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『ぼくは ねこのバーニーが だいすきだった』 ジュディス・ボーストさく エリック・ブレグバッドえ なかむらたえこやく 偕成社1979年 2006年復刊
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命のいとなみ、生と死のつながり。命が、形を変えて続いてゆくこと。
大切な猫の死を通じて、あたたかな家族に見守られ導かれながら、生と死について静かに考えた絵本。子どもにあまり身近でない観念を、わかりやすく丁寧に説いています。 復刊かなってよかった!
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『ぼくはねこのバーニーがだいすきだった』(←ビーケーワン)邦訳初版は1979年、2006年めでたい復刊の絵本です。 本文はすべて白黒の線画。白黒といっても、黒一色で塗りつぶした箇所はほとんどなく、五月雨のようにまっすぐと、あるいは、網の目のように格子に線を重ね、影と質感をあらわした細やかな灰色のイメージ。淡々と静かに、物語を描き出しています。
ぼくのだいすきなねこのバーニー、 きんようびにしんじゃった。
かなしみに沈むぼくに、かあさんは言った。ベッドでぼくをだきしめながら。 「あした、バーニーのおそうしきをしましょうね。だから、バーニーのいいところを十、おもいだしてごらん。おそうしきでみんなにはなせるように。」
バーニーはゆうかんで、 りこうで、 ちゃめで、 きれいずきで・・・
ぼくは考えた。いっしょうけんめい九つまで考えた。 あと一つは何だろう・・・。
大好きなねこのバーニーの死を、家族みんなで悲しみ、弔い、その意味を小さなぼくなりに考え、学び、理解する、子どもによりそってまっすぐに描かれた静かな絵本。 ちいさなねこの死とゆっくり向き合うことを教えてくれたおかあさん、やがて、別の命の源となることをぼくに教えてくれたおとうさん・・・。 いたずらに感傷的になるのではなく、きれいこどですませるのでもなく、うやむやにごまかすのでもなく、真摯にそれぞれのやり方で、生き物の死に初めて直面した子どもたちを、やさしくつつみこみ、見守り、教え、導いています。 朝を待つ夜のように色のないシンプルな絵と、くりかえしを用いながら淡々とつづられた静かな文章が、命のめぐりの果てしないくりかえしを思わせるような、そんな気がする小さな絵本。 祝、復刊!
原書は『THE TENTH GOOD THING ABOUT BARNEY』Atheneum,U.S.A.1971 とあります。 アマゾン洋書ではこちらなど。↓ロングセラーのようですね!
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『The Tenth Good Thing About Barney (Tenth Good Thing about Barney Nrf) (ハードカバー)』 Atheneum (1971/06)
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ところで、この絵本を見ると、なぜか、どこか、ある絵本の雰囲気を思い出してしまいます。同じく白黒の静かな線画がとても魅力的な、ハワード・ノッツさんの絵本、『風はどこへいくの』(偕成社) 、『ふゆねこさん』(偕成社) ▼・・・。 テキストと、イラストから感じる静謐な雰囲気も、とてもとても好き!
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『ふゆのくまさん』 ルース・クラフトぶん エリック・ブレッグバッドえ やまだしゅうじやく アリス館 1974年 品切れ
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寒い冬、三にんの兄弟は元気です。思い思いに枯野を散歩しながら、小さなぼくは見つけました。木の枝にひっかかっているかわいそうな編みぐるみのくまさんを。
ぼくたちはくまさんを連れて・・・
生き生きとしたテキストと訳文、抑えた色調でしみじみと描かれた豊かな表情のイラストが、すこやかな兄弟の姿をあたたかく描いています。一緒に三にんとひとときをわけあっているような、心のはずむ愛らしい絵本。
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うえーん!はやく!はやく!
冬の外遊びの身支度は大変です。 やっと、おにいちゃん、おねえちゃん、ぼくの三にんは、しっかりと着込んで出かけました。 おねえちゃんは枯れ枝や木の実などで花束を作り、おにいちゃんはおなかをすかせた小鳥の数を数え、ぼくはめうしのくりいろの背中をなでてあげます。 それから、いけがきのところまできて・・・ぼくは見つけました。木の枝にひっかかっている何かを。この棒でとれるかな。そーっと・・・。
それは、くまさんでした。 毛糸で丁寧に編まれたくりいろのくまさん。 すこーしぬれて、すこーしもじゃもじゃになって。 なおしてあげなくっちゃ、かわいそう。 ・・・
寒い冬、あたたかな家にただいまと帰ってきたときのように、ほっと心が和み、ゆっくりぽかぽかと、芯から心地よくぬくもってくるような絵本です。 生き生きとした三人兄弟のひとつひとつの描写が、テキストも訳文もカラーイラストもとてもきらきらとすこやかに輝いていて、まぶしいくらい魅力的! くまさんも新たに加わった四人のこれからは・・・どんな楽しい毎日になるのでしょうね!
三人兄弟のやさしい気持ち、素直な思いやりが、このまままっすぐのびていってくれたらいいな。ついでにうちの3姉妹もぜひこんなふうにね(笑)。
特別派手な事件はありませんが、丁寧に描かれたある日の出来事が、穏やかに心に染み入る絵本。一瞬本物の写真かと思うようなみずみずしい表紙も、詩情豊かな見返しも、しみじみと美しい。 原書は『THE WINTER BEAR』William Collins Sons & Co.,Ltd.London 1974 とあります。
冬の枯野の静と、はしゃぐ子どもたちの動。二つの静かに交じり合う場所で、子どもたちに見出され、新しい命をふきこまれてゆくくま。 この冬の子どもたちとくまの出会いのモチーフを描いた絵本には、デイジー・ムラースコヴァーさんの『ぼくのくまくんフローラ』▲(偕成社、品切れ)があります。 ぬいぐるみではありませんが、冬の子どもたちと生きた仔猫の出会いのモチーフを描いた絵本には、ハワード・ノッツさんの『ふゆねこさん』▲(偕成社)があります。
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『アンデルセンの絵本 火うちばこ』 原作 H.C.アンデルセン 文・絵 エリック・ブレグバッド 訳 角野栄子 小学館 2004年
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兵隊さんが魔女から奪ったのは、あふれる金貨と火うちばこ。金貨はあっという間になくなってしまいましたが、残った火打ち箱は、なんと魔法の箱だったのです。 火打ち石を打つ回数によって、ティーカップぐらいの大きな目の犬、水車ぐらいの大きな目の犬、円塔くらい大きな目の犬があらわれて、何でも願いをかなえてくれるのでした。 さっそく再び金持ちになった兵隊さんは、きれいなお姫さまに一目会いたいと思うようになり・・・。
エリック・ブレグバッドさんの本格的な挿絵が、アンデルセン童話の波乱万丈の物語を、きめ細やかに、つややかに、力強く描いています。
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ちょっと風変わりで不思議な犬の月夜に高く浮かぶ、幻想的な表紙。背中のおひめさまの薄い衣の桃色がまぶしくて、妖しくて。
大きな目を持つ三匹の犬の登場がひときわ印象的で、どこかアラビアンナイトのような魅力につつまれた、忘れがたく心に残る物語。
戦争帰りの兵隊さんが、ばったり出会った魔女に頼まれて、木の中のほらあなのひうちばこを取りに降りると、一番目の部屋には銅貨のはこを守るティーカップくらいの大きな目の犬が、二番目の部屋には銀貨のはこを守る水車の輪ぐらいのおおきな目の犬が、三番目の部屋には金貨のはこを守る町の円塔ぐらいのおおきな目をした犬がいました。
結局金貨を好きなだけ詰め込み、火うちばこまで魔女から奪った兵隊さんは、たっぷりの金で贅沢三昧、気前よく豪遊しますが、金の切れ目が縁の切れ目、あっという間にまた貧乏ひとりぼっちになって、残ったのはあの火うちばこだけ。 確かその中にろうそくが一本残っていたはず・・・と、箱から取り出して火打石を一回打つと、なんとドアからあのティーカップくらいの大きな目の犬が飛びこんできて言うのです。 「ご主人さま、なにかごようですか?」
火うちばこは、一回打つとティーカップの目の犬、二回うつと水車の目の犬、三回打つと円塔の目の犬が出てきて、願いを何でもかなえてくれる、魔法の箱だったのです!
兵隊さんはさっそく元の金持ちになると、あこがれのお姫さまに会いたいと願います・・・。
さまざまなディテールを盛り込み、人間の欲に対する皮肉や哀愁もさりげなく織り交ぜて、小気味よく二転三転しながら、最後まで一息に読ませる、波乱万丈の物語。 きめこまやかな文章から浮かぶ映像が、とても豊かで鮮やかでエキゾチック。 ほんのりした色彩に、繊細な線の重なりがベールのような雰囲気をかもし出す、エリック・ブレグバッドさんのイラストは、時に年代もののように重厚で、時にほの暗く不穏で、時になまめかしく妖艶で、時に都会的な軽やかさで、のびやかに、物語を彩っています。
小さな頃に読んで、恐れおののきつつときめいた物語はこれだったのね・・・なんて、当時のイメージを大切に守り続けたような本格的なイラストに、幸せな「再会」を果たす人も少なくないのでは?
この『火うちばこ』は、アンデルセン生誕200周年を記念して2004年から刊行された、『アンデルセンの絵本シリーズ12巻+別巻1』(小学館、編集企画;メディアリンクス・ジャパン)の一冊だそうです。 「国際アンデルセン受賞作家も含む、国内外の著名な画家13人と、『魔女の宅急便』で有名な角野栄子さんの文・訳による、全作品描き下ろしのアンデルセンの新鮮で斬新な13冊の豪華な絵本シリーズです。」 とあります。 (アンデルセン生誕200周年アジア事務局ウェブサイト 絵本シリーズ より。アドレスはこちら↓ http://www.medialynx.co.jp/andersen/publish/index.html )
『火うちばこ』の初版は2004年、エリック・ブレグバッドさんのコピーライトも2004年とあるので、1923年生まれのエリック・ブレグバッドさんの81歳の作品ということになるのでしょうか?その変わらぬみずみずしいタッチが本当に頼もしい限りですよね。
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『TWELVE TALES』(『HANS CHRISTIAN ANDERSEN』1993)
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『Twelve Tales (学校)』 Hans Christian Andersen Stories and Fairy Tales selected,translated and illustrated by Erik Blegvad Margaret Mcelderry (1994/09) 92p
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デンマーク出身のエリック・ブレグバッドさんの選んだ、12のアンデルセン童話。翻訳も、挿絵も、前書きも、もちろん彼自身によるもの。 収録作品は、
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| The Steadfast Tin Soldir (なまりの兵隊) |
The Shepherdess and the Chimney Sweep (羊飼いの女と煙突掃除夫) 一場面が表紙に用いられています。 |
| The Princess on the Pea (えんどう豆の上のおひめさま) |
The Tinderbox (火うちばこ) 『火うちばこ』(小学館、2004年)の挿絵とはまた異なります。 |
| What Father Does is Always Right (父さんのすることは何でも正しい) |
| The Swineherd (ぶたばんのおうじ) |
| The Pixie at the Grocer's (「こびとのすむところ」) |
| The Little match Girl (マッチうりの少女) |
| The Emperor's New Clothes (はだかの王さま) |
| The Sweethearts (仲良し) |
| The Fir Tree (もみの木) |
| Twelve by Coach (馬車できた12人) |
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テキスト主体の童話集ですが、見開き一場面に一つあるいは二つの、カラーの小さな挿絵が添えられているので、とても親しみやすい感じです。安定した美しい線と、セピア調のみずみずしい色彩で描かれた、きめ細やかな挿絵を見ていると、アンデルセンの生きて語った当時の町並みや、人々の様子、時代の雰囲気が、本からゆらりと立ち昇ってくるようです。
エリック・ブレグバッドさんの絵本に時折よく登場する名前のない黒猫は、この童話集の中のいくつかのお話の挿絵の中にもさりげなく登場していて、ほほえましさを添えています。
個人的に感涙したのは、 "What Father Does is Always Right (父さんのすることは何でも正しい)"。 なけなしの財産ともいえる大切な馬を、市場で何か得なものと交換しておいで、とおかみさんに言われて、のんびり出かけたものの、目に付くはしから、雌牛、羊、・・・と、次々に取りかえていって、ついにくさったリンゴ一袋を手に入れた気のいい男の、最後の最後に得たものとは? このあっけらかんと天真爛漫で皮肉なお話の、何事にも動じることなくひたすら父ちゃんだけを信じる楽天的な肝っ玉母ちゃんが、本当に好き。 エリック・ブレグバッドさんの描くきめ細やかな挿絵の二人は、とても若々しい父ちゃんと母ちゃんで、みずみずしさにあふれています。
それからもう一つ、 "The Pixie at the Grocer's (食料品屋のこびと)"。 このお話の、イブ・スパング・オルセンさんの挿絵の絵本『こびとのすむところ』(ほるぷ出版、品切れ)を初めて読んだときから、一読みぼれで、ずっとずっと心に住みつづけている一冊なのです。 食料品屋の小人は、食べ物をくれる食料品屋がいちばんだと思っていましたが、あるとき屋根裏に住む学生さんを知って、詩の世界に魅了されたのでした。そんなある日火事がおこって、人々は一番大切なものを持って逃げ出します。小人が真っ先に守り抜いたのは学生さんの詩の本でしたが・・・。炎とともに燃えきわまった小人の心が、やがて炎とともに鎮火してゆくさまを思い浮かべると・・・圧巻。 エリック・ブレグバッドさんが、数あるアンデルセン童話の中から、このお話を12の中に選んでいることに感激しました。 エリック・ブレグバッドさんのこのお話に添えられた珠玉の小さなカットは3つ。ぜひとも、このお話を絵本化していただきたいですよね!(それとも『火うちばこ』のように、もうされていたりして???)
ところで、図書館で借りた同じ表紙の12のアンデルセン童話集は、タイトルが『HANS CHRISTIAN ANDERSEN』で、版元がロンドンの、Heinemann Young Books an imprint of Reed Consumer Books Limited とあります。初版は1993年。 アマゾン洋書にあるものは、アメリカ版ということなのかしら。実はあまりにほれ込んだので、たまたま見つけたアマゾンマーケットプレイスで、ただいま注文中なのですへへへ。
デンマーク出身のエリック・ブレグバッドさんのアンデルセン童話関連の書籍は、他にもいくつかありました。↓
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『The Young Hans Christian Andersen (ハードカバー)』 Scholastic Trade (2005/10)
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『Seven Andersen Tales (ハードカバー)』 Parsimony Press Ltd (2001/9/12)
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デンマーク出身のブレグバッドさんは、アンデルセン童話の翻訳、挿絵をいくつも手がけているようです。
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『海時計職人ジョン・ハリソン』 船旅を変えたひとりの男の物語 ルイーズ・ボーデン文 エリック・ブレグバッド絵 片岡しのぶ訳 あすなろ書房 2005年
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まだ航海技術の未熟だった18世紀、海上での経度を知るための精密な航海時計を考案し、その改良に一生涯を捧げた、不屈の時計職人、ジョン・ハリソンの物語。
事実に基づく静かな迫力に満ちた文章に、時計作りのような繊細さで当時の空気を再現した絵がふんだんに添えられた、贅沢な重みのある絵物語。
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人々は長い長い間、海上での経度の知る方法を持たず、緯度のみで航海をしていた。 緯度を知るためには2つの地点の時刻を知り、その時間差を角度に直して割り出す必要があったが、その計測に必要な、海上での気候や温度差、振動に耐え、陸上と同じように正確に時を刻む海時計を、作り出せるものは誰一人としていなかったのだ。 18世紀のイギリスに、40年という歳月をかけて、5つの美しい海時計を作った、この男が登場するまでは・・・。
男の名は、ジョン・ハリソン。 1693年ヨークシャーの大工の父の元に生まれ、独学で時計作りを学び、1971年に議会が出した、「経度を測定する方法を見つけたものには2万ポンドあたえる」という懸賞に、正確で頑丈な航海時計作りで挑んだ男。 一つの完成に飽き足らず、つぎつぎと湧き出るひらめきと、たゆまぬ努力で、何度も改良をかさね、議会や学者たちの迫害にも逆風にも負けず、強靭な精神力と時計作りへの尽きぬ情熱で、世界中の航海を大きく輝かしく変えた男。
海時計職人ジョン・ハリソンの波乱に満ちた生涯を、信念を貫いた人生を、格調高い文章と絵で描いた豪華な絵物語。 エリック・ブレグバッドさんのきめ細やかで力強い線画が、美しく整った白黒のページと、そこに淡く控えめな色を添えられたカラーのページの交互に編まれています。 エリック・ブレグバッドさんの描きこまれた繊細な絵に惹かれて手に取ったら、物語の面白さにもぐいぐいひきこまれてしまいました。 むずかしめの漢字には読み仮名がふられているので、小学初級程度の子どもたちにも。
原書は『SEA CLOCKS:THE STORY OF LONGITUDE』 2004 Margeret K.McElderry Books For Young Readers,an imprint of Simon& Schuter Children's Publishing Division とあります。 アマゾン洋書ではこちらなど。↓
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『Sea Clocks: The Story of Longitude (ハードカバー)』 Margaret Mcelderry; 1st版 (2004/02)
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