■エリック・ブレグバッドさんの絵本2
1923年、デンマークのコペンハーゲンに生まれる。コペンハーゲン美術工芸学院卒業。フランス、イギリス、アメリカでイラストレーターとして活躍。手がけた子どもの本は100冊以上。主な邦訳には、『火うちばこ』(小学館)オンライン書店ビーケーワン:火うちばこ 、『海時計職人ジョン・ハリソン  船旅を変えたひとりの男の物語』(あすなろ書房)オンライン書店ビーケーワン:海時計職人ジョン・ハリソン 、『いまがたのしいもん』(童話屋)、『あたらしいぼく』(童話屋)、などがある。
(『ぼくはねこのバーニーがだいすきだった』偕成社 著者紹介 参照)
『あたらしいぼく』*『いまがたのしいもん』*『This Little Pig-A-Wig』*『The Parrot in The Garret』*『First friends』*『Burnie's Hill』
≫別頁『ぼくはねこのバーニーがだいすきだった』*『ふゆのくまさん』*『火うちばこ』*『Tewlve Tales』*『海時計職人ジョン・ハリソン』
≫別頁『まっててね』

 
『あたらしいぼく』童話屋

『あたらしいぼく』

シャーロット・ゾロトウ文
エリック・ブレグヴァド絵
みらいなな訳
童話屋
1990年

あたらしい自分に気づいた少年の、大人へのいっぽを踏み出す繊細な絵本。
エリック・ブレグヴァドさんの詩情豊かな絵が、やわらかくみずみずしくぼくを包みます。
見守る猫のように、そっと絵本を開きたい。

なんかへんなかんじなんだ
たしかにぼくはここにいるんだけど
そのぼくはぼくじゃないみたいなんだ

・・・

少しずつ大人へと移ろう少年の、小さなさざなみのような心のゆれと泡立ちを描いた、詩的な作品。
昨日のぼくを追い越してしまった今日のぼくの心。ぼくはふいに気がつきはじめたんだ。ようやく、気がつきはじめたんだ。
ようこそ、あたらしいぼく。

エリック・ブレグヴァドさんの繊細な線画が好きです。淡く澄んで、のびやかな色使いも。北欧出身のブレグヴァドさんの選ぶ色は、少しひかえめで、少しくすんでいて、草と土のにおいがします。

あたらしいぼく』の、線画に水彩のしっとりした挿絵は、主人公の少年のようにみずみずしくて、とても好み。テキストには出てこない黒い猫が、ひかえめながらいつもぼくのそばにいて、涼やかなイラストにほほえましいアクセントをそえているように感じます。

ともすれば漫然と時間の流れにもまれ、いつのまにかまぎれて過ぎてゆくような、幼さと決別するときを、こんな風にはっきりと自分の中に刻みこむことができたら。

原書は『SOMEONE NEW』1978 Harper&Row,Publishers.Inc.,New Yorkとあります。

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『いまがたのしいもん』童話屋

『いまがたのしいもん』
シャーロット・ゾロトウ文
エリック・ブレグヴァド絵
みらいなな訳
童話屋
1991年 

いまはまだこどものまんまがいいな。だって、おとなになると、できないことがたくさんあるのよ。

そうね。おとなはそんなことしないわね。
・・・

やがて大人になることに、気がつきはじめた感じやすい少女の、はつらつとした少女の喜びを歌い上げる詩情豊かな物語。
かあさんとの優雅な言葉のやりとりと、繊細な絵のハーモニーに、いつまでも耳を傾けていたい、見守っていたい、静かな絵本。

わたしはちいさな女の子です
「あなたはおおきくなったらどんな人になるのかしら」
とかあさんにきかれたとき、わたしはこう答えました。
「おおきくなんかならいで
いまのまんまがいいわ」

不思議そうなかあさんに、わたしはこう続けます。
「あのね うれしいとき
わたしならスキップするの
でもおとなはしないでしょ」
「そうね スキップはもうしないわね」
・・・

女の子の愛らしいおしゃべりと、かあさんの穏やかなあいづちを、いつまでも聞いていたい、美しい絵本。
うつろいやすい少女の時を、今目の前で、全身で楽しみながらはつらつと輝いている少女。
スキップしている場面、アイスクリームを買っている場面、表紙にもなっているじっと座っている場面、落ち葉を踏みしめてジャンプしている場面・・・。
エリック・ブレグバッドさんの軽やかで繊細な水彩画が、少女の言葉に忠実に、その華やいだ一瞬をとらえ、見事に描き出しています。
テキストには直接描かれていないけれど、少女のかたわらに時折登場している黒いダックスフントが、少女の心を守っているようでもあります。

かあさんのイラストは、最初と最後に登場するのみで、少女の心の場面には直接登場しないのですが・・・、少女の頃のときめきをわが子に重ね、思い出しながら、それが今わが子へと確かにひきつがれているのを、目を細めて見守っているのかも。
こんなゆったりとした母娘になれたら本当にいいのになあ・・・。

原書は『I LIKE TO BE LITTLE』。
テキストのコピーライトは1966年、1987年。
イラストのコピーライトは1987年とあります。
アマゾン洋書ではこちらなど。↓
表紙は邦訳と異なっています。邦訳本文中にも登場する、落ち葉でジャンプする一場面。

 

『I Like to Be Little
(ペーパーバック)』
Trophy Pr;
Reprint版
(1990/09)

そのほかの、シャーロット・ゾロトウさんとのコンビの作品はこちらなど。↓
邦訳『まっててね』(童話屋)は≫こちら

『Seasons:
A Book of Poems
(I Can Read)
(ハードカバー)』
Harpercollins
Childrens Books
(2002/3/5)

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『This Little Pig-A-Wig』 


H Hamilton
(1978/10/26)


Atheneum; 1st版
(1978/11)

 『This Little Pig-A-Wig』
and other Rhymes about Pigs
chosen by Lenore blegvad
Illustrations by Erik Blegvad
Hamish Hamilton Children'sbooks Ltd.
1978

"The Nursery Rymes of England"、"Mother Goose's Melodies"、"The Oxford Dictionary of nursery Rtymes"などいろいろなライム集から詩人の奥さまが選んだ、「豚」にまつわるライム集。

エリック・ブレグバッドさんの繊細な線画の挿絵が、白黒と、淡く渋いカラーの交互に編まれたクラシカルな構成。
細い細い線を紗のように重ねて濃淡を出し、影を描いた美しい線画で、ナンセンスで楽しいライムの世界を格調高く描いています。
白黒はもちろん、少し褪せたような、アースカラーの色合いも本当に魅力的。

野原の花の真ん中で、かわいいぶたがこっちをじっと見つめる表紙。正面をきっちり向いて、4つ足でしっかりと立っているから、頭のむこうに見えるおしりとくるんとしたしっぽがベレー帽子みたい・・・(?)にも見えます。
この表紙の装丁は、後の『The Parrot in The Garret』に引き継がれています。

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『The Parrot in The Garret』 


Julia Macrae
(1982/5/27)


Atheneum; 1st版
(1987/11)

 『The Parrot in The Garret』
and other Rhymes about Dwellings
chosen by Lenore blegvad
Illustrations by Erik Blegvad
Julia MacRae Books
A division of Franklin Watts
1982

『This Little Pig-A-Wig』同様、"The Nursery Rymes of England"、"Mother Goose's Melodies"、"The Oxford Dictionary of nursery Rtymes"などいろいろなライム集から詩人の奥さまが選んだ、「家、住みか」にまつわるライム集。(マザーグースのくつのいえの詩もあります)

エリック・ブレグバッドさんの繊細な線画の挿絵が、白黒のと、澄んだ明るいカラーの交互に編まれたクラシカルな構成。『This Little Pig-A-Wig』のイラストの色調よりも、全体的に少し華やいだ明るい感じがします。

居心地のよさそうな屋根裏部屋の真ん中に横向きのオウムの表紙。オウムの華やかな色彩にあわせるように、アースカラーのイラストにさした明るい青色が印象的。
この絵本の表紙の装丁は、シリーズ『This Little Pig-A-Wig』を引き継いでいます。(ので、並べるとなお嬉しい)

余談ですが、図書館で借りたハードカバー版は、
Printed in Japan
とありました。1980年代あたりでしょうか、日本で印刷された洋書を、他にもいくらか見たことがあるような気がするのですが、当時は結構盛んだったのかしら?

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『First Friends』

『First
Friends
(Growing Tree)
(ハードカバー)』
Lenore Blegvad (著)
Erik Blegvad (イラスト)
Harpercollins
Childrens Books
(2000/05)
24p

ねえねえ、おいでよ。みんな何をしているのかな?
ほら、ドラム(drum)をもってる男の子。
おや、おやゆび(thumb)なめてる女の子。
この女の子はトラック(truck)をゆーらゆら、
この男の子はくちびるにあひる(duck)をちゅ。
・・・

澄んだ水色の表紙に惹かれて、図書館で借りてみたら(蔵書があったのですよ!)、愛らしい幼児絵本。「Harper Growing Tree」シリーズの「2歳から」の一冊で、表紙を開いたら、一行、二行くらいの韻を踏んだ短いテキストと、そえられた子どもたちの遊ぶ絵からなる、親しみやすいシンプルな絵本。本文のページの角が丸くカットされる配慮もされていて、絵本を自分で開いてみたい、読んでみたい小さな子どもたちにもぴったり。

エリック・ブレグバッドさんの描くあどけない子どもたちのしぐさが、時に無邪気で、時にお茶目で、時におすましで、時に夢中で、ゆったりと穏やかで、可愛いのです。まだおむつが外れていないのかも、と思わせる、ぽったりした輪郭も、オーバーオールもタイツも、この年頃特有のあどけなさ。それでいて、服装の色使いが、草色や芥子色、紺色、青色と、なかなかシックで、おしゃれさん!

これだけでも眼福なのですが、韻文で子どもの遊ぶ姿を列挙しただけの幼児絵本でなくて、後半に一つの物語をつむいでいるところがさらに魅力的。前半にそれぞれ一人遊びで登場したいろいろな男の子と女の子が、後半にもまた登場するので、お楽しみ。誰と誰が、どうするか、どうなるか、一人一人を細やかに描き分けているエリック・ブレグバッドさんのイラストを、つぶさに観察して堪能してくださいね。

その他のLenore Blegvad 夫人とのコンビの作品はこちらなど、多数。↓

『Anna Banana
and Me
(ペーパーバック)』
Aladdin Paperbacks;
Reprint版
(1987/03)

『Riddle Road:
Puzzles in Poems
and Pictures
(ハードカバー)』
Margaret Mcelderry
(1999/05)

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『Burnie's Hill』


Collins
(1977/3/14)


Atheneum
(1977/03)

『Burnie's Hill』
Illustrated by Erik Blegvad
Willam Collins Sons
& Co Ltd
1977年

愉快な問いと答えがどんどん連なっていく、ちょっぴりナンセンスで不思議なはてなし話。北イングランドとスコットランドに伝わる伝統的なライムにもとづいて、エリック・ブレグバッドさんが豊かな物語のあるイラストを添えた絵本。

部分的に線画を用い、おおらかな背景に水墨画のようなにじみとぼかしを効かせた、エリック・ブレグバッドさんのイラストは、地味な色合いで、本当に地の味がするみたい。素朴なのに洗練されていて、眺めていると心が落ち着くよう。

そこにあるのはなあに?
金とお金。
私の分は?
ネズミが持ってにげちゃった。
そのネズミはどこにいる?
ネズミのおうち。
そのネズミのおうちはどこにある?
森の中。
その森はどこにある?
火が焼いちゃった。
その火は・・・

ちょっぴりナンセンスな問いと答えが、くさりのように続いていきます。こたえのないなぞなぞのように、いくつもの受け止め方のできるおおらかなライムですが、その一つの形を、野や森で少年と少女のたわむれる四季折々の風景の中に、物語性をもたせて描いた詩情豊かな絵本。
このはてなし話のモチーフの類話は、チェコのヘレナ・ズマトリーコバーさんの絵本『かあさんねずみがおかゆをつくった(福音館書店、品切れ)の中の一編の詩にも登場しています。

テキストは大きめの文字で一行ずつ。なので読みやすく、イラストがたっぷりなのが嬉しい。

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