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『おもしろ荘の リサベット』 アストリッド・リンドグレーン文 イロン・ヴィークランド絵 石井登志子訳 岩波書店
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ちょっとした子どもらしい好奇心から、えんどう豆を鼻に入れてしまってどうにもとれなくなってしまった妹のリサベットと、リサベットをエスコートして町のお医者さんに連れて行くお姉さんのマディケンの、どきどきわくわくびっくりぎょうてんの道中を、にぎやかににぎやかに描いた楽しい読み物。
いつも暮らしている家の外の知らない世界、自分たちの見知らぬ世界を、見て、聞いて、身体ごとぶつかって、驚きながらも知っていく場面は、ちょうどこの本を自分で読むくらいの年齢の子どもたちの毎日の世界とも、重なっている部分があるのでは。
健やかな普通の日々がきらきらとつまった、楽しくて美しい絵本。
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原書は『NAR LISABET PILLADE IN EN ARTA I NASAN』、テキストのコピーライトは1960年、イラストのコピーライトは1991年、とあります。
「イロン・ヴィークランドさんが新たに、『おもしろ荘の子どもたち』のなかの「鼻にエンドウ豆を押しこんだリサベット」に、マディケンやリサベットのいろいろな表情をとらえた絵をいっぱいつけてくださいました。」 (『おもしろ荘のリサベット』訳者あとがきより) という、とても美しく楽しい絵物語です。
澄んだ色調の水彩で描かれたような『クリスマスをまつリサベット』とはまた異なる雰囲気で、クレパスかパステルで丹念に塗られたような、温かな感じの挿絵です。
物語は、ちょっとした子どもらしい好奇心から、えんどう豆を鼻に入れてしまってどうにもとれなくなってしまったリサベットを、頭痛のするお母さんのかわりにマディケンが町のお医者さんへ連れて行く、その道中でおこったわくわくはらはらの物語です。
姉妹のかかりつけの先生のところまで、はじめて姉妹だけで出かけることになって、えんどう豆が鼻の奥に入り込んでいる居心地の悪さはあるものの、とりあえずそれ以外は冒険気分いっぱいのリサベットと、お母さんのかわりに妹を連れて行くという大役をおおせつかってちょっぴり誇らしげなマディケンの、仲良く落ち葉を楽しみながら元気よく歩いていく表紙 のほほえましいこと、可愛らしいこと。 そして新鮮な開放感からだんだん大胆になって、 「ちょっとだけ、リーナス・イダの顔を見に行くのはどう?」 と、楽しい寄り道を提案して・・・、 にぎやか荘に週に一度やってくるお手伝いさんのリーナス・イダの小さな家への、ほんのちょっとの無邪気な道草が、その家のまわりをまきこんだ、ちょっとどころかたっぷりと楽しい、にぎやかな武勇伝(?)へと、読み手をわくわくと連れて行ってくれます。
リーナス・イダの隣の家の女の子、マティスとリサベットの出会いの緊迫した場面と、思わず噴出すような言い争い、そしてとうとうはじまったとっくみあい、それを助けるべく勇ましく飛び出した、両者の勇敢な姉たちの(偶然マディケンの同級生なのです)派手なけんかの場面を読んでいると、イロン・ヴィークランドさんのいきいきとした挿絵もあいまって、とても本の中の物語とは思えないほど熱くなってしまいます。
その一つは、アストリッド・リンドグレーンさんの、一人一人の登場人物たちの抱えている背景を巧みにしのばせた、細やかで温かな人物設定によるものだと思います。 マディケンとリサベットと同じ年齢構成の、マディケンとリサベットがはじめてその日常を見る下町の姉妹・ミイアとマティスの描き方も、リーナス・イダの孤独を垣間見ることの出来る描き方も、いっこうに帰ってこない姉妹を家で待つ頭の痛いおかあさんの気が気でない心配も、まるでそばにいるように共感をもって読めるのです。 しかも、その文章にセンスとユーモアがあって、読みながらとても心地よいのです。訳文も自然で、かなり困難だったのでは?と思える場面も、とても巧み。
マディケンとリサベットのひたむきに生きる日々の物語には、誰もがきっと何か思い出すような、なぞらえるような、心に響くなつかしいものがあるのではと思います。 美しい挿絵の嬉しい復刊の物語たちを、よろしければ図書館などでお読みになってくださいね。
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『クリスマスをまつ リサベット』 アストリッド・リンドグレーン文 イロン・ヴィークランド絵 石井登志子訳 岩波書店
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クリスマス間近の朝、川に厚い氷が張ったことをお手伝いのアルバから知らされたマディケンとリサベットは、早速喜んでベッドから飛び起きます。 「朝ごはんまでには戻るのよ」 アルバの声を背中で聞きながら、二人はちょっとだけ遠出してみるつもりで、夏に行ったことのある川下のりんごが丘めざして、どんどん川を滑っていきます・・・。
元気いっぱい好奇心いっぱい、姉思いで妹思いの、愛らしい姉妹の活躍を、いきいきと愉快に、のびのびと豊かに描いた、透き通るように美しい絵本。
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原書は『JULLOV AR ETT BRA PAHITT,SA MADICKEN』、テキストのコピーライトは1960年、イラストのコピーライトは1993年、とあります。
「リンドグレーン作品集20」『おもしろ荘のこどもたち』(1987年)のなかの「氷の川をすべって、りんごが丘へ」に、イロン・ヴィークランドさんがあらたに、すてきなさし絵をつけたもの」 (『クリスマスをまつリサベット』訳者あとがき より) の、めでたい復刊です!
「六月が丘のそばを流れる川のほとりに大きな赤い家があります。おもしろ荘です。そこにリサベット、おねえちゃんのマディケン、おとうさんとおかあさん、それにお手伝いのおねえさんのアルバがくらしています。リサベットはいつもマディケンのあとをついてまわっています。」 (『クリスマスをまつリサベット』本文冒頭より)
このおもしろ荘のマディケンと、小さいリサベットの活躍する「おもしろ荘のこどもたち」シリーズは、姉妹の健やかな日々の遊びやけんか、おしゃべりなどが、とても身近でほほえましくて、どこかなつかしくて、きらきら輝くような物語です。 厳しいけれど豊かな北欧の自然や、人情味あふれる地域の人々に囲まれて、わいわいとにぎやかに過ごす普通の毎日が、特別な宝物に思えてくるような、そんなまぶしい読み物です。
さらに、イロン・ヴィークランドさんの、のびやかでつくづく美しいイラストのたっぷりと入った作品が、復刊となってよみがえったのですから嬉しいかぎり!
イロン・ヴィークランドさんの、透き通るような紫がかった深い青色の、なんと美しいことでしょう。マディケンのセーターなどに用いられているこの澄んだ青色と、リサベットのセーターなどの深い森のような緑色の印象的なしっとりとしたイラストには、本当に雪景色がぴったりです。
物語は・・・。 クリスマス間近の冬の朝、お手伝いのアルバが 「いいことがあったのよ」 と、二人の姉妹を起こしにきます。川に厚い氷が張ったのです。 たちまち姉妹はベットから飛び降りると、さっさと着替えてあたたかく着込んで、川へとおでかけ。 「すぐにかえって、朝ごはんを食べるのよ。」 後ろから叫ぶアルバに、「はい。はい。」と返事を残して、早速二人はきらきらのつるつるの川でおおはしゃぎ。 まるで魔法のように美しい新しい道となった川をすべりながら、二人はちょっと遠出してみようと考えます。このまま川をすべっていくと続くりんご湖の、りんごが丘という農家まで。そこは、夏におとうさんとボートでたまごを買いに行ったこともある、二人の知っている家なのです。
ところが、最初はとても調子よく楽しくすべっていたのに、いけどもいけどもりんごが丘が見えません。 リサベットもマディケンもだんだん疲れて、朝ごはん前のおなかがぺこぺこになってきます。 りんごが丘にたどり着いて、少し休ませてもらえたら、そしてあたたかい食べ物がもらえたら、どんなに気持がいいことでしょう! しかしマディケンもリサベットもお金を持っておらず、たどり着いても、たまごを買うこともできそうにありません・・・。
イロン・ヴィークランドさんの描く小さな女の子たちの、うつむき加減の横顔や、後姿のなんと表情豊かなこと! おでことふくふくのほっぺたが、本当に子どもらしくて愛らしく思えます。 アストリッド・リンドグレーンさんの描くおしゃまなマディケンとリサベットは、子どもらしい素直な好奇心と大胆さに満ちていて、とても素直で可愛らしく、楽しく共感しながら安心して読める感じです。 何より読んでいて安心した気持がするのは、マディケンとリサベットをとりまく自然と、大人たちの静かであたたかなまなざしでしょうか。 地域ぐるみでみんなで子育てをしているような、とても豊かで心温まるものを感じて、つくづくまぶしく思えました。
知らぬ間に家から遠く離れて大冒険をされてしまった姉妹の家族はびっくりぎょうてん、かき消えた姉妹を探すのに大慌ての大騒ぎでしょうけれど、こんなぬくもりある大冒険なら、ちょこっとは大目に見てもらえるかもしれないですね。 「りんごが丘にいったのはぜったいによかった。」 と、マディケンが帰り道でつぶやく場面があるのですが、そんな風に思える冒険、子どもの素直な心をやさしく包んでくれるような冒険であったことが、本当によかったと思います。
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そしてこちらは少し前に復刊になったマディケンとリサベットシリーズです。やはりクリスマスを巧みに絡めた、しっとりと美しい作品。
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『雪の森のリサベット』 アストリッド・リンドグレーン文 イロン・ヴィークランド絵 石井登志子訳 徳間書店 2003年
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クリスマス間近の雪の降り続く森の中に、ひょんなことからおいてきぼりにされた小さなリサベットの、ともすれば命がけの、はらはらするような迷子の物語。
ひとりぼっちで森をさまようリサベットと、リサベットの無事を祈りながら家でひとり留守番をして待つマディケンの、見えない姉妹の固い絆が、きらきらと雪の結晶のように輝く絵本。
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原書は『Titta,Madicken,det snoar!』1983、とあります。
この作品は、 「絵本として書き下ろされ、日本語版では「マディケンとリサベット」(篠崎書林、1986年[原題Titta,Madicken,det snoar!])というタイトルで出版されていましたが、今回は原画をそのままに、縦書きの読み物としての出版です。」 と、あります。(『雪の森のリサベット』(徳間書店)訳者あとがき より)
嬉しい復刊ですね!
そして、もともと絵本として書き下ろされた作品ということもあって、イロン・ヴィークランドさんの目も覚めるようなみずみずしいイラストが、表紙から見返しから本文から、冬の朝のようにきらきらと透き通り、本当に美しいのです。
物語は・・・ お手伝いのおねえさんのアルバと一緒に、町へクリスマス・プレゼントを買いにいくはずだった姉のマディケンは、不運にも熱を出してしまっておるすばん。 アルバと妹のリサベットはうきうきと町へでかけ、おもちゃやで目移りしながらマディケンへのプレゼントを選びます。 その後、おそらく本人にはひみつでリサベットのためのプレゼントを買いたいアルバが、 「おもてでまっててね。でも、やくそくよ。どこへもふらふらあるいていかないって!」 と、リサベットと約束して、店に入ってしまいます。
約束したリサベットは、最初おとなしく店の中をのぞいたりしているのですが、やがて、ちょっとした好奇心から、たまたま用事で目の前に止まった知らない人のそりにちょっと乗ってみたあげく、用事を終えて走り出したそりに飛び乗ってしまいます。 「でも、つぎにとまったとき、とびおりようっと!」 軽い気持でわくわくと、そりのすばらしい乗り心地を楽しんでいたのですが、そりはなかなか止まる気配もなく町を出て、どんどん森に入ってしまい・・・。
今回絵本の中に登場する町の人々も、とても心やさしく温かで、魅力的な人たちばかり。・・・とはいえ、知らぬ間に便乗していたリサベットを無常にも雪の森の中におきざりにしたそりの持ち主「飲んだくれのアンデション」だけは、酒のせいか、悪意は感じられないもののあまりやさしい人として描かれてはいないようです。
しかしそうして吹雪く森の中に一人ぼっちで取り残されてしまったことで、物語はどんどん佳境に入っていきます。 「きっと、しんじゃう」 と、雪道を泣きながら必死で走るも、すぐに疲れて一歩も進めなくなり、 「おかあさーん!きてえ!」 と、なきさけぶリサベット。
しかしそのおかあさんは、リサベットの窮地を知る由もなく、遅い帰りに気をもみながら、リサベットを待って一緒に焼くつもりだったクリスマスのシナモン・クッキーを、とうとうマディケンと先に作りはじめてしまいます。 楽しいお手伝いのはずなのに、リサベットがいないとマディケンはなんだかおもしろくありません。 「もうやいているの?」 と、リサベットがいきおいよく飛び込んでくることを期待したドアから、青い顔をして帰ってきたのは、ずっとリサベットを町中探し回っていたアルバでした・・・。
リサベットを心配して方々捜索する家族の気持を思うと、胸がつぶれそうになる思いですが、幸いこれは絵本のお話、アストリッド・リンドグレーンさんの巧みでいきいきとしたテキストと、イロン・ヴィークランドさんの細やかでみずみずしい描写にいつしかよりそって、リサベットとともに泣いたり笑ったりすることができます。 マディケンとともに考えたり、思いやったりしながら、大切な家族について見つめなおすことができます。 雪の森での小さなリサベットの勇気と元気と行動力、家でじっと待つマディケンの素直な思いやりや心配、姉らしい配慮は、雪を見上げる小さな瞳や、うなだれる横顔の美しいイラストとともに、家族の絆や信じる心の強さを感じる忘れがたい場面です。 イロン・ヴィークランドさんの描く淡い神秘的な青色が、本当に吸い込まれそうなほどにきれい。
両親や地域の人々の愛情と、のびのびとした自由に包まれた、姉妹のささやかな毎日にまきおこる騒動を、丁寧にじっくりと描き出した、大好きな作品です。 よろしければ図書館などでお読みになってくださいね。
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さらに、アストリッド・リンドグレーンさんの作品で、クリスマスにまつわる愉快な物語には、『エーミルのクリスマス・パーティー』(岩波書店 品切れ)もありました。
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『エーミルのクリスマス・パーティー』 アストリッド・リンドグレーン作 ビヨーン・ベリイ絵 さんぺいけいこ訳 岩波書店
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つぎつぎととんでもないいたずらを思いついては、周りの大人たちを心底驚かす楽しい少年エーミルの、ちょっぴりダンディで(?)やさしい素顔がかいまみえる、とびきりゆかいなクリスマスパーティのお話。
おそれをなしてだあれもそれをする勇気のなかったとあるクリスマスパーティの余興に、果敢にも無邪気に、それゆえにりりしく気持ちよく挑戦したエーミルの、あっぱれなこと、可愛いこと!
うちは3姉妹ですが、こんな息子もほしかったかな・・・って、大変そうかしらやっぱり(笑)。
こちらもぜひ復刊希望です!2006年冬ついに復刊なりました!
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それからそれから、アストリッド・リンドグレーンさんの作品で、クリスマスにまつわる愉快な物語には、元祖(?)ロングセラー、幸運の申し子風雲児ロッタちゃんのこの絵本があります。↓
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『ロッタちゃんと クリスマスツリー』 アストリッド・リンドグレーン文 イロン・ヴィークランド絵 やまむろしずか訳 偕成社
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ロッタちゃんはおちゃめでやんちゃで元気いっぱい。はきはきしてて、ちゃきちゃきしてて、見ていて気持ちがいいくらい。 だからおもしろい事件も、愉快な大騒ぎも、それからとびきりの幸運も、大喜びでロッタちゃんの後ろをついてくる!もちろんクリスマスツリーだって!
イロン・ヴィークランドさんの丁寧な挿絵で、いきいきとしたロッタちゃんや、スウェーデンの冬の町並み、家の中の何気ないおしゃれな装飾もしっかり楽しめます。 余談ですが、イロン・ヴィークランドさんの描く部屋の全体的な構図の、立方体の展開図のような、不思議な感じがとても好き。
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さらに日ごろの行いも運も良いロッタちゃんシリーズのクリスマスをからめた(?)作品、
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『ロッタのひみつのおくりもの』 アストリッド・リンドグレーン文 イロン・ヴィークランド絵 石井登志子訳 岩波書店
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ロッタちゃんのおひさまのような明るい元気は、ここでも幸運をつれてきて、去り行く人の心まであたためます。
さあみんな、がっかりしないで、ロッタちゃんをみてごらん! 祝・復刊。
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も、あります。岩波書店より嬉しい復刊。
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そして、リンドグレーンさんとヴィークランドさんのクリスマス絵本では、少し前の復刊の、ポプラ社よりの、
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『やかまし村のクリスマス』 アストリッド・リンドグレーン文 イロン・ヴィークランド絵 おざきよし訳 ポプラ社
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イロン・ヴィークランドさんの初期の生き生きとした表情豊かなイラストで、スウェーデンの伝統的なクリスマスが、たっぷりと楽しめる静かな絵本。祝・復刊。
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も、あります。
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あとは、しばらく前によみがえったもののまたまた雲隠れしてしまった幻の(?)絵本、こちら↓がもう一度復刊になってくれたら、完璧かも・・・。
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『ぴちぴちカイサと クリスマスのひみつ』 アストリッド・リンドグレーン文 イロン・ヴィークランド絵 山内清子訳 偕成社 品切れ
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イロン・ヴィークランドさんの挿絵ですが、上記のほかの作品たちとはまた異なる趣の、くっきりはっきりした色彩の美しい一冊。
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さわやかな緑の風を感じるような、美しい幼児絵本はこちら。
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『ぼくのブッベはどこ?』 藤田千枝 ぶん イロン・ヴィークランド え 福音館書店 1995年
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神秘的な青と緑を基調として透き通るように描かれた、北欧の豊かな自然を愛でながら、かくれんぼするブッペを探す楽しい絵本。
「ここにもいないし」
ぼくと一緒にブッペを探しながら、北欧の美しい日々も胸いっぱいすいこめます。
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美しいです・・・。 息をのむほどの美しさ。 とりわけ、細やかにのびやかに描かれている、遠い北の国の豊かな自然や、そこに暮らすぼくの家の建物や部屋や家具などは、まだ見ぬあこがれの国の生活をうかがい知ることができて、溜息もの。 そしてさらに、その美しいイラストを、じっくりとつぶさに観察せずにはいられない、楽しい「かくれんぼ」が描かれているのですから、これは贅沢きわまれリ。
美しいページのあちらこちらに、いなくなったぼくの愛犬ブッペのしっぽやあんよが、ちらりちらりと見え隠れしているので、読み手とぼくは、「ブッペはどこ?」と、ページをくるごとに必死に探すのです。
「ここにもいないし」
ぼくは気持ちよく部屋中ひっくりかえして、一生懸命探し回るのですが、見当違いのところばかりで、一向に見つけられません。 まるでめかくしおにみたいに、ぼくをからかって遊んでいるみたい。
読み手は・・・ぼくのにぎやかな捜索中の部屋を仔細に眺めいりながら、思っても見ないかたすみ・ものかげに、ちょうどブッペがちらりと見え隠れしているのを発見するのです。
そのブッペの悠然たるさまも、なんだかヴィークランドさんの茶目っ気を感じて楽しいのですが、さらに、実際にこの光景を目にしたなら思わずめかくしをしたくなるような(笑)、派手にちらかった子ども部屋やオイタ満載の洗面所の風景にも、軽やかな遊び心を感じます。 この洗面所のかわいいイタズラは、ブッペ探しの最中についでについやらかしてしまったものなのか、すでにブッペ探しの前に行われていたものなのかは不明ですが、元気いっぱいのぼくのやんちゃぶりがちょっぴりうかがえて、3姉妹のハハとしては、男の子がもしいたらこんな感じなのかなー、と、楽しくなってしまいます(イエイエ、女の子も、立派なオイタをやらかしますのでご注意をば)。
イロン・ヴィークランドさんの描く、視点を中央に集める感じの不思議な構図の部屋も、独特の魅力でお気に入り。 さらに、ブッペ探しの絵本、ということもあって、部屋の窓やドアが開け放たれていたり、引き出しや戸棚までもが半分あけられ、中身が見えたりはみ出したりしていて、不思議な空間の広がりと風の流れを感じます。
そして、ぼくの半ズボンの色の青色、このさし色が、絵本のそこここにちりばめられ、深い海のそこのような、空のはてにつながっているような、どこか神秘的な雰囲気を感じます。
大人も子どもも隅々まで楽しめる、美しい絵本ですので、よろしければ図書館などでごらんになってくださいね。
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