■イエラ・マリさんの絵本 |
イタリア出身のグラフィックデザイナー、絵本作家。プロダクトデザイナーの夫、エンソ゜・マリと組んで、すぐれた絵本をたくさん発表している。おもな邦訳には、『まるいまあるい』(ブロンズ新社) 、『あかいふうせん』(ほるぷ出版)など多数。 |
『と おもったら・・・』*『まるいまあるい』 |
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『と おもったら・・・』 イエラ・マリさく 栗栖カイやく ブロンズ新社
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「と おもったら・・・」 で、どんどん変わる連想絵本。絵本の真ん中に品よく位置する美しい物体が、つぎつぎと、新しいものに姿を変えながら、しりとり遊びのように印象をはぐくんでいきます。 シンプルなフォルム、シックな色使い、めくってびくりの七変化で、大きい子から小さい子まで魅了する美しい絵本。
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イタリア出身のグラフィックデザイナー、絵本作家の、イエラ・マリさんの絵本です。復刊の『まるいまあるい』とともに、ブロンズ新社さんから出ていたのですね。
原書は『il riccio di mare』、最初のコピーライトは1982年とあります。
『と おもったら・・・』の、余韻の楽しめそうなわくわくするタイトルと、つんつんとがってまあるい表紙に惹かれて、図書館で借りてみました。
むかしむかしあるところに ウニがありました。
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ページをめくると、
つぶらなまんまるお目目も可愛らしいヤマアラシのまるまったところ。 前のページの陰影を受け継いで、手も足もなく、まあるくデフォルメされていますが、茶色のとがった毛並みと、黒々とした鼻は、ひとめで動物、ヤマアラシのもの。
それが、となりのページでは、
まあるいかたまりは・・・まんまるお目目にはにかんだ口元、いまやぼうやの可愛いお顔になりました。とがった茶色の毛並みは、いまやぼうやのおでこの上で、ふさふさの髪の毛になっています。
それじゃあ、次のページでは???
何に変身するのかな? 前のページの一部を手がかりに、刻々と自在に姿を変える巧みなイラストをお楽しみください。 今見た残像を受け継いで、さらにある部分を豊かに引き出し、視点をがらりと変え、発想をくつがえして、思いのままにととのえられた色、形、大きさが、つぎつぎと流れるようにページのまん中にあらわれて、目を奪います。
ウニ → ヤマアラシ、 のように、その連想が比較的穏やかで、すんなりつながっていくページもありますが、静から動へ、大から小へ、その逆や、あるいはまったく想像もつかないような、めくってびっくり、二つのつながりに「なるほど!」とうなるようなページもあります。 大きい子なら、どの部分がどの部分に進化して、発展をとげていくか、テーマを発見したり、一緒に追いかけたり、いろいろなページにさかのぼって確かめたり、さまざまな楽しみ方ができそうです。
小さい子でも、身近なものたちの、はっきりととらえやすい色、そして形のおりなす、美しいイラストのつながりに釘付け。 華やかな黄色とオレンジをさし色に、無駄を省いた線や面と、色数や色調を抑えた色使いで、シックなまとまりに仕上げられているので、印象がよりくっきりと際立ち、大きい子も小さい子も、自分なりにしっかりととらえて楽しむことができそう。
「と おもったら・・・」 の日本語テキストの下にそっと添えられた、原文表記もおしゃれ。原語のわかる方なら、細やかなニュアンスや音の響きも楽しめるのでは。
玉手箱をつぎつぎとあけるように、刻々とページからページへ、姿を変える色形の変化の過程を楽しみ、一ページ一ページに美しく記された、変化の一瞬の色形を楽しんで、・・・最後までわくわくとページをめくったら、また繰り返し何度でも読みたくなる絵本です。
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『まるいまあるい』 イエラ・マリさく 栗栖カイやく ブロンズ新社 2005年
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おひさまはまるい おつきさまもまるい ・・・
身近な品が、手品のように、美しいまるいまあるい切り口を見せて、読み手をつぎつぎと魅せる絵本。頁をめくるごとに、手をかえ品をかえ色鮮やかにあらわれるまるいまあるいものが、心の真ん中をとらえます。 グラフィカルなデザインも○、口ずさみやすいテキストも○。まるくまあるくあかぬけた絵本。 ほるぷ出版『まあるいまあるい』(1995年)の再刊。
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原書は『il tondo』コピーライトは1983、とあります。 赤と紺と白の、マリンカラーの対比が美しい表紙をめくると・・・
おひさまは まるい tondo e il sole
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・・・。
つぎづきとめくるごとに、まるいまあるいものたちが、頁のまんなかに、ころりぴたりと描かれています。 シンプルで優雅なデザインとはっきりした色使いのまるいまあるいものたちが、わたしもまるい、わたしだってまあるいと、かわいい声でおしゃべりしながら並んでいるよう。 その並びも、似たもの同士だったり、両極のものだったり、形の残像をおいかけてみたり、大から小へ、静から動へ、円から球へ・・・と、リズミカルに自由自在。 あれもまるい、これもまあるいと、身近なまるいまあるいものの美しいパレードに、そうか!とはっとしたり、そうそう、とうなづいたり。 口調のよいテキストも、耳に心地よくころがるよう。 3歳の3姉妹三女のお気に入りの一冊になりました。
まるいまあるいものをきりりと並べただけで、こんなにも洒落た絵本になるなんて! 色も形も、線も面も、配置も並びも、とびきりのセンスの光る絵本です。
よろしければ図書館などでお読みになってくださいね。
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