3代目アール・アール・ポットルさんは、ぼうしがだいすきでした。 悲しくなると、ぼうしの上にまたぼうしを重ねるポットルさんは、ある朝、いいてんきだというのに、ぼうしを3つもかぶって出かけました。通りで仲むつまじい動物たちを3組も目撃したポットルさんは、さらにとってもかなしくなって、 輪郭線は鉛筆でしょうか、澄んだ色は水彩でしょうか、やわらかいタッチがほのぼのとあたたかい、おとぎ話のように美しい物語。めでたしめでたしにいたるまでの、アール・アール・ポットルさんのさまよえるさびしい魂の遍歴を、一風変わったぼうし収集癖の設定を巧みに用いて、子どもたちにもわかりやすく描き、大人の心にもしんみりじんわりとしみいる物語になっています。 それにしても、3代目アール・アール・ポットルさんの名前といい(何の3代目なのでしょうね?)、帽子好きの設定といい、亡くなった両親のそれぞれつえ好き、かさ好きのエピソードといい、雨の中の散歩のエピソードとといい、散歩途中に流れる歌といい、あらゆるものがちょいと風変わり。 原書は『A THREE HAT DAY』1985 Harper Collins Children's Books, A division of Harper Collins Publishers, Inc.,New York, U.S.A. とあります。
描かれているのは、なんでもない普通の日々です。元気なこぶたの兄妹の、毎日の成長のにぎやかで果てしない積み重ねの中から、ふと、きらきらとこぼれおちた、目立たないけれど小さく輝くような一瞬を、そっとすくいあげた珠玉の絵本。 とうさんの畑の手伝いをしていた小さなこぶたくんが、こぼれていた種をもらって、自分の植える場所をこしらえてもらって、自分で大きく育て上げる喜びを描いた、「かぼちゃ」。 雪の日、「ゆきのひらひらはどのくらいあるの」「ゆきのしたではたけはどこへいったの」などなど、つぎつぎととうさんに質問を重ねながら、雪の下の命のつながり、こぶたくんのルーツ、すべてのものに春というときがあること、などを教えてもらい、自分を見つめる、「ききたいこと」。 とうさんとこぶたくんとのあたたかなやりとりにも、心がにっこりしてしまいますが、かあさんとこぶたくんたちとのユーモアを交えたやりとりにも、心がほっこり、そしてしんみり。 「ひとりでいたいの」は、掃除をしても洗濯をしてもつきまとわれてひっくりかえされ邪魔をされ勝手にケンカをはじめられ、結局二度手間をかけられてしまう、小さい子どもたちとのてんやわんやのにぎやかな毎日から、ふと、ほんの一瞬だけでいいから、ひとりきりになってみたいかあさんぶたの、ささやかな一時停止・現実瞬間逃避をユーモラスに描いた小さなお話。 「かあさんの休日」は、かあさんの羽をのばす休日の留守の子守に、おばあちゃんが来て大奮闘する小さな物語。簡単なたまご料理一つにも、子どもたちとの遊び方一つにも、かあさんのやり方、おばあちゃんのやり方のあることをさらりと描き、子どもたちの中の留守のかあさんの存在や、子守のおばあちゃんのプライド、とまどいながらなじんでいく子どもたちを、さりげなく巧みに描き出したお話。思わず読みながら苦笑することしきり、とどめの結末もくすりとうなづけて、好きです。 「おやすみのじかん」は、なんだかねむれなくて、つぎつぎとふとんやお水などいろいろな要求をするこぶたくんと、こぶたくんのお願いをつぎつぎとかなえてやるかあさんの、おやすみまえのほのぼのしたひとときを描いた物語。 かあさんととうさんとこぶたくんとアマンダ(とたまにおばあちゃん)のにぎやかな毎日が、手に取るように身にしみるように想像できて、絵本を持つ手に親しみと力のこもる絵本。 子育てにまつわる家族のお話は、世界共通なんだなあとしみじみする一冊。おしつけがましくなくさらりとしていて、頼れるヒントになりそうです。 原書は『MORE TALES OF OLIVER PIG』1981 Dial Books for Young Readers, under the title MORE TALES OF OLIVER PIG とあります。
こぶたくんのお話の邦訳は、もう一冊。↓
外遊びのできない寒い雨の日、クッキーをつくりましょうとかあさんにさそわれたこぶたくんが、小さなアマンダといっしょににぎやかにお手伝いをしたあと、クッキーのやけるのを何もせず待ちながら、あたたかな台所でしみじみとひとときをすごす「おかしをやく日」。 お兄ちゃんを慕う小さないもうとアマンダと、たまに足手まといに思ってしまうこぶたくんの、ある日の兄妹げんかとなかなおりのひとコマを穏やかに描いた「いもうと」。 遊びにやってくることになったおばあちゃんのために、部屋をきれいに整えて料理をつくり、みんなでもてなす「おばあちゃん」。 雪の降った日、大喜びで外遊びに行こうとするこぶたくんとアマンダのてんやわんやの身支度にすっかり手間取り、やっと完成したふたりを大きなソファでじっとさせておいて、かあさんが自分の身支度をととのえて戻ってきたときには、ああとんだことに・・・というかあさんの気の毒な奮闘をユーモラスに描き、読み手のママたちの共感を大いによぶ「ポテトちゃん」。 こぶたくんととうさんの、おやすみまえのお茶目なかくれんぼの楽しいひとときを描いた「これはだれだろ」。 特別な出来事がおこるわけではないけれど、自分たちと同じような毎日を大切に過ごしているこぶたくんの家族の物語に、ほのぼのとした親しみやあこがれを感じたり。気持ちを和ませたり、ときにはなぐさめてもらったり、勇気づけてもらったり。 アーノルド・ローベルさんの穏やかな淡い色のイラストは、邦訳の印刷の色調の仕上がりの差かもしれませんが、続編の『しりたがりやのこぶたくん』▲よりも少し黄味がかっていて、ますます優しくふっくらとした感じがして、好きです。(ちなみに、私が読んだのは1995年初版です) ちなみに、この絵本はかつてさ・え・ら書房より、わずかに小さな版型で、『こぶたのオリバーあったかいクッキーづくり 』(みやしたみねおやく、1983年、品切れ)として出版されていました。訳が異なるので、また少し違った雰囲気も楽しめます。 原書は『TALES OF OLIVER PIG』1979 とあります。
こぶたのオリバーといもうとのアマンダの活躍する物語は、とても人気が高いようで、原書では、たくさんの続編が出版されているようです。
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