『犬のラブダとまあるい花』冨山房インターナショナル
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『犬のラブダとまあるい花』 バーリント・アーグネシュ文 レイク・カーロイ絵 うちかわかずみ訳 冨山房インターナショナル 2006年
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ハンガリーを代表する作家コンビの描く、老犬ラブダと仲間たちの、陽だまりのようにあたたかで、のびのびと楽しい絵物語。
白いまあるい花の咲く大きな庭には、のんびりおじいさんのラブダ、世話焼きニワトリおばさん、小さな女の子のバルバラ、男の子のアダム・・・と、やさしくて楽しい仲間たちが集います。 なんでもないものを遊びに見立てて、みんなで楽しむごっこ遊びや、あいさつをしたり、へやをきれいにしたり、ものを大切にしたり、ちょっとした気持ちのいいことを、さりげなく小さな物語におりまぜて、少しずつ子どもたちの心を穏やかに健やかにはぐくみ、導いていくような読み物。
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待望のハンガリーの絵本が、2006年発売になりました。 あとがきや、「大好き、ハンガリー!」という写真入りのハンガリーの紹介ページ(2ページ)などもあわせると、全部で60ページの読み物です。
「ハンガリーを代表する作家、バーリント・アーグネシュと、さしえ画家レイク・カーロイの心あたたまるおはなしです。」 と、カバー見返しの紹介にあります。 お二人の絵本の初邦訳! 今までレイク・カーロイさんの絵本は、ハンガリー語原書や、ドイツ語に翻訳されたものなどの洋書でしか見たことがなかったのですが、これできちんと意味をとらえて、挿絵を眺めることができるようになりました。嬉しい。
ぽかぽかと、ひなたぼっこのような心地よい物語は、心優しい小さな仲間たちの楽しい毎日のお話が、 「としをとった犬」、 「ぶらんこゆらゆら」、 「水玉レター」、 などなど、全部で九つ。 ゆったりとした目次がとてもおしゃれで、レイク・カーロイさんの本文中の挿絵が、小さなサムネイルのように一話一話のタイトルの横に添えられていて、小さなアルバムのように、見るのも楽しい仕上がりです。
主人公は老犬ラブダ。若いころはボール遊びが大好きで、ずっとチビという名前でしたが、今ではのんびりお昼寝好きのおじいさん。 大きな庭の真ん中の、白くてまるいラブダロージャの花のたくさん咲いている大きな茂みの、かげのおうちに住んでいます。 その不思議な庭には、ニワトリおばさんや、ツグミのおじさん、白い壁と赤い屋根のダンボールの家に住む女の子のバルバラや、にわのはじっこの赤いおんぼろ車に住む男の子のアダム、子犬のパチなどがいて、みんな仲良く暮らしています。
物語のはじめの、 「としをとった犬」 は、チビとよばれていたラブダの、ラブリーな改名(?)物語。 ある日ニワトリおばさんに、 「こんなによぼよぼなのに、チビですって!」 と指摘され、それなら丸いしゃぼん玉のような愛らしい花の名前の、 「ラブダロージャはどうだろう?」 と、ラブダが考え付いた名前です。 「なにかきれいななまえがいいんだ。りっぱにとしをとったごほうびだからね・・・。それに、このまあるい花を見ると、ボールあそびがすきだった、わかいころを思い出すんだよ。・・・」 思わずまねしたくなるような、とても洒落て粋な名前!
こうして、ラブダと仲間たちの小さなお話たちが、ひとつひとつゆっくりと始まります。 「火と水ごっこ」 は、冷蔵庫の入っていたダンボールを利用してこしらえた赤い屋根のおうちに住んでいる女の子、バルバラを、みんなで楽しいごっこ遊びに誘って上手に目覚めさせる物語。 「あいさつは?」 は、お散歩の途中なかなか他の人に挨拶ができないバルバラに、自分からすすんでできるように、ラブダが楽しくやさしく上手に導いた物語。 「ポガーチャづくり」 は、ハンガリーのおいしい食べ物のポガーチャをバルバラが作るお話で、うそっこの電気オーブンで焼けるのを、ラブダとかくれんぼしながら待っているうちに・・・という可愛い物語。 「そうです。バルバラは電気オーブンをもっているのです。すこし小さいけれど、まるでほんもののような電気オーブン。ほんとうはやけないけど、そんなことはどうでもいいのです。・・・」
バーリント・アーグネシュさんの、穏やかでやさしくて、ところどころにセンスの光るテキストが好きです。 特別な出来事や、特別なおもちゃがなにもなくても、楽しい仲間が集まって、それぞれの知恵や想像力を持ち寄って、のびのびと豊かな遊びを楽しむことのできる、健やかな世界が、とても好き。
いちばん好きなのは、 「水玉レター」 のお話。 いとこから手紙をもらって喜ぶラブダに、まだ字が書けないバルバラが一生懸命「てんてん」のお手紙を書きます。受け取ったラブダは、めがねをかけなおして・・・、 「こういう水玉の手紙は、テントウムシにしか読めないんだよ。こんどはテントウムシに書くといいよ」 そこでバルバラが、自分の持っているテントウムシ模様のタオルやパジャマ、庭の花について、早速「てんてん」でお手紙を書くと・・・。
水玉の手紙、のラブダのおしゃれな発想! あやしい線をにょろにょろとひらがなもどきで書き始めた三女のお手紙に、ぜひともまねっこして使わせていただきたいやさしいユーモアですよね。
レイク・カーロイさんの、陽だまりのようなイラストが、ほのぼのとした物語に本当にぴったり。
原書表記はないのですが、レイク・カーロイさんは1988年にお亡くなりになっているそうなので、少なくとも約20年以上の絵本だと思います。邦訳のイラストは、その経年によるものなのか、印刷の仕上がりによるものなのか、つるつるの紙質によるものなのか、くわしいことはわかりませんが、なつかしい記憶のように、少しピントがあまい感じがしました。
これを機に、もっともっと、お二人の絵本や、レイク・カーロイさんの原画が、日本でもご紹介されたら嬉しいですよね。
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