■井口真吾さんの絵本
1957年広島生まれ。83年に漫画雑誌『ガロ』でデビューして以来、様々な表現方法による創作活動を展開。Zちゃんは、84年から現在も続けている物語だそうです。
『バンロッホのはちみつ』(学習研究社)著者紹介より
『Zちゃん かべのあな』*『バンロッホのはちみつ』

 
『Zちゃん かべのあな』ビリケン出版

 

『Zちゃん
かべのあな』

井口真吾さく
ビリケン出版

とんがり帽子にめがねのZちゃんは、青ねずみちゃんと大の仲良し。でも青ねずみちゃんが、自分の壁の穴の中には「何でもある」と、言ったことから、けんかになってしまいました。青ねずみちゃんの穴の中には、本当に「何でも」あるのでしょうか?コップでも、くじらでも?

つい腹を立てたZちゃんは、青ねずみちゃんの足をふんづけてしまいます。青ねずみちゃんは、それからぱったりと姿をみせなくなって・・・。

仲直りしようとするZちゃんの、不思議な世界での「本当に大切なもの」を探すお話。

視覚を奪う鮮烈な色、形、デザイン、どこか昔話風でありながら、斬新なディテールが印象的な絵本。妖艶でアクの強い美しさは、もしかすると大人の絵本かも。

オンライン書店ビーケーワン:Zちゃん←ビーケーワンではお取り寄せ、2006年5月現在・・・
はじめて見る絵本だったのですけれど、ショッキングピンク黄緑の表紙に、黄色のピエロみたいな洋服と、とんがりぼうしと仮面舞踏会のようなメガネの男の子。はっきりとした輪郭線に、くっきりきっぱりとした彩色、なかなか強いインパクトを感じます。

Zちゃんは、名前も姿も一風変わった男の子。自分の部屋の壁の穴にすむ、青ねずみちゃんと大の仲良しです。
ところがある日、青ねずみちゃんとケンカをしてしまいます。原因は、青ねずみちゃんがZちゃんに「うそ」をついたこと。だって、壁の穴の中に、「何でもあるよ」という青ねずみちゃん、「えんぴつ」や「コップ」ならまだしも、「うし」や「くじら」まで、「何でも」ある、と言うのですから・・・。

ついかっとなったZちゃんは、青ねずみちゃんのしっぽをふんづけてしまいました。
驚いた青ねずみちゃんは、それから遊びに来なくなって・・・。

淋しくなったZちゃんは、ついに決心して、穴の中に探しにいきます。
穴の中はまっくらで何も見えません・・・。

ここからの展開は、ハッとする新鮮さ。
さらに、文字通り手探りで「本当に大切なもの」を探すZちゃんの、心の軌跡が巧みに描き出されています。
青ねずみちゃんの伝授する、この不思議な穴からの脱出方法も、昔話的というかおまじないみたいで、なかなか耳にも楽しい感じです。

イラストははっきり目にも鮮やかだし、ファンタジックなテキストはわかりやすい面白さだし、幼児にも楽しめる絵本だと思いますが、・・・ある意味、大人のための絵本かも。独特の哲学と、美意識を感じます。一見愛らしく可憐なタッチのイラストの、どきっとするような色使い、小物使いは、ただ新鮮な可愛らしさだけではなくて、どこか妖しくて危険な香りも・・・。
この方の他の作品も読んでみたくなります。

よろしければ図書館などでお読みになってくださいね。

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『バンロッホのはちみつ』学習研究社

さて、方向音痴の3姉妹のハハの書く文章は、迷子率高し、まとまりやとりとめがないような、ハテ、つらつらずらずら書き連ねているうちに趣旨がどこかへふわふわタンポポよろしく飛んでいってしまったような迷文。

それはさておき、4月、新しい季節に、目新しいこといっぱいで、まぶしくふりそそいでくるのは、太陽光と紫外線だけでなく(笑)、見るもの聞くものすべてきらきらと手招きしているような、うきうきはずむ気分になったりします。

そして、チョウチョよろしく花から花へと、好奇心と探究心のおもむくままに、忙しく楽しく目移りして、ひらひらふわふわ飛んでいっているうちに、あらあらふらふら、ふと気がつくと、ハテ、今自分は、
どこで何をしているのだっけ
と、はたとわれにかえることも、ままあります。
この拙サイトなど、かなりの頻度でそういう事例に遭遇しますよね(笑)。

ハハも、実生活の、未知の道でよく陥ります。つまり迷い子。
既知の道でも、目的の地にたどり着くまでに、うっかり目についてしまったお洒落なお店や書店やパン屋さんなどなどに、ふらふらさそわれてのぞいているうちに (あるいは突進せんばかりの3姉妹を必死で食い止めているうちに) 、すっかり時間も目的意識も失って、何が何だか混乱状態になってしまうことが、よくあります。
しかもぞろぞろにぎやかで重たい乳幼児連れなものですから、どんどんくたびれて時間切れになり、当初の目的の地まで到達できないまま、ホウホウのテイで帰路に着くはめになったりするのです。
乳幼児連れのお出かけは、できるかぎりシンプルに。

…えっと、話がまた長くそれましたね。
ことほどさように、当初の目的をフト見失いかけてしまったとき、立ち止まって、しっかりと手に取っていただきたいこんな絵本。

 

『バンロッホの 
はちみつ』

井口真吾 さく
学習研究社
2001年9月発行

ある日、いつものように散歩していたバンロッホちゃんは、ふと、道端にたくさんの花をみつけました。
花にははちがいて、蜜をあつめていました。
バンロッホは、はちみつをなめたくてたまらなくなりました。
はちみつはどこにあるのでしょう?
この木の中でしょうか?
バンロッホは探しているうちに、あれ、木のてっぺんに出てしまって、気持ちのよい眺めを発見しました。
すると・・・。

とんとん拍子に小気味よく進む大胆な展開に、いつしか作者の思うツボ?
物語はシンプルで、ストレートに迫ります。
独特の哲学と美意識の、可愛らしくて妖艶な世界を、ここでも。

くまのバンロッホちゃんは、おなかにチャックのあるぬいぐるみ。(このチャックのひみつについては、今後の続編に期待がかかります!)
よく晴れたある日の昼、いつものようになんとなくあるいていたバンロッホちゃんは、ふと、道端にたくさんの花をみつけました。
花にははちがいて、はちは蜜を集めていました。
はちみつがなめてみたくなったバンロッホちゃんは、木の中を探しているうちにてっぺんにでて、気持ちのいい眺めと、もっと眺めのよさそうな高い山を発見して・・・。

オンライン書店ビーケーワン:バンロッホのはちみつお花もバンロッホちゃんも何もかも、とっても明るくクリアな色彩の、くっきりはっきりした画風で、マーブルチョコレートみたいに何だか美味しそうでさえ、あります。
ページをめくるたびに、まるでカメラのズームを切り替えているように、テンポよく弾むような展開が新鮮で、どんどん夢を追いかけてものにするバンロッホちゃんは、ある種、とても爽快で、シンプル。
夢の中ならなんだって可能なように、絵本の中だって美しい絵と言葉の力と想像力の翼で、自由自在に羽ばたけるのです。

で、バンロッホちゃんと一緒に楽しい旅を続けて…、ふと、気づいてください。バンロッホちゃんは、何を忘れてしまったのでしょう?

シンプルだけど、明快。深い、です。
単純に読むもよし、さらに踏み込んで読むもよし、自分の中の何かを重ねてみるもよし、もう一度振り返ってみるもよし。
あれこれ悩んで迷ってこんがらがっていた問題が、もしかしたらすっきりするりとほどけて、解決の糸口が見えてくるかも?

よろしければ図書館などでお読みになってくださいね。

で、このバンロッホちゃんシリーズの、第2弾はこちら。↓

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