんぎょうとあそんでいたベスは、いっしょにあそぶともだちがほしいなあ、とおもいました。

ポケットから出てきたのはクッキーのかけらでしたが、とけたゆきおちゃとかけらで、おままごとのパーティーをひらいていると、そらの上からなにかがくるくるパラン、とふってきて・・・。

べスと人形だけでひらいていたささやかなおままごとパーティーに、最初に舞い降りてきたお客さまは不思議なことり、ベラ。
花一輪さした帽子に、ショール姿の渡り鳥のベラは、不思議な旅行かばんをもっていて、あけるとお茶のポットやパンなどなど、すてきなものがたくさんでてきました。
聞けば、南へ向かう荷造りに手間取っているうちに遅くなり、はねに霜がついて、空から落ちてしまったのだそう。

「わあ、どきどきするおはなしね」
ベスがパンにさくらんぼジャムをぬりながら、
わたしはベラに、なにをはなしてあげようかなあ。
と、考えていると、次にやってきたのは・・・。

抑えた色調で描かれた暗くさみしい冬景色に、ことりのベラたちのお客がやってくるごとに、華やかさがさしこまれて、澄んだ赤色がとても映えている絵本。すうっと森にとけこむような落ち着いた色調と透明感、すこしはかない輪郭線がが、レースのような繊細さ。

小さな女の子の冬のパーティーごっこを描いた、楽しくて不思議な物語の世界も、ふるえる薄羽のように繊細で、守ってあげたいいとおしさ。
夢とも現実ともつかない、不思議なお客たちのにぎやかな登場も、ひとりぼっちを知る女の子への応援歌のよう。

ひとりは楽しくて、そしてさみしい。居心地よくしつらえた私だけの小さな世界に、だれかがいま遊びにきてくれたら・・・。
そんな女の子の夢をかなえる、繊細な絵本。アンティーク調できちんとしたポットもカップも、女の子の大好きなディテールがいっぱい。
夜空にちりばめられた星のような、美しい粉雪の描写が美しく、灰色の寒空に輝きを与えています。
そしてなにより、現実の世界へのほのかな希望を与えるのは、次に訪れた季節の最後のページ。
静かに広がるみずみずしい色と、ベスのこれからが、まぶしい予感。

原書は『BESS AND BELLA』Margaret K. Mcelderry Books,New York,2006 とあります。
アマゾン洋書ではこちらなど。↓

『Bess And Bella
(ハードカバー) 』
Margaret Mcelderry
(2005/12/27)

この表紙は、邦訳絵本では裏表紙になっていると思われます。


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