■アーノルド・ローベルさんの絵本
1933-1987。アメリカのカリフォルニア州ロサンジェルス生まれ。初めての絵本『ミスター・マスターの動物園』以降数々の絵本を出版している。1980年『ローベルおじさんのどうぶつものがたり』(文化出版局)オンライン書店ビーケーワン:ローベルおじさんのどうぶつものがたりでコルデコット賞受賞。
夫人は絵本作家のアニータ・ローベル。
『ぼうしの上にまたぼうし』*『しりたがりやのこぶたくん』*『こぶたくん』
別頁『ぼくのおじさん』*『どうぶつえんのピクニック』*『いえのなかを外へつれだしたおじいさん』
別頁「こぶたくん」シリーズ洋書

 
『ぼうしの上にまたぼうし』文化出版局

『ぼうしの上に
またぼうし』

ローラ・ゲリンジャー文
アーノルド・ローベル絵
福本友美子訳

文化出版局
2003年

シルクハットみたいに紳士的で、ボンネットみたいに淑女的で、むぎわらぼうしみたいに素朴で、ベレー帽みたいに洒落ていて、きぬのぼうしみたいになめらかで、羽飾りのついたフェルトのぼうしみたいにふんわりとした、おとぎ話のような物語。

大人も子どもも、帽子の下の、本当の自分を理解してくれる大切な誰かを探している人へ。見つけた人たちへ。

楽天ブックス ぼうしの上にまたぼうし

3代目アール・アール・ポットルさんは、ぼうしがだいすきでした。
2代目のおとうさんはつえを、おかあさんはかさをあつめていて、二人でよく雨のなかをさんぽにいったものです。
そのふたりもやがてなくなって、アール・アール・ポットルさんはポットルやしきにひとりぼっち。さびしくてたまりません。

悲しくなると、ぼうしの上にまたぼうしを重ねるポットルさんは、ある朝、いいてんきだというのに、ぼうしを3つもかぶって出かけました。通りで仲むつまじい動物たちを3組も目撃したポットルさんは、さらにとってもかなしくなって、
「こんなさえない日には、もうあそこにいくしかないな。」
と、町でいちばん大きなぼうしやさんの回転ドアを開けました。
・・・

輪郭線は鉛筆でしょうか、澄んだ色は水彩でしょうか、やわらかいタッチがほのぼのとあたたかい、おとぎ話のように美しい物語。めでたしめでたしにいたるまでの、アール・アール・ポットルさんのさまよえるさびしい魂の遍歴を、一風変わったぼうし収集癖の設定を巧みに用いて、子どもたちにもわかりやすく描き、大人の心にもしんみりじんわりとしみいる物語になっています。
とりわけ、ちょいと敷居の高そうな帽子の店で、騒動をおこしかけたアール・アール・ポットルさんの私物帽子を、店の女の人・イザベルがひとつひとつぬがせる場面の、おごそかで、神々しいこと!

それにしても、3代目アール・アール・ポットルさんの名前といい(何の3代目なのでしょうね?)、帽子好きの設定といい、亡くなった両親のそれぞれつえ好き、かさ好きのエピソードといい、雨の中の散歩のエピソードとといい、散歩途中に流れる歌といい、あらゆるものがちょいと風変わり。
その風変わりのさまがなんとも洒落ていて、優雅なユーモアを楽しませてくれます。一つの物語の中にそれぞれがとけあってきちんとまとまっているところも巧み。
風変わりだからこそ、変わらない大切なものがはっきりと見えてくる大切な一冊。

原書は『A THREE HAT DAY』1985 Harper Collins Children's Books, A division of Harper Collins Publishers, Inc.,New York, U.S.A. とあります。

『A Three
Hat Day
(Reading
Rainbow Book)
(図書館) 』 

Laura Geringer
Arnold Lobel

Harpercollins
(1985/10)

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『しりたがりやのこぶたくん』童話館出版

 

『しりたがりやの
こぶたくん』
さく ジーン・バン・ルーワン
え アーノルド・ローベル
やく 三木卓
童話館出版
1995年 

しりたがりやのこぶたくんと、いもうとのアマンダ、やさしいかあさんととうさんの、ときおり遊びにやってくるおばあちゃんの、何気ない健やかな毎日のふとした出来事を、あたたかなまなざしと優しい言葉で、丁寧につづった絵物語。

かぼちゃ
ひとりでいたいの
ききたいこと
かあさんの休日
おやすみのじかん
の、5話収録。
しりたがりやの元気な小さな兄弟姉妹たちへ、そして頑張りやのママたちへ。

描かれているのは、なんでもない普通の日々です。元気なこぶたの兄妹の、毎日の成長のにぎやかで果てしない積み重ねの中から、ふと、きらきらとこぼれおちた、目立たないけれど小さく輝くような一瞬を、そっとすくいあげた珠玉の絵本。
アーノルド・ローベルさんの、赤、緑、黒の抑えた色数の淡い重なりで、静かに描かれたあたたかな絵を見ていると、とても豊かな気持ちに満たされます。

とうさんの畑の手伝いをしていた小さなこぶたくんが、こぼれていた種をもらって、自分の植える場所をこしらえてもらって、自分で大きく育て上げる喜びを描いた、「かぼちゃ」。

雪の日、「ゆきのひらひらはどのくらいあるの」「ゆきのしたではたけはどこへいったの」などなど、つぎつぎととうさんに質問を重ねながら、雪の下の命のつながり、こぶたくんのルーツ、すべてのものに春というときがあること、などを教えてもらい、自分を見つめる、「ききたいこと」。

とうさんとこぶたくんとのあたたかなやりとりにも、心がにっこりしてしまいますが、かあさんとこぶたくんたちとのユーモアを交えたやりとりにも、心がほっこり、そしてしんみり。

ひとりでいたいの」は、掃除をしても洗濯をしてもつきまとわれてひっくりかえされ邪魔をされ勝手にケンカをはじめられ、結局二度手間をかけられてしまう、小さい子どもたちとのてんやわんやのにぎやかな毎日から、ふと、ほんの一瞬だけでいいから、ひとりきりになってみたいかあさんぶたの、ささやかな一時停止・現実瞬間逃避をユーモラスに描いた小さなお話。

かあさんの休日」は、かあさんの羽をのばす休日の留守の子守に、おばあちゃんが来て大奮闘する小さな物語。簡単なたまご料理一つにも、子どもたちとの遊び方一つにも、かあさんのやり方、おばあちゃんのやり方のあることをさらりと描き、子どもたちの中の留守のかあさんの存在や、子守のおばあちゃんのプライド、とまどいながらなじんでいく子どもたちを、さりげなく巧みに描き出したお話。思わず読みながら苦笑することしきり、とどめの結末もくすりとうなづけて、好きです。

おやすみのじかん」は、なんだかねむれなくて、つぎつぎとふとんやお水などいろいろな要求をするこぶたくんと、こぶたくんのお願いをつぎつぎとかなえてやるかあさんの、おやすみまえのほのぼのしたひとときを描いた物語。

かあさんととうさんとこぶたくんとアマンダ(とたまにおばあちゃん)のにぎやかな毎日が、手に取るように身にしみるように想像できて、絵本を持つ手に親しみと力のこもる絵本。
もしもかあさんが、ずーっと休日でひとりきりになりっぱなしだったら、それは童話ではなくて別の小説になってしまいそうですが(笑)、ちゃんと、ほのぼのと戻ってきますので、子どもたちもご安心。
テキストの作者のジーン・バン・ルーワンさんは、
「アメリカ・ニュージャージー州で育つ。シラキュース大学でジャーナリズムを専攻。出版社勤務をへて、子ども向けの作品を書くようになる。現在ニューヨーク州で夫と二人の子どもと住んでいる」
とあります。
(『しりたがりやのこぶたくん』童話館 著者紹介 参照)

子育てにまつわる家族のお話は、世界共通なんだなあとしみじみする一冊。おしつけがましくなくさらりとしていて、頼れるヒントになりそうです。

原書は『MORE TALES OF OLIVER PIG』1981 Dial Books for Young  Readers, under the title MORE TALES OF OLIVER PIG とあります。
アマゾン洋書ではこちらなど。↓

『More Tales
of
Oliver Pig
(Puffin Easy-To-Read)
(図書館)』
Bt Bound
(1993/08)

『More Tales
of
Oliver Pig
(Puffin Easy-to-
Read, Level 2)
(ペーパーバック) 』
Puffin;
Reissue版
(1993/08)

こぶたくんのお話の邦訳は、もう一冊。↓

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『こぶたくん』童話館出版

『こぶたくん』
さく ジーン・バン・ルーワン
え アーノルド・ローベル
やく 三木卓
童話館出版
1995年

ちいさなこぶたくんと、いもうとのアマンダ、やさしいかあさんととうさん、ときおり遊びにやってくるおばあちゃんの、穏やかな毎日のひとコマをそっと見守った物語。

おかしをやく日
いもうと
おばあちゃん
ポテトちゃん
これはだれだろ
の、5話収録。

外遊びのできない寒い雨の日、クッキーをつくりましょうとかあさんにさそわれたこぶたくんが、小さなアマンダといっしょににぎやかにお手伝いをしたあと、クッキーのやけるのを何もせず待ちながら、あたたかな台所でしみじみとひとときをすごす「おかしをやく日」。

お兄ちゃんを慕う小さないもうとアマンダと、たまに足手まといに思ってしまうこぶたくんの、ある日の兄妹げんかとなかなおりのひとコマを穏やかに描いた「いもうと」。

遊びにやってくることになったおばあちゃんのために、部屋をきれいに整えて料理をつくり、みんなでもてなす「おばあちゃん」。

雪の降った日、大喜びで外遊びに行こうとするこぶたくんとアマンダのてんやわんやの身支度にすっかり手間取り、やっと完成したふたりを大きなソファでじっとさせておいて、かあさんが自分の身支度をととのえて戻ってきたときには、ああとんだことに・・・というかあさんの気の毒な奮闘をユーモラスに描き、読み手のママたちの共感を大いによぶ「ポテトちゃん」。

こぶたくんととうさんの、おやすみまえのお茶目なかくれんぼの楽しいひとときを描いた「これはだれだろ」。

特別な出来事がおこるわけではないけれど、自分たちと同じような毎日を大切に過ごしているこぶたくんの家族の物語に、ほのぼのとした親しみやあこがれを感じたり。気持ちを和ませたり、ときにはなぐさめてもらったり、勇気づけてもらったり。

アーノルド・ローベルさんの穏やかな淡い色のイラストは、邦訳の印刷の色調の仕上がりの差かもしれませんが、続編の『しりたがりやのこぶたくんよりも少し黄味がかっていて、ますます優しくふっくらとした感じがして、好きです。(ちなみに、私が読んだのは1995年初版です)
もともとは、どのような色調なのでしょうね・・・。

ちなみに、この絵本はかつてさ・え・ら書房より、わずかに小さな版型で、『こぶたのオリバーあったかいクッキーづくり 』(みやしたみねおやく、1983年、品切れ)として出版されていました。訳が異なるので、また少し違った雰囲気も楽しめます。

原書は『TALES OF OLIVER PIG』1979 とあります。
アマゾン洋書ではこちらなど。↓

『Tales
of
Oliver Pig
(Puffin Easy-
to-Read, Level 2)
(ペーパーバック)』
Puffin;
Reprint版
(1993/08)

こぶたのオリバーといもうとのアマンダの活躍する物語は、とても人気が高いようで、原書では、たくさんの続編が出版されているようです。
アマゾン洋書で検索した結果をもとに、一覧にしたのが≫こちら。どれも読んでみたい魅力的な絵本ばかり!
イラストは、Ann Schweninger さんが担当しています。

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